めぐりあい(1948)
劇場公開日:1950年1月31日
解説
「悲恋」「山師ボオトラン」のマドレーヌ・ソローニュが「モロッコ守備隊」「山師ボオトラン」のジョルジュ・マルシャルと主演する映画で、ジルベール・デュペの小説を、「裏切者(1938)」の台詞を書いた劇作家シモン・ガンチョンが脚色し、中堅監督クリスチャン・スタンジェルが監督に当り「狙われた男(1937)」のルネ・ガヴォーが撮影し、「犯罪河岸」のモーリス・ティリエが音楽を作曲した。助演は新顔のモニー・ダルム、ピエール・デュダン、「血痕」のバルペトレ等。
1948年製作/フランス
原題または英題:La Figure de Proue
劇場公開日:1950年1月31日
ストーリー
フランソワとイーヴは兄弟のように仲の好い水夫である。船乗稼業の常で若い彼等は、港々の馴染の女もいるが、とくに深い仲のものはなく、かもめのように気転な二人である。ただフランソワには一つのロマンチックな願がある。それは彼が乗組んでいる帆船のへさきに彫ってある女像の、どこか神秘的な感じの美しい顔を理想の女の面影として憧れ、いつか此の顔と似た女を見出したいというのである。港に船がつくと、二人はつれ立って遊びに行くが、ちょっとした女出入りから喧嘩となり、彼等は多勢のヨタ者をのしたが、転んだはずみにフランソワは腕を折る。休暇を貰って二人はイーヴの故郷に保養に行く。イーヴの妹ジャニックは気立のいい娘で、深切に介抱してくれるのでフランソワの腕は程なく元通りとなる。その頃にはジャニックはフランソワを想う乙女となっていたが男の方では好意を感じるだけである。或日並木路でフランソワは馬具の故障で困っている女に出遭ったが、その女は彼が夢にも忘れぬへさきの女像に生写しで、一目見た瞬間フランソワは恋におちる。女は別荘にいる富豪の娘クロードで、その後雑貨店や野外料亭で彼女にめぐり合ううちに、彼女もフランソワを憎からず思うようになり、或る夕、別荘で彼女に接吻しようとすると、女はそれをさけて夜来てくれと云う。ところが夜訪ねると別荘には番人がいるだけである。失望と憤怒に心をさいなまれた彼が、木立のかげに転がっているところに、ジャニックが来合わせ、彼をなぐさめようと自分の身を任せてしまう。彼女の純情に心は動かされつつも、フランソワはやはりクロードを忘れ得ない。彼は別荘番に尋ねて本邸を訪れると、侍僕が現れて御主人の喪中であるから、未知の人を入れることは出来ぬと断られる。フランソワはこの失恋の苦しみを忘れるために、また船に乗る。彼は港々にクロードに似た女を探し、似た遊び女に出遭うと情熱の夜をあかす。或夜濃霧の中で、彼の船は衝突して沈没し、相手の船に救われる。その船にイーヴが乗組んでいる。彼はフランソワの不実を罵り、ジャニックが生んだフランソワの子供の写真を見せる。それを見るとフランソワは悪夢から醒めた心地で、ジャニックの許に帰る。停車場でイーヴと共に田舎へ行く汽車に乗ろうとすると、パリ行の急行列車に乗る一人の女性から、フランソワと呼びかけられる。それは幾年ぶりかに相見るクロードである。しかし、今となってはもう遅い。お人ちがいでしょうと云い捨てて彼はイーヴを追って列車に乗る。二つの列車はほとんど同時に出発だ。クロードはめぐりあったのも束の間すげなく去ったフランソワのあとを、空虚な眼でじっと見詰める。