劇場公開日:

解説

身分差をこえた純粋な愛の行為が、幼い少年に生涯消えることのない傷痕を残す。この作品は、一貫していまは年老いたその少年の目を通して描かれている。製作総指揮はロバート・ベレイズ、製作はジョン・ヘイマンとノーマン・プリッゲン、監督は「できごと」のジョセフ・ロージー、L・P・ハートレーの原作をハロルド・ピンターが脚色、撮影はジェリー・フィッシャー、音楽はミシェル・ルグラン、編集はレジナルド・ベックが各々担当。出演はジュリー・クリスティ、アラン・ベイツ、マイケル・レッドグレーヴ、マーガレット・レイトン、エドワード・フォックス、リチャード・ギブソン、少年レオにはドミニク・ガードが扮している。

1971年製作/118分/イギリス
原題または英題:The Go-Between
配給:コロムビア
劇場公開日:1972年2月11日

ストーリー

レオ(D・ガード)は夏休みを学友マーカス(R・ギブソン)の豪奢な邸で過ごすことにした。イングランド東部ノーフォーク州の広大な田園にかこまれたその邸には、夏ともなると多くの客が訪れ、上流階級特有の優雅な香りが漂っていた。そのモーズレイ家のひとり娘マリアン(J・クリスティ)を見た瞬間、レオの心には名づけようのない淡い感情がひろがっていった。ある日、なにかとやさしいマリアンの買物に伴って町へでたレオは、広場でマリアンが一人の男と立話をしているのを垣間見た。午後、皆で川へ泳ぎに行った時、先に泳いでいたテッド(A・ベイツ)という小作人が、邸の人たちを認めるといつの間にか姿を消してしまった。翌週マーカスがはしかにかかってしまった。食事に下りていくと、新しい客が来ていた。頬に戦争の傷あとを残したトリミンガム子爵(E・フォックス)であった。一人で遊びに出たレオは、ある農家の庭先で戯れていて、足に怪我をしてしまった。そのとき、テッドがどなりながらやってきた。しかし、レオが邸の客だと知ると急にやさしくなり、包帯まで巻いてくれた。そして別れぎわマリアンと二人きりになったら渡してくれと一通の手紙を託した。邸でマリアンに手渡すと、こんどはマリアンからテッドにと手紙を頼まれた。仕事の手紙だと説明されたレオは、マリアンのために働くことに喜びを感じた。その日、例の手紙を頼まれたレオは、封されてないのを見て、たまらなく見たくなってそっと盗み読みをしてしまった。レオは驚いた。恋の手紙だったのだ。レオは困惑した。不安とともに小作人に恋するマリアンへの失望感がみるみるレオの心にひろがっていった。しかもマリアンはトリミンガム子爵との婚約もかわしていたのだ。しかしレオの思慕を感じとっていたマリアン、テッドのなだめすかしにあったレオの心は微妙に揺れ、どうしても恋の橋渡しの役目をやめることができなかった。レオの十三才の誕生パーティが邸で開かれた夜、モーズレイ夫妻、トリミンガム子爵そして滞在客全員が顔をそろえたが、一人マリアンの姿が見えなかった。突然、眉尻を吊り上げたモーズレイ夫人(M・レイトン)が立ちあがり、レオの手をとり、ひきずるように納屋に向った。レオがそこで目にしたのは抱き合ったマリアンとテッドの姿だった。数日後、テッドが猟銃で自殺したことを知ったレオは、心に癒しがたい傷手を負って邸を去った。--そして約半世紀を経たいま、すでに額に深い皺を刻み込んだ老人レオ(M・レッドグレーブ)に、トリミンガム子爵に嫁ぎはしたもののあの青春の想いをいまだ瞳にやどしたままの老婆マリアンは哀願するのだった。「テッドの血をひく、いまは成人した孫にいってほしい。私の青春は美しく確かなものであったことを。」

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映画レビュー

3.5大人の恋愛に利用された少年の無垢な恋心を冷徹に描いたイギリス映画

2022年1月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

20世紀初頭のイギリスを舞台にした初恋に纏わるひと夏の出来事を追憶する、ある男性の回想映画。それは淡い初恋の美化されたノスタルジーではなく、階級社会の中で自由な恋愛を求めた一人の女性に利用され仕打ちを受けた13歳の少年の心の傷が描かれる。感傷に浸れる想い出とは程遠い。この残酷な物語を、ジョセフ・ロージー監督の冷徹な演出が更にイギリス映画らしくする。大人になるための階段を一つ一つ登るのが理想かも知れないが、現実は時に衝撃的な事件を経験せざるを得ないのかも知れない。身分の違い、恋愛と結婚、愛と性、子供と大人、男と女の対立構図が常に主人公の少年に覆い被さる。
階級社会で身分に従うことなく愛し合う女と男の間に入り、恋文の配達人をする少年の純粋な憧憬を汚す、大人の傲慢さを見抜いた作者がいた。苦い後味が残る恋愛映画として希少な存在である。

  1976年 11月26日  ギンレイホール

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Gustav

3.0少年のひと夏の恋・・・あぁ少年時代に戻りたい

2019年10月4日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 夏服を忘れたためにマリアンが服を買ってくれた。レオのことをとても気に入ってくれるマリアンは二人の男と文通している。少年レオの目には単なる友達であるかのように映ったのだろう。身分の違いもわからず、理解しがたいポストマン役。性教育も受けてなかったのでしょうね。クリケットの試合で盛り上がり、マリアンのピアノ伴奏で歌うテッド。半ば諦めかけた幼き恋は、マリアンとトリミンガムの婚約というニュースでますます混乱。

 魔術を使うことが出来る少年として紹介されていたが、あまり気の利いた伏線じゃなかった。ラストにマリアンの母親に手紙の事実がバレてしまい、マリアンとテッドの密会現場を目撃してしまうが、終盤の展開が目まぐるしく過去と現在を巡り、落ちつきがなくなる。「過去の経験は外国みたいなものだ」という冒頭の台詞通り、マリアンの真意を掴めぬままレオは育ったのかもしれない・・・

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kossy