薩摩飛脚 前篇(1955)
劇場公開日:1955年11月1日
解説
薩藩に潜入し同行した友人が消息を絶った為疑惑を受けた隠密の苦衷と冒険を描く。大仏次郎の小説を「復讐の七仮面」の比佐芳武が脚色し、「織田信長」の河野寿一が監督、「だんまり又平 飛龍無双」の三木滋人が撮影を担当した。主なる出演者は「牢獄の花嫁」の市川右太衛門、「獅子丸一平」の月形竜之介、「弓張月」の長谷川裕見子、「身代り紋三 地獄屋敷」の花柳小菊、「新・平家物語」の進藤英太郎など。
1955年製作/79分/日本
配給:東映
劇場公開日:1955年11月1日
ストーリー
薩摩飛脚--この言葉は死を意味する。薩摩領内に潜入した公儀隠密の殆どが、二度と姿をあらわさないからだ。神谷金三郎は、その数少ない薩摩飛脚の生き残りの一人だが、彼を待っていたものは、共に出かけた親友松村伊織を故意に見殺しにしたという忌わしい噂であった。松村の妻女おるいと金三郎との間に、まだおるいが嫁ぐ前、とかくの取り沙汰をされていたことが一層彼の立場を不利にした。金三郎は松村の消息を掴んで、潔白のあかしを立てようと思った。まず深川にあらわれた彼は、薩摩の黒幕人物と目される伊集院帯刀の舟を襲ったが、帯刀からは何も聞き出せず、つれ込まれていた芸者小きんを救った。その頃、お庭番(公儀隠密)の間では松村の弟欽之助を盛り立てて、薩摩屋敷を襲撃しようとする動きがあり、それを耳にした金三郎は欽之助を戒めるのだった。はからずも泥棒の伝次から矢の倉の田原屋と帯刀の関係を聞いた金三郎は、お役目を辞退し、自由な身となって探索を続けることにした。そして、ある日大川端の舟宿に身をひそめ、田原屋の舟を見張っていると、隣室から怪僧覚真が金三郎を監視していた。その後、金三郎が刺客に囲まれたときも、覚真は物蔭から眼を放さなかった。やがて、おるいと欽之助は、松村の消息を求めて薩摩に旅立った。おるいにとっては、執拗にいいよる旗本堀江喜内から逃れる旅でもあった。喜内こそは、金三郎を陥れようとして、数々の噂を撒いた張本人で、帯刀とも気脈を通じている裏切り者だった。ある夜、金三郎は矢の倉の近くで薩摩藩の船を襲い、禁制の異国の品を奪うが、事の発覚を恐れる帯刀は、刺客を向けて金三郎を暗殺しようと謀った。とも知らず金三郎はおるいと欽之助を追って、死地に向うのであった。