カルメン(1946)

劇場公開日:

解説

メリメの原作からオペラに脚色されたカルメンはビゼーの音楽と共に、余りにも有名である。その映画化も幾度びか各国で試みられた。この作品は「我等の仲間」「不思議なヴィクトル氏」で、わが国でもよく知られているヴィヴィアーヌ・ロマンス主演でつくられた。相手のドン・ホセはすでに近作「悲恋」「美女と野獣」で紹介されたジャン・マレーが選ばれた。演出のクリスチャン・ジャックは一九三九年に「天使の地獄」をつくり、その後「幻想交響楽」「最初の舞踏会」等を出しているが、戦前我が国へ輸入された映画では「青春乱舞」がある。ロケーションはすべてスペインで行われ、自然の景が豊富に取りいれられている。一昨年フランス国内で公開の際はロードショウの記録をつくった。

1946年製作/124分/フランス
原題または英題:Carmen
劇場公開日:1948年5月

ストーリー

カルメン。この二〇歳のジプシー娘は、スペインのセヴイラにある大きな煙草工場の女工であった。ある日、カルメンはその工場の人々で勤務中のナバラ生れの若き騎兵伍長ドン・ホセに目をつけ、なんなく彼の心をとらえてしまう。その翌日まるで獅子のようにいがみ合っている二人の女工の争いを止めるために、工場内に呼びよせられたホセは、カルメンがけんか相手の女工の胸にナイフを突き刺そうとしている瞬間彼女を押えることが出来た。工場内で刃物を用いる規則を犯したために、ホセはカルメンを衛兵所に、そして牢屋に連れて行かねばならない。然しその途中カルメンに誘惑されたホセは、彼女の媚態に抗しきれず、彼女を逃してしまう。この過失のためホセは、階級を落され一ケ月の営倉に服さねばならなかった、然しその事件以来、昼となく夜となくジプシー娘のおもかげが心に浮ぶようになる。一方女の方でもホセに恩と愛情を感じ、ひそかに獄舎にパンをとどけさせる。ホセは受取ったパンの中に隠した小さなやすりと金貨を見附けて感動した、然しホセは脱走しようとはせず、その刑期が過ぎ去る日を忍耐強く待った。やがて自由の身となったホセは、リダス・パステイヤの宿屋でカルメンを見出す。そしてたちまちカルメンのとりこになり、その気まぐれな心と、利益の道具にさせられ始める。カルメンは密輸入者団の一味であって、ホセを手先につかってセヴイラの町へヤミ商品を運びこませようとたくらんでいたのだ。しかもカルメンの天性の浮気心はおさまらない。その結果、カルメンにいい寄っていた中尉をしっとして、ホセは上官に致命傷までも与えてしまう。もはや死刑をまぬがれるためには、脱走する決意をするよりないホセ、カルメンは彼をジプシーの姿に変装させ、密輸入者の仲間に入れてその身の安全をはかる。それからのホセの不安な生活の中で、カルメンの愛のみが彼の生きる力となり、次第におち込んでゆく汚辱の世界から彼の目をおうものとなった。ある日、悪事を働いてジプシーのオキテによって追放されることになった片眼のガルシヤを、カルメンが実は、彼の女房であったということをホセは初めて知らされる。この時彼はこの惨めな状態から抜け出すため、彼女と共に新大陸(アメリカ)へ渡って平和な生活をしようと迫ったが、コルドバの闘牛場で出合った闘牛士にも心を許しているカルメンは応じない。こうまでされてもホセは彼女から離れる決心にはなれなかった。カルメンはホセを捨てたというわけではない。彼女が他の男に浮気をすればするほど、ホセに一掃熱烈にしつように迫ってもゆくのだ。ホセは恋に狂った。ジプシーがする様に彼は遂にカルメンを刺し殺してしまった。

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