2度目の観賞。
「羊と鋼の森」を観たあとに久しぶりにこの「ピアノ・マニア」に戻った。
いやー、改めて面白かったですね。
のめり込んで画面に見入り ヘッドフォンに全神経を集中させました。
2000万のピアノを使い倒すプライスレスな人々のドキュメンタリー。
音、ん~、綺麗過ぎ!
大家エマールは妥協しないし、調律師シュテファンもくじけない。
でも痩せていくシュテファン・・
可哀想でいたたまれなくなってきた終盤
「落胆はしない。これは私の研究なのです」とシュテファンは自らに言い聞かせるように問いに答えた。
強がりを言ってはいるが、愛犬は心の慰め。夫の修羅場を外してくれている妻からの応援はチーズケーキ。
エマールもシュテファンを褒めてはいるんですよ、何度も。でも現場が余りにも熾烈過ぎてその褒め言葉が残らないんです。
調律。それは決して終わりも最上も存在しない世界。その理想追及のレコーディングの作業で、「これでいこう」とGO サインを出すのはどんなに難しいことか。
CDという形になって世に出されてしまえばケチも非難も覚悟だ。やはり最善を尽くすしかないよね。
あと楽器は#780か#109か#245か。
早い者勝ち。その辺の攻防もドキドキが止まらなかった。
シュテファンは選から落としたシリアルナンバーは明かさない。彼はスタインウェイの社員というくびきも負っているからだ。
結局、調律師も録音エンジニアもディレクターもホールスタッフも、(穏やかながら)たくさんの注文と質問に遠慮のない演奏家エマールの揺るがぬ理想を信じて、彼 エマールのためにやれる限りのサポートをして行くしかないのだ。
僕自身、自分の演奏を50テイクほど録ってもらった事があったが、最後は自分でも何がなんだかわからなくなってしまった(笑)。これでは駄目なんですよね。やりたい事が自分で確定してないし、やりたい事を実現するテクがそもそも備わっていない・・これがプロとアマチュアの違い。
エマールもシュテファンも揺れずにぶれずに自分の音と自分の技術への確信を手にしている。録音技術者たちもしかり。
だからお互いに敬意をもって意見も出来る。
ブレンデルは言う「シュテファンが手助けしてくれる」。
歌曲の伴奏のジュリアス・ドレイクも声をかける「苦労したのかな?」。
このねぎらいの一言はシュテファンは嬉しかったはず。
唸りました。職人芸への讃歌でした。
コンサートのプログラムやCDのクレジットには調律師の名前はぜったい落としてはならないです、名前を残すべきと思います。
あと触れるべきは出演者皆がフランス語ドイツ語、英語と縦横自在に喋れるのは、やっぱり地続きのヨーロッパ人の得をしてるところ。シュテファンの柔らかいオーストリアドイツ語も聞き所だな。
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で、
「羊~」の山崎賢人くん? 是非この映画を見て下さいね。あなたの暴言=「コンサートチューナーへの夢」は諦めたほうが良いと思うよ。あのきみの最後の一言で★ 減らしましたから。
追記:
・調律師は相性がある。探すべき。ベストパートナーを。
・#109の追っかけでメルボルンへ行く人間もいるかも。
・ラン・ランのシューベルトのファンタジーに陶酔(映像なしBGM )。