劇場公開日 1972年2月11日

「大人の恋愛に利用された少年の無垢な恋心を冷徹に描いたイギリス映画」恋 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5大人の恋愛に利用された少年の無垢な恋心を冷徹に描いたイギリス映画

2022年1月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

20世紀初頭のイギリスを舞台にした初恋に纏わるひと夏の出来事を追憶する、ある男性の回想映画。それは淡い初恋の美化されたノスタルジーではなく、階級社会の中で自由な恋愛を求めた一人の女性に利用され仕打ちを受けた13歳の少年の心の傷が描かれる。感傷に浸れる想い出とは程遠い。この残酷な物語を、ジョセフ・ロージー監督の冷徹な演出が更にイギリス映画らしくする。大人になるための階段を一つ一つ登るのが理想かも知れないが、現実は時に衝撃的な事件を経験せざるを得ないのかも知れない。身分の違い、恋愛と結婚、愛と性、子供と大人、男と女の対立構図が常に主人公の少年に覆い被さる。
階級社会で身分に従うことなく愛し合う女と男の間に入り、恋文の配達人をする少年の純粋な憧憬を汚す、大人の傲慢さを見抜いた作者がいた。苦い後味が残る恋愛映画として希少な存在である。

  1976年 11月26日  ギンレイホール

Gustav