今宵こそは

解説

「女人禁制」のアナトール・リトヴァクの監督のもとに「南の哀愁」のジャン・キープラが主演する音楽映画で脚本も「女人禁制」のI・フォン・クーベがA・ヨゼフと協力して書卸し、主題歌も「女人禁制」のミッシャ・スポリアンスキーが作曲に当った。撮影は「お洒落王国」のフリッツ・アルノ・ワグナーが「女人禁制」のロベルト・バベルスケと共同して担任している。キープラの相手は新進花形マグダ・シュナイダー、「会議は踊る」のオットー・ヴァルブルグ及び新顔のフリッツ・シュルツで、助演者は「女人禁制」のマルゴ・リオン、「勝利者」のユリウス・ファルケンシュタイン、「狂乱のモンテカルロ」のイダ・ヴュスト等である。

1932年製作/ドイツ
原題:Be Mine Tonight Das Lied einer Nacht

ストーリー

ラジオ切っての人気者、その名欧洲に冠たるテナー歌手フェラロ君は他の見る目の華やかさに引き更えて、当人は甚だ憂鬱だった。何処へ行くにも何をするにも口やかましい女支配人が付きっきり、天下の名テナーもこれでは篭の鳥同然だ、とうとう思い切って汽車旅行の途中で支配人から逃げ出した。これで当分の間自由の体だ。俗衆や支配人のロボットみたいなフェラロなんて消えてなくなれ!ところがフェラロ君は消えてなくならなかった。スイスのロカルノへ向う汽車の中で彼と知り合いになったのが、他ならぬフェラロ君なのである。よくある手でこの有名なテナーの名を無断で拝借して甘い汁を吸おうという魂胆だが、今のフェラロ君にして見れば自分の名前から離れたかったので、このインチキ青年コレツキイと名前を交換して久し振りでのんびりした気持になってロカルノの町へ乗り込んだ。美しい風景を前にして、誰はゞかることなく歌った。これが本当の人生というものであろうか。或る日一人のお嬢さんが道傍で顛覆していた自動車の下から泥まみれになって彼の目の前に這い出して来た。彼女はマチルドと云うこの温泉町の金持の娘だ。二人はだんだん仲良しになった。ところがコレツキイというのはお尋ね者のインチキ師だ。お蔭でフェラロ君は警察の手で逮捕された。何といっても今まで自分でインチキ師の名前を名乗っていたので申し訳が立たない。仕方がないので得意の歌を歌ってテナーのフェラロである事を証明した。おかげで折角隠していた正体がばれて町民の大歓迎、演奏会が開かれることになった。偽名をつかって自分をからかっていたと思いこんだマチルドは友達のお転婆連中を語らい演奏会に笛を鳴らして滅茶苦茶にしようと相談した。いよいよ憎らしいフェラロが現われて歌うのは「ボエーム」だ。何と云う美しい声であろう。知らず知らずに引き摺られて行く。終った時分にはフェラロが憎らしい所ではなく、マチルドの眼には熱いものがこみ上げて来るのだった。こう云う次第でマチルドはとうとうフェラロに本当に恋して了ったのである。

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