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本当は、難病に苦しむ闘病生活を描いた映画ならいくらでも、お涙頂戴映画に出来る作品なのだ!しかも子供が、難病を患っている作品ならば尚更、その気になれば、いくらでも観客の涙を絞り取る事が約束出来る作品でも有るのが普通なのだ。
しかし、この作品は全くの逆で、現実を直視した上で尚且つ、ひたすらに明るく、前向きに強く生きる決心をした、脳腫瘍を持病として生れた赤ちゃんの若き両親とその家族の真実の物語である本作品は、この作品の監督兼シナリオライター兼、主演女優の三役をこなしてしまった、バレリー・ドンゼッリ自身の体験を基に作られた映画だと言うから、誠に頼もしい限りである!
今では、我が国で制作される映画のその大半が人気コミック漫画の映画化からなっていて、その殆んどが、フィクションであり、しかも人気アニメばかりの実写化と言う世界的にみると、とても不思議な現象ばかりで、映画制作の為に、新しく書き下ろされた、オリジナル脚本というものが減っているのが、ここ数年来の我が国に於ける映画産業界の傾向と言っても良い現在だが、それに引き換え海外の映画界では、監督自身や或いは、シナリオライターの私生活での体験を映画化にするなどのオリジナル脚本による映画の制作の方がむしろ映画の主流である。
その点この作品は、実際に監督自身が体験して来た生活を描いた作品なので、病気の子供を持っていると言う事に、下手に同情をされる事が嫌で堪らない彼女達の生き様が反映している為に、彼らが、苦しい生活を余儀なくされながらも、決して否定的に、自分達を追い込まない様に生活をして、日々強く生きようと努力を惜しまず、前向きに生きる決心を固めていく日々の生活を淡々と描き出してゆく。
ついつい私達人間は、一人で一人前になった様に勘違いをしてしまう傾向にある生き者だが、病気の有無に関係無く、人は数え切れない程多くの人々の恩恵を受け、廻りの人々の愛と献身的な協力を得て生きて来ている事に、今更ながらに圧倒する程の親切を受けて現在と言う命が今日に至る迄続いて来た事を思い知らされる映画で、難病とは違った意味に於いて涙無くしてはこの作品を観る事は出来なかった!
そしてこの映画はやはり制作者自身の実体験の映画化と言う強みが有り、彼らの日常の描写の中に様々に揺れ動く若き夫婦の心の動きや、葛藤が繊細に、そして且つリアル表現されていて、ビジュアル的にも、そして音楽もとても効果的に彼らの心を反映する様に挿入されている点でも、大変に良く出来た作品だと思う!
小さい赤ちゃんだったアダムも両親の献身的な看病と愛を一身に受けて成長し、そして優秀な多くの医師や看護師の協力を得て、遂に病状の回復を得るに至る。
そしてこの作品のラストでは、実際のアダムが8歳になった自分自身の役で映画出演しているのだ。このハッピーエンドを迎える事が出来た彼らと関係者にお祝いの気持ちを思わず伝えたい気持ちが涌いて来る!生きる事の素晴らしさを再発見させてくれたのだから!