「ハイキック・ガール!」を監督した木村好克監督が、同作で主演として起用した格闘美少女、竹田梨奈を再び主演に迎えて描く空手映画。
ここまで、作品全体が空を斬る物語も稀であろう。空手映画と銘打たれた本作。もちろんのこと、作品の軸として置かれているのはアイドル顔負けの美少女、竹田が派手に暴れまわる格闘シーンであるはずだ。しかしながら、観客は早々に違和感を感じるだろう。
実は本作、物語全体を通してみると8割以上が回想シーンで構成されている。亡き父親との別れを切なく描くシーンが、果たして何回使い回しされただろうか。「お父さ~ん!」と死に行く父に叫ぶ幼き頃の主人公の姿が何よりも記憶に残ってしまうのは、格闘映画としては致命的な特徴である。
モノクロ回想ばかり先行する世界ならば、肝心の空手は「必死でタイミングを合わせてます」と言わんばかりのふにゃふにゃ感が漂う力無き拳。蹴り。そんな適当な組み手がスローモーションに反復で説明されるものだから、興奮も驚きもあったものではない。この脱力感が充満した空間で殺人空手、必殺拳、達人の構え!と言われても、血沸き肉踊る拳のぶつかり合いを期待してみている観客は、苦笑以外に何を浮かべろというのか。
では、その代わりにドラマはしっかり組み立てられているのかと言われると、これもまた残念な力の抜け具合である。格闘センスが生命線である竹田に演技を求めるのは酷だとしても、物語を締める役割をもつ敵役の堀部も人間が見えてこない。何故にそこまで格闘馬鹿に?時折出す必殺拳は何ですの?結果として「良く分からないけど、顔が濃いおじさん」で終わってしまう。
他の役者陣も、無駄の多い台詞回しに踊らされて三文芝居。これでは、何を観れば良いのか、困惑せざるを得ない敗北感が満ち満ちてくる。
とにかく、全ての要素に意欲も、創意工夫も、情熱も見えてこない特異な一品である。カメラのアップにも耐えうる美しさを見せ付ける竹田の魅力に対して評価を与えられるが、作品としては・・頭を抱えるしかない。