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山奥の小屋で自給自足の暮らしをしながら、テレビ局の社長や大学教授に爆弾を送りつけるテロリスト、垣内良一。
良一の孤独と心情を、突如として山小屋に現れた彼の兄弟たちとの対話で描き出す人間ドラマ。
主人公、垣内良一を演じるのは『嫌われ松子の一生』『アヒルと鴨のコインロッカー』の永山瑛太(瑛太名義)。
自殺した良一の兄、垣内ユキを演じたのは『GO』『ピンポン』の窪塚洋介。
亡くなった良一の父親、垣内セイジロウを演じたのは『海猿』シリーズや『パコと魔法の絵本』の國村隼。
主人公、垣内良一のモデルとなっているのは実在の連続爆弾魔、「ユナボマー」ことセオドア・カジンスキー。
カジンスキーは天才的な頭脳を持っていながら、人里離れた土地で原始的な生活を送っていた人物。
環境が破壊され続けていることに怒りを覚えたカジンスキーは、1978年から1995年に逮捕されるまで、航空会社や広告代理店の役員や科学者、大学教授などに爆弾を郵送し、少なくとも16件の爆弾テロを起こした。
産業社会に対する警鐘を記した自作の論文を、大手新聞に掲載するよう要求するなど、劇場型犯罪の傾向もあった。
カジンスキーは終身刑で今も服役中である…。
なんか凄いフィクションみたいな人が、世の中にはいるんですね〜。正直映画のキャラクターよりもキャラ立ちしてます。
産業社会・資本主義社会に対する反抗が動機なのかと思いきや、実は家族を失ったことによる喪失感が動機であり、本人も気づいていなかったその心の内を、死者のはずの兄・ユキと弟・ケンタの訪問により知る、というのが映画のざっくりとした内容。
作中で降り積もる雪のように、しっとりと心に沁みる一作。
環境テロリストが主人公だけど、派手な爆破シーンは無いし、サスペンス要素も無し。
ピエロフェイスの謎の人物が雪山を訪れるのだが、それが結構怖い🤡最初はホラー映画かと思った。
ほぼ全編にわたり雪に覆われた山小屋で物語が展開する、舞台演劇のような作品。
凶行に走る良一の心奥を解き明かすことが主題のかなり地味な作品なので、ミステリー映画とかサスペンス映画かと思って鑑賞すると相当ガッカリするだろう。
映画冒頭で良一が語る、長々と続く犯行声明の独白はかなりナルシスティックかつ独善的で、この段階で観る人を選びそう。
良一の主張はかなり青臭く、また賢者のように悟っているようで、ユキやケンタにはその未熟さを見抜かれている。
この良一の弱さや情けなさの描き方はなかなか巧みで、犯罪者である彼に感情移入させられてしまった。
クライマックスの良一から妹・ミカナへのメッセージなんかは、ちょっと説教くさく感じてしまう。
ユキの主張も分かるような分からんな…。
宮沢賢治の詩が重要なファクターになっていることからも分かるように、全体的に文学的…というかポエミーで、やはり監督のナルシズムが前面に出過ぎているかな?と思ってしまったり…。
あと、何故かラストが武っぽい。「ぶっ飛ばすぞ。このやろう!ダンカン馬鹿野郎!」
72分と短いのだが、それでも体感時間的にはかなり長く感じてしまった。
個人的に嫌いでは無い作品だけど、かなり人を選ぶだろうなぁ💦