劇場公開日:

解説

近代映画協会の自主作品で「十九の花嫁」の新藤兼人のオリジナル・シナリオを彼自ら「どぶ」に次いで監督し、「大利根の対決」の伊藤武夫が撮影に当る。音楽は「銀座の女」の伊福部昭。出演者は「銀座の女」の乙羽信子、殿山泰司、「侍ニッポン 新納鶴千代」の高杉早苗、「地獄の用心棒」の菅井一郎、浜村純等のほか民芸、俳優座、泉座、現代プロ、東俳協が出演する。

1955年製作/日本
配給:独立映画
劇場公開日:1955年7月3日

あらすじ

戦争未亡人の秋子、元銀行員原島、元自動車修理工三川、元映画脚本家吉川、音楽学校出身の未亡人富枝の五人は東洋生命の外務員に採用された。彼等は半年で五百万円の契約を取る責任を負い、初め二十二人いた仲間も次第に減り半年後には彼等五人だけになって了った。五人は互に励まし合って来たが追いつめられ、自殺をするか強盗をして金を手に入れるかする他に途がなくなって了った。絶望した五人は三川と吉川の提案で、公金輸送の定期郵便車を襲う決意をした。犯行の朝、三川は渋谷で用の高級車を盗み、四人を乗せて現場の横浜市の南の国道狼坂へ向った。秋子と富枝が見張りに立ち、三川、原島、吉川等は日本刀と猟銃をつきつけ、運転手等を高級車後部のトランクに押しこめ、立川で車を捨てた。七万円ずつの分け前を取り、彼等は二度と会わぬことに決めた。秋子と離れ難くなった原島は、女房に手切金を渡して、秋子の家を訪れた。翌朝、吉川は質札から足がついて逮捕され、また富枝は愛児二人を道連れに東京湾汽船から投身した。秋子と原島は、新聞でそれを知り自首を決したが、既に逮捕の手は二人の身辺に迫っていた。

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映画レビュー

4.0隠れた日本のハードボイルドの傑作!

2025年3月2日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

興奮

新藤兼人の昭和30年の作品。

まったく知らない作品だったが、日本的ハードボイルドの傑作。

話は、戦後の闇市時代、現在のようにリストラされて職のない人々が、生命保険の外交員の募集で集まり、結局外交員としてはうまくいかず、現金輸送車を襲う話。いたって普通のおじさん、おばさんたち5人が、悪事の染まって、破滅していく様を、淡々と描く。戦後の焼け跡や、貧しい長屋風景など、ほとんどオールロケの映画。

シナリオがいい。台詞も短く、説明口調じゃない。紋切型に陥りそうな題材だが、乾いたタッチで、リアルに普通に描く。今見ても古さを感じさせない。

とても映画らしい映画。映像とアクション(派手なアクションという意味でなく、登場人物の行動のこと)でストーリーが進む。台詞は、いたって効果としての使い方のみ。説明的な台詞が一切なし。

劇中音楽の使い方といい、影の使い方といい、カットの切れ(テンポ)といいジョン・フォードの傑作「荒野の決闘」を思い出す(というのは言い過ぎか)。

素晴しいのは、ほとんどオールロケだった点。多分独立プロで制作費がなかったためだろうが、これによってリアルな映像になった。まるで、アメリカンニューシネマの先取りである。

役者は、乙羽信子をはじめ、今では有名な人がほとんどでびっくりする。小沢栄太郎、北林谷栄がいい。奈良岡朋子はちょい役だが、なかなかいい雰囲気がでている。

それにはやり、シナリオが素晴しい。普通の人間がいかに犯罪に手を染めるか、そして犯罪を犯したものは、その良心の呵責によって破滅してしまうのだが、その過程を冷徹に追っている凄さ。

戦後の焼け野原がまだ残っている風景や、安っぽい遊園地のシーンなどの風景が、そのまま主人公たちの心象風景のようにみえる。

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mac-in

3.0新藤流クライムムービー

2021年5月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 息子が病気である未亡人矢野あきこは東洋生命に入社する。応募者が全員採用。6ヶ月経って成績が上がらなければクビとなる厳しさ。今の時代とそう変わりはない。

 まだ戦後混乱期。高度成長期のちょっと手前。まだまだ生命保険に入ろうという者が少ない時代なのだ。ウダツの上がらない男女社員5人は強盗するか自殺するかを相談するようになり、郵便車の情報も話合われる。切羽詰った貧乏暮しの面々。乙羽信子がふと地面を見やると甲虫の幼虫がアリに集られてもがいている映像。

 犯罪はおかしてはならない。しかしどうしようもない困窮生活。そうした葛藤と社会情勢をみごとに描いた作品だ。

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kossy

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