昨日への道
解説
「金色の寝床」を最後としてパラマウント社を去り制作者としてビー・ティー・シー社に入ったセシル・B・デミル氏の第一回監督作品で、ビューラー・マリー・ディックス女史とエヴェリン・グリーンリーフ・サザーランド氏合作の劇を映画化したもの、例によってジャニー・マクフアソン女史が原作者ディック女史と共同して脚色した。主役は「嵐の孤児」に出演したジョセフ・フィルドクラウト氏と「東へ向く三つの顔」「ブライト・ショール」出演のジェッタ・グーダル嬢が勤め、「金色の寝床」「地獄極楽」出演のヴエラ・レイノルヅ嬢、「地獄極楽」出演のウィリアム・ボイド氏を始め、ジュリア・フェイ嬢、カツソン・ファガソン氏、トリクシー・フリガンザ嬢等が共演している。
1925年製作/アメリカ
原題または英題:The Road to Yesterday
ストーリー
ケネス・ボールトンとその新妻マレナとは楽しい密月をあるホテルで過ごした。マレナは夫を愛していると共に恐怖に似た感情に囚われて身も心もケネスの愛に溶ろけることが出来ない。ケネスはそれが不快で堪らず、自然憂鬱に沈んだ。そして遂にある日ホテルの近くの少年団のキヤンプの起居している友人で若い牧師のジャック・モアランドに訴えた。牧師はただ神に祈れと勧めた。ホテルにはベス・タイレルとその許婚者アドリアン・トムキンスとも泊まっていた。ベスはお転婆娘でアドリアンは金持ちののらくらだった。ベスはある日ジャックの雄々しい姿を見て牧師とは知らず思いを寄せアドリアンとの婚約を破った。数日後ケネスが催した宴会の席でベスは初めてジャックが牧師であることを知った。モダーンなベスには物堅い牧師は幻滅以外の何ものでもない。彼女に恋していたジャックの求婚をベスはにべもなく拒絶した。ケネスは腕に故障のある一種の障害者だったが、妻マレナとの融和せぬ感情が昴ぶると共に彼の腕はなお悪くなり、いくら祈っても神は彼の願いを聞き届けてくれそうにもない。ケネスはジャックを訪ねて神を呪い友を罵った。そして帰ると妻に別離を宣言して1人名医の診察を乞うべくシカゴ行の列車に乗った。マレナも棄てられて留っても何かせんと同じ列車の隣の車に乗り込んだ。仲直りしたベスとアドリアンも途中からこの列車に乗ったがジャックも乗り込んでいることをベスは知らなかった。この5人を乗せた列車は衝突転覆した。辛くも身を以て逃れようとするケネスは裂白の悲鳴を耳にした。それは車軸の下敷きになっているマレナだった。ベスは人事不省に陥り、狂信者の叔母ハリエットに常々聞かされた前世の道--昨日への道に逍遥い始めた。妻の叫びにケネスは無我夢中でマレナを救い出した。今は怨みも去った腕に妻を抱いて彼は初めて愛と信頼に燃ゆる妻の目を見た。ベスは昨日への道に於いて自分がジャックを愛していることを悟った。意識を回復した時ベスはジャックに介抱されていた。かくてケネスとマレナ、ベスとジャックとは新生に甦った。