ヘッダ・ガブラー

解説

原作は1890年イブセンが63歳の時の作品で、十九世紀の後半に於ける諾威上流の一婦人の風貌を活けるが如く描いた肖像劇である。(無声、全五篇)

1919年製作/イタリア
原題または英題:Hedda Gabler

ストーリー

ヘッダ・ガブラーは一将官の遺児であって、母親の愛情を全く知らぬ女である。豪奢な生活に憧れても周囲の事情に抑留されて、彼女の心の落ち着きと温かみは失われ、残忍と冷酷な性質を得、三十に近い年頃になった。ブラックと云う判事で、社交に巧みな軽薄才子と、政府から年金を貰って居る学者のゼオジ・テスマンと、天才肌の遊惰漢ヘルベルト・レオボルグの三人が同時にヘッダの愛を求めた。此の三人の男をヘッダに選択の対照としなければ成らなかったが、ブラックは微温的の朋友関係以上には踏み出そうとしない利口者である。ヘルベルトは恋愛三昧の相手には良いが、真面目な結婚問題には不向きである。そこでヘッダは最も冷淡に見えたゼオジを夫に定めた。しかし彼の態度はヘッダをして嘔吐を催さしめ、肝癪を破裂せしむるに過ぎなかった。彼女の心は益々荒んで行った。臆病で嫉妬深くて意地悪で男好きで薄志弱行で何時も空想に酔って居るヘッダは平常と同様に倦怠の瞬間に冷静に周囲の人々を嘲笑し、自分自身をも嫌悪し乍ら自殺し果てた。

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