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言わずと知れた特撮怪獣映画の古典。
本作が無ければ特撮の発展や怪獣映画というジャンルも無かった。『ゴジラ』も作られていなかった。
怪獣映画というジャンルに留まらず、秘境アドベンチャー映画としても悲恋映画としても人間の傲慢を描いた作品としても古典。
レイ・ハリーハウゼンは本作を見てストップモーションアニメの道を志した。
田中友幸は『ゴジラ』を作るきっかけとなった。
円谷英二は特撮の道を志した。
ピーター・ジャクソンは映画監督を志し、後に自らの手でリメイク。
映画界に遺した功績、後世へ与えた影響は計り知れない。
そんな名作中の名作を、もう何度も見ているが今更ながらレビュー。
映画監督のカール・デナムは新作撮影の為、街中で見掛けた若い女性アンをスカウトし、旧知の船長を雇い、半ば強引に出港。行先はデナム以外誰も知らない。
航路も半分過ぎた所で行先を明かす。
地図にも載っていない謎の島“髑髏島”。そこには人でも獣でもない“何か”がいるという。島民はそれを“コング”と呼んでいた…。
開幕暫くは平凡な人間ドラマ続く。決して優れた描写とは言えないが、ヒロイン、ヒーロー風の相手役、傲慢な事件勃発役とくっきり提示。
島に着いてからは一転してワクワクドキドキ感が高まる。未知の世界や秘境への冒険は、昔も今も胸躍らされる。
島民の描写はさすがに今、指摘されても致し方ない。ステレオタイプであったり、アンを拐うなど野蛮人のよう。
そしていよいよ、主役登場。
隔てられた巨大な壁の向こう。ジャングルの中から、生け贄にされたアンの前に姿を現したのは…
キング・コング!
本作より8年前、『ロスト・ワールド』で名を馳せたウィリス・オブライエンによるストップモーションアニメ特撮。
ダイナミックな動きやアクションは最大の見所だが、コングのちょっとした表情や仕草こそ見もの。芸が細かい! オブライエンもゴリラなどを観察し、細かな所こそ拘ったと思う。
実写の人間との絡みや肉食恐竜との闘いは語り継がれる。コングvsティラノは円谷英二が『キングコングの逆襲』でオマージュ再現。
我々が『ジュラシック・パーク』でリアルなCG恐竜に驚いたように、本作のストップモーションアニメで動く恐竜に当時の人たちはどれほど驚かされた事だろう。
ステゴサウルスやブロントサウルスなどの草食恐竜が人間を襲うのは今見るとアレレだが、ステゴサウルスとの遭遇シーンはスピルバーグが『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』でオマージュ再現。1925年の『ロスト・ワールド』と並び恐竜映画としても古典。
『ロスト・ワールド』と本作でウィリス・オブライエンの名は映画史に刻まれたと言えよう。
技術が盗まれる事を危惧し、弟子を取らなかったオブライエン。しかし唯一取った弟子が、ハリーハウゼン。
後のハリーハウゼン特撮もオブライエンが居なければ無かった。オブライエンからハリーハウゼンへ、ハリーハウゼンから後世の名だたる映画製作者へ。技術はリスペクトされ受け継がれている。
コングや恐竜たちを前に人間たちは為す術もない。
が…、一見人間たちが脅威に晒されているようだが、しかしよく見ると、人間たちこそ無情に命を奪う。
ステゴサウルスに爆弾で致命傷を与えた後、銃でトドメを。非常に残酷に感じた。
その最大の被害者は、無論コング。
コングも人間を噛み殺したり、踏み潰したりと近年のイメージでは考えられない凶暴性を見せているが、あくまでこれらは当時物珍しかった巨大モンスター=恐ろしいという見世物的なもの。悲劇や残酷性とは違う。
悲劇や残酷さはクライマックスに襲う。人間を…ではなく、コングを。
ジャックによって救出されたアン。追ってきたコングを爆弾で気絶させ、デナムは本土へ連れ帰る。
故郷を遠く離れ、拘束され、人間たちの見世物に。
抗い、逃げ出すも、エンパイア・ステート・ビルの天辺にて追い詰められ、戦闘機から銃撃され…。
映画史上でも最も悲劇的で残酷。私はいつも見る度に同情を禁じえない。
コングが、何をした!?
ラストシーンのデナムの名台詞。だが、私の意見は違う。
人間の強欲がコングを殺したのだ。
コングの魅力、ウィリス・オブライエンの特撮、色褪せぬ作品の面白さもさることながら、コングの末路…。地球上の尊い生命を奪っていく我々“怪物”へ突き付けるメッセージ。
今尚愛され、作り続けられる所以。
怪獣映画の古典。そして、元祖怪獣王。
キング・コング!