老人と子供

劇場公開日:

解説

脚本・監督クロード・ベリ。彼のデビュー作であり、ストーリーは自伝でもある。撮影はジャン・ダルベィ、音楽はジョルジュ・ドルリューが担当した。出演は「大列車作戦」のフランスの名傍役ミシェル・シモン、ベリ監督がスカウトしたズブの素人で名子役と評判のアラン・コーエン、「ジャガーの眼」のシャルル・デネールほか。

1967年製作/フランス
原題または英題:Le Vieil Homme et L'Enfant
配給:日本ヘラルド映画
劇場公開日:1968年4月6日

ストーリー

一九四三年、ナチ占領下のフランス。ユダヤ人たちは収容所行きをおそれ、人目につかぬよう、こっそりと隠れ住んでいた。しかし、八歳の少年にとっては、そんな大人の世界は理解出来ない。クロード少年(A・コーエン)は腕白ざかり。いつも両親を、はらはらさせていた。そこで父親は、知人のつてをたよって、クロード少年を田舎に預けることにした。“ユダヤ人であることを、決して誰にも話してはいけない”と父親は、小さな息子に言ってきかせた。クロード少年が預けられた家は、老夫婦と老犬だけの淋しい家庭だった。そのうえ、主人のペペ(M・シモン)は第一次大戦生き残りの熱狂的右翼で、猛烈なユダヤ人排斥主義者だった。クロード少年は用心に用心を重ね、苦しい日が続いた。しかし、ペペは、頑固者にはちがいないが、単純で善良、根はやさしい人間だった。ペペとクロード、すなわち老人と子供は、まもなく恰好の遊び友だちになれた。菜食主義者のペペにならいクロードも肉を口にしないようになった。そして、自分はユダヤ人だと言って、ペペをからかうようにさえなった。しかし、ペペは、もちろん冗談としか取らない。ペペが第一次大戦で受けた傷を記念して、一族全員が集まる“傷の記念日”がやってきた。酔った大人にそそのかされて、クロードは、ある少女に可愛いラブレターを書いた。ところが後日、これが大間題にまで発展してしまったが、ペペはかばってくれた。そして、老人と子供の友情は、前よりも増したのだった。やがて戦争も終り、パリは解放された。両親がクロードを引取りに来た。別れの日、ペペは大つぶの涙を流してクロードを見送った。多分、彼は、自分の愛した少年がユダヤ人であったことを、永久に知らないことだろう。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

詳細情報を表示

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

5.0笑顔が素敵。 ファンキーで♪子供が好きで、笑い話が得意。殺生を避けるベジタリアンの優しいおじいちゃんは、 ユダヤ人を皆殺しにしたかったのだ

2024年12月30日
Androidアプリから投稿

オランダの、
書棚の裏の隠れ家に丸2年。
音を立てぬようにバケツを便器に、
8人で息を潜めたのはアンネ・フランク。

「ガス室か延命か」の、あの絶体絶命の運命の分かれ道で、大人しく息を潜められなかったユダヤ人の子供たち、ユダヤ人の赤ん坊たち、そして
ユダヤ人のADHD=多動性注意欠陥障害の子たちは、
=つまり「たくさんのクロードたち」は、あの時代にはどうなっていたのだろう。
子どもの声を隠し通せずに、両親と一家もろとも、その親戚までをも芋づる式にガス室に送ってしまったユダヤ人の騒がしい子供たちは、おそらく多数存在していたはずだ。

沖縄戦で、銃と火炎放射器をかまえて目の前を歩くアメリカ軍兵士に、悟られないように、声を出させないために、赤子を自分のわきに、その口と鼻を押し当てて窒息させてしまった母親の話を聞いた事がある。
もちろん自分から我が子に手にかけたり、赤子を抱いて鉄の暴風と言われた壕の外に出た親たちの姿も
生き残りの人たちの見てしまった光景だ。
みんなに迷惑をかけないために自死を選ぶわけだ。

・・・・・・・・・・・・・

1967年フランス
クロード・ベリ監督の自伝映画。
クロードは自分の幼いときの「疎開の実体験」を、彼の初めての脚本監督作として残したのだという。

落ち着きのなかった少年クロードが、
(傍線―) 家族全体の身の安全のために
田舎に預けられて、
「ユダヤ人でない振りをする事」を習得するのには、そうは時間がかからなかった。
その様子が、胸が痛い。

「いいかい?自分で体を洗うんだよ」とお母さんが繰り返しクロードに諭したのは、「預かって下さる先方さんに御迷惑にならぬよう自分の事くらいはちゃんと自分でするのだよ」
と言っているのでは「ない」。
割礼を見られたら強制収容所に送られてお前はガス室で殺されるのだと、
母は 出ない声で叫んでいるのだ。

本作品、
僕はたまたまなんの前情報もなしに何気なく見始めたのだが、先行きが読めずに不安でいっぱいになってくる冒頭からの展開だった。
野原や農場での泥だらけになりながらの遊び。
川やブランコ。
台所やベッドでのおじいちゃんのお喋り・・
おじいちゃんが愉快で楽しければ楽しいほど暗雲が怖い。急転直下に怯えながら画面を見つめる。

あの戦争で、ドイツは150万人の子供を殺したのだが、ドイツと戦うフランス政府も多くのユダヤ人をドイツに引き渡している。

優しくて面白いおじいちゃんが、いつ豹変するのかと震えて見守った。
バリカンでの丸刈りはアウシュヴィッツの暗示だ。

「世話をしてやるとウサギが可愛くって、もう食べられなくなるだろう、ウフフ?」とおじいちゃんはクロードを可愛がる。
目の中に入れても痛くないほどにこの子を可愛がる。
愛犬にもクロードにも、膝に乗せてスープを食べさせてくれる。
それが痛烈な皮肉なのだ。

ユダヤ人だと知ってしまったらどうなっていたのだろう。
“仔ウサギ”は殺されてしまったのだろうか・・
寸出のところでクロードはパリに戻ったのだけれど・・

・・・・・・・・・・・・・

メモ
検索されたい
[ ホロコースト時代の子供たち ]
ホロコースト百科事典より ―

劇中で、大きなポスターの「警告」にも有ったが、'
パルチザンがドイツ人を暗殺するごとに“見せしめ”でユダヤの子供が銃殺されていたこともわかる。

そんな時代を生きていたクロード・ベリの思い出。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
きりん

4.0ペタン元帥と老犬とユダヤ少年

2024年7月18日
Androidアプリから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 1件)
jarinkochie