薔薇のワルツ

解説

「カヴァルケード」「夫婦戦線」の原作者たるノエル・カワードが書いた評判のオペレットを「蒼い幻想」と同じくハーバート・ウィルコックスが製作監督したものである。主役を演ずるのは「蒼い幻想」のアンナ・ニーグルとフランスの劇壇並に映画界で若手として評判のフェルナン・グラヴェとの二人で、これを助けて舞台で映画に於けると同じ役を勤めたアイヴィー・サンテリエ、「蒼い幻想」のクリフォード・ヒーザーリー、マイルス・マンダー、エスメ・パーシー、パット・パターソン、等が出演している。なお、この映画の台詞、作曲、作詞の全部は作者カワードの手になったものであり、撮影はフレデリック・A・ヤングが担当した。

1933年製作/93分/イギリス
原題または英題:Bitter Sweet

ストーリー

映画は一九三三年、イギリスのある富豪の邸に於けるパーティーから始まる。この家の娘ドリーにはヘンリーという婚約者があったが彼女は此の日、この会に興を添える為めに呼ばれて来た貧しいピアノ弾きのヴィンセントと恋仲であった。富と恋、この二つの間に迷っていたドリーの姿を傍らから見ていたのは気品ある老婦人であった。そして此の老婦人は若い二人を前にして彼女の昔語りを始めた。--映画は五十年の昔に遡る。イギリスの物持の娘サラーはヒュー・デヴォンと婚約の間であったが、いざその結婚の日が一週間後と差し迫ったその日に、富と家とを捨てて貧しいオーストリーの作曲者カール・リンデンの愛の腕に走った。そして二人は男の故郷である維納に馳落ちした。此処で二人は貧しかったが、それでも幸福に暮らした。だが矜恃カールは己れの力で妻を養えぬ事が心苦しく、そして彼は焦燥と自責とを感じるのであった。そうした日々を送っている内に不図カールは歌うたいのマノンに会った。マノンは彼に昔から恋を捧げていたので、彼の窮状を見て直ちに己れの働いているシュリーク経営のキャフェに彼を取持った。で、カールはシュリークのキャフェのオーケストラの指揮者となり、サラーは亦、同所のダンサーとなって此処に漸く二人に平和が訪れた。だが、この二人の楽しさを見るにつけても悲しいのはマノンの胸の中であった。然しサラー達の幸福は長くは続かなかった。このキャフェの上顧客のフォン・ルッテ大尉はサラーの容色に心を奪われて、彼女に云い寄った。そしてシュリークもルッテの意を受けてサラーに大尉の意に従えと命令するのであった。サラーは怖くなって夫に此処を立ち出でようと願った。始めの内は彼女の怖れを一笑に附していたカールではあったが、愈々ルッテの横恋慕の執拗なのを眼の辺りに見ては、もう堪らずカールは逆上してルッテに決闘を迫った。だが、一介の音楽師が手練の剣客に敵はう筈はなく、カールはルッテの剣尖にかかり、愛しい妻の名を呼びながら、命をおとした。斯く語り終えた時に、老婦人は、今は亡きカールが彼女に会て捧げた恋歌を静かに歌った。カールの恋の美しい想出は永遠に彼女から消えぬのである。そしてドリーとヴィンセントとは、老婦人の物語が終ると互いに相抱き合っていた。

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