エレファント・マン

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劇場公開日:

エレファント・マン

解説

19世紀末のロンドンを舞台に実在した奇形の青年ジョン・メリックの悲劇の人生を、「イレーザーヘッド」のデビッド・リンチ監督が描き、鬼才リンチの名を世界にとどろかせた名作。見世物小屋で「エレファント・マン」として暮らしていた青年メリックの前に、ある日、外科医のトリーヴスという男が現れる。メリックの特異な容姿に興味を持ったトリーヴスは、メリックを研究材料にするため、自分が勤める病院に連れ帰ることに。何も話さず怯え続けるメリックを、周囲は知能が低いと思っていた。しかしある時、メリックが知性にあふれた優しい性格であることが判明するが……。日本では1981年に初公開。作品誕生25周年を記念した2004年にはニュープリント版、本国公開から40年を迎えた2020年には4K修復版でそれぞれリバイバル公開される。

1980年製作/124分/G/アメリカ・イギリス合作
原題または英題:The Elephant Man
配給:アンプラグド
劇場公開日:2020年7月10日

その他の公開日:1981年5月9日(日本初公開)、2004年11月20日

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第5回 日本アカデミー賞(1982年)

ノミネート

外国作品賞  

第38回 ゴールデングローブ賞(1981年)

ノミネート

最優秀作品賞(ドラマ)  
最優秀主演男優賞(ドラマ) ジョン・ハート
最優秀監督賞 デビッド・リンチ
最優秀脚本賞 エリック・バーグレン
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(C)1980 BROOKSFILMS LTD

映画レビュー

4.5醜さとは何か

2024年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

悲しい

難しい

デヴィッド・リンチ監督作品。 19世紀のイギリスで「エレファント・マン」と呼ばれた青年ジョゼフ・メリックの半生を描いた伝記的な劇映画。 本作の「エレファント・マン」の名は、ジョン・メリック(John Merrick)だが、それは医師のフレデリック・トレヴェスの表記に由来する誤記らしく、正しくは、ジョゼフ・ケアリー・メリック(Joseph Carey Merrick)。 また彼の半生もウィキペディアを出典とするが、本作とは大きく解離している。 そのためジョゼフ・メリックの半生をデヴィッド・リンチ監督が大きく脚色し、映画に翻案したものと考えた方がよさそう。 しかしそうはいっても、物語はかなり秀逸。 醜さとは何か。障害を扱う映画の常套句のようだが、それでも見事に描かれている。 ジョンを「エレファント・マン」として見世物小屋に出展させるバイツ。彼はビジネスパートナーとして、ジョンを承認するが、虐待をする。夜警のジムなんて一番最低な人物だ。人々から見物料をせしめて、夜な夜なジョンの病室に忍び込み、見世物をする。また上流階級の人も、大衆も酷い。好奇で畏怖する眼差し。あんな眼差しに常日頃から晒されるジョンの苦悩は想像に難くない。また医師のフレデリックも、バイツと自分自身を重ねる。彼はジョンを症例としてある種利用するのだから、完全な善人とは言えないだろう。院長や評議員もそうだ。 このように登場人物を非難する私ではあるが、ケンドール夫人や看護婦長、見世物小屋にいる小人のように振舞えるかと言えば、同意しかねる。 ジョンと対峙すれば、大衆と同様に好奇の眼差しや目を背けたくなるだろう。内なる醜さを再確認させられるようだった。

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まぬままおま

4.5これほど深く感動的な映画だったことに改めて衝撃を受けている

2020年7月27日
PCから投稿

今回の4K修復版は、その映像の美しさにただただ没入せずにいられない。今はもう亡きジョン・ハートが素顔を隠して放つ純朴な演技にひたすら心奪われ、アンソニー・ホプキンス演じる医師との友情にも胸迫るものを感じるこのひととき。映像が澄み渡っていることが手伝って、彼らの繊細な表現が他の要素と混濁することなく、より純粋に際立って伝わってくるかのようだった。また、今の時代に鑑賞することで、いかに医師が先入観を取っ払って、敬意と友情を持って向き合おうとしていたかがよく分かるし、彼が「私は興行師と同じなのではないか」と自問したり、病院内の世界を見世物小屋と比較するなど、リンチが意識的に盛り込んだ構造的なテーマ性も深く突き刺さる。終始に渡って映し出される大聖堂の模型が印象的だ。見えない部分を想像力で補って作り上げたその模型は、人間性や内面を真正面からしっかりと見つめることのメタファーとしても解釈できるだろう。

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牛津厚信

3.5メアリー・シェリーのフランケシュタインの二番煎じ

2024年12月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
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When I am 75♥️

5.0たといわたしは死の陰の谷を歩むとも、わざわいを恐れません

2024年12月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

知的

市村正親さん演じるエレファント・マンを劇団四季の公演で見た。だからこの映画も公開時に母親に連れられて行ったのだと思う。 見世物小屋の前、後ろ姿のシルクハットの男がぱっと振り向く、それは若きアンソニー・ホプキンス。そのホプキンスは、エレファント・マンを見てまばたき一つせず左目からつーっと涙を流す。"Am I a good man, or a bad man?"と妻に問いかけ苦悩する外科医のホプキンス。 ジョン・メリック(エレファント・マン)の左手はずっと眺めていたいほどに美しい。身だしなみを調えるようになってからは小指に指輪をしている。細く白く繊細でしなやかな左手。ジョンは知的で想像力豊かでことばの使い方もエレガントだ。 見世物小屋の中も病院でも飲み屋でも夜を照らすランプの存在が印象的だった。産業革命真っ只中のロンドン。機械は動き出したらもう止まらない。工場労働、電気、鉄道、蒸気船の場面が映ることで、都会に人間が集中し働く子どもが沢山いることが伺われる。煤けたようなあまり美しくないロンドン、それと対称的に美しく清らかなジョン。 恐怖心のあまり話ができず話せないと思われていたジョンが、トリーヴス医師(ホプキンス)と出会った。最後にジョンはトリーヴスに伝える:「自分を発見することができた。あなたがもし居なかったらこんなことも言えなかった」 病院の評議会にプリンセス・オブ・ウェールズがやってきてヴィクトリア女王の信書を代読する。その結果、評議会「満場一致」でジョンは今後もずっと病院に居てよいことが決まる。これはなんだか機械仕掛けの神様のようで白けた。でも考えてみれば、「ジョン」の真実を発見し病室を訪問する女優、トリーヴスの妻アン、病院のナース達や婦長、そしてヴィクトリア女王と、ジョンに手を差し伸べるのはトリーヴス医師を除けばいつも女性だった。ジョンが肌身離さず持っている写真の母が彼を守り導いたのだと思いたい。 アフタヌーン・ティーに招待された。美しい劇場で舞台を見た。部屋から見えるセント・フィリップ聖堂の全貌を想像しながら作り始めた紙の模型も完成した。全部経験した、できた。室内の壁に掛かる、ベッドに横たわって眠る子どもの絵がジョンにとっては一番の憧れ、あのように眠ってみたい。たくさんの枕を一つ一つベッドから床に落としジョンは平らなベッドに身を横たえ永遠の眠りにつく。母を夢見ながら。 デヴィッド・リンチ監督映画に導かれてこの映画をまた見ることができた。

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