インモータルズ 神々の戦い : 映画評論・批評
2011年11月8日更新
2011年11月11日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
現代における“不滅のもの”とは?
クリストファー・ノーランが「バットマン」を再起動、J・J・エイブラムスが「スター・トレック」を再起動した今、「ギリシャ神話」を再起動したら……。これが監督ターセム・シンの思惑なのではないか。
そこで監督が目をつけたのがギリシャ神話の“神VS人間”つまり“インモータルズ(不滅のもの)VSモータルズ(滅びるもの)”という構図。神が人間の想像力の産物となった今、この構図を再起動すると、神々は若返って不滅ではなくなり、別のものが不滅になる。
それは何か。その答は、本作でもっとも強い印象を残す映像にある。それは、人体から飛び散る血の飛沫、それが描く放物線だ。この図形を可視化するため、運動速度は遅く加工され、残像までもが描かれる。戦闘場面が常に暗いのも、血飛沫の赤を際だたせるため。そして、この放物線とは、重力や慣性などの物理法則が視覚化されたもの。この法則こそが、再起動された”不滅のもの”なのだ。それに支配された世界で、不滅性の対極にある存在、常に変化し続けて必ず死ぬ存在である人間が、不滅性を獲得することは可能なのか。この映画はそれを描こうとして、加速度的にギリシャ神話には似ていないものになっていく。その乖離ぶりがむしろ小気味よい。
ちなみに、この監督得意の引用大会も健在。第1作「ザ・セル」ではピエール・エ・ジル等の現代アート、第2作「落下の王国」ではセルゲイ・パラジャーノフ監督系民俗芸術の引用が印象的だったが、今回もミケランジェロやビザンチンのモザイク画等が続々。監督の発言によれば、カラバッジオ・ミーツ・「ファイト・クラブ」を意図したそうだが、さて。
(平沢薫)