告白(2010)のレビュー・感想・評価
全345件中、81~100件目を表示
「復讐の怒りに打ち震える悲しきダークヒーロー森口悠子の物語」
この映画を一言で表すなら・・・
「復讐の怒りに打ち震える悲しきダークヒーロー森口悠子の物語」
と言えます。
いったいどこが「悲しき」なのか、「ダーク」なのか、「ヒーロー」なのか私なりにこの映画を解説しながら感想を書きたいと思います!
※ ネタバレ注意です! ※
◆ ストーリー
とある中学校、1年B組。HRの時間になると担任教師の森口悠子(松たか子)は静かに語り始めます。
「皆さん知っての通り私はシングルマザー。恋人とは結婚する前に別れました。理由は彼が過去の海外渡航歴が原因によるエイズ、家族や娘に迷惑が掛かると言い、私の元を離れていきました。」
「娘はこの学校で死にました。警察は事故死だと処理しますが、真相は違います。このクラスの中のある2人組が私の娘を殺したのです。」
「いまさら警察の検証結果を蒸し返すつもりはありません。しかし皆さんに命の重さを知ってもらう為、先ほど私は犯人AとBの2人が飲む牛乳にエイズに感染した彼の血液を混入しました。」
「潜伏期間は5年程、10数年程で死に至ります。命の重さを知るには十分な時間でしょう。」
たちまちクラスは大パニックに。恐ろしい担任の教師の告白から物語は始まり、事件に関わる登場人物の独白で物語が紡がれていき、やがて物語は凄惨な結末を迎えます。
◆ 登場人物に着目
◆ 1年B組の担任 森口悠子 (松たか子)
最愛の娘を殺された恨みから恐ろしい復讐劇を実行します。彼女は過去に生きています。後で詳しく解説しますがここにこの映画のやるせなさ、後味の悪さがあります。
◆ 犯人A 渡辺修哉(西井幸人)
クラスでも優秀な成績を修めます。中でも科学の知識は相当なもので、学生発明品コンテストに応募し入賞するほど。
しかし、コンテストに入賞しても新聞での扱いは小さなもの。それよりも同じ中学生が起こした殺人事件が紙面を大きく飾ります。
もっと大きな事を、殺人を犯すほどでないと誰も認めてくれないと錯覚し、クラスでも陰気な犯人Bに友達になろうと歩み寄り、そそのかし、共謀し、森口先生の娘を殺す計画を企てます。
修哉は「誰かに認められたい。褒められたい」事に執着しています。
◆ 犯人B 下村直樹(藤原薫)
クラスでも陰気な存在。犯人A 修哉の歩み寄りにより、心を開きます。直樹は友達になりたかっただけでした。そして友達に認められたかった一心で犯罪に加担します。
しかし修哉は友達になりたかったわけではありません。犯罪者になり、有名になりたかっただけでした。森口先生の殺害計画は大詰めの所で誤りを見せます。
修哉は直樹を「お前は出来損ないだ」と罵り、突き放します。
この一言により直樹は独断でさらなる凶行に及び、森口先生の娘を殺してしまいます。
◆ 犯人B 直樹の母 下村 優子
息子を溺愛するあまり、必死に守ろうとします。事件を事故だと思い込み、息子は悪い友達にそそのかされただけだと信じきっています。森口先生との面談でも亡くなった先生の娘に対してではなく、息子に対して「かわいそうに、かわいそうに・・・」と優しく手を握ります。
◆ 若き熱血教師 寺田 良輝先生 通称ウェルテル
森口先生が学校を去った後にやってきた1年B組の新担任。彼は修哉や直樹が殺人犯であることや、エイズウィルスが混入した牛乳を飲んだ事件を知りません。
その一件後、修哉はクラスメートから壮絶なイジメに遭い、直樹は不登校になります。
寺田先生は裏の事情を知らずになんとかクラスからイジメをなくそうと生徒たちに必死に呼びかけたり、直樹の不登校を直そうと熱心に家庭訪問を繰り返します。
一見よき先生ですがその熱意は空回りし続けます、それはなぜか?こちらも後で詳しく解説します。
◆ この映画の「父性」と「母性」に注目
◆ 犯人A 渡辺修哉(西井幸人)-悪母と父性の感じられない父
修哉の母親は科学者であり、研究職に就いていましたが、結婚を期にその道を閉ざします。しかし今度は研究職としての夢を息子に託し始めます。英才教育と言えば聞こえはいいですが、実際は幼い子供に無理な課題を押し付け、何度教えても出来ない息子にヒステリックを起こし、暴力を振るうように。
結局その家庭内暴力が原因で修哉の父と母は離婚し、修哉の母親は家を去ります。これにより、修哉は母親からの包み込むような愛情や、承認といったものが完全に抜け落ちて育ちました。そのせいで彼は誰かに褒められたい、認められたいといったことに執着していたのです。
次に修哉の父親に注目してみます。劇中では存在が薄いですが、修哉の口から決定的な一言が出ます。
「最低な凡人と結ばれ、生まれた子、それが僕だ。」
「凡人」、つまり厳格な態度の父親というわけではないが、父としての厳しい態度もなく、リーダーシップや憧れの存在になるほどの魅力を感じない父であったという事です。つまり修哉には父性が欠如していたのです。
父性とは社会のルールや秩序、良いおこないと、悪いおこないを子に教えるものです。これが欠如すると子供はやっていい事と悪い事、物事の善悪が付かなくなります。
現に修哉は動物虐待という非行に走るようになります。
◆ 犯人B 下村直樹(藤原薫) -強過ぎる母性の母と父の不在
直樹の母親、優子の独白によると、父は仕事人間でいつも家におらず、長女は既に独り立ちして家を出ています。彼女にはもう息子しかいません。それゆえに直樹を大切に思い、溺愛します。
犯人A 修哉の母親とは違い、犯人B 直樹の母親は優しさと愛情に溢れています。母性とは守る、包み込む優しさ、愛情です。
しかし「母性」が過剰に働いてしまうのも子供に悪影響を与えます。包み込むような優しさのあまり、子供が家にへばりつくようになり、社会へ独り立ち出来なくなるのです。
もし父性が機能する父親が居れば社会への船出を後押しするのですが、それも叶いません。修哉の父親は仕事人間。下村家には常に父が不在です。劇中一度も出てきません。
◆ この映画で一番父性的だった人物は誰か?
◆ 寺田先生(ウェルテル)の熱意はなぜ空回りしたか?
寺田先生は明るく、元気な性格。一般的な教師のイメージとは違い髪は茶髪で赴任当初からフレンドリーに生徒たちに歩み寄ります。
1年B組にイジメがあることを知ると必死になくそうと生徒に訴えかけたり、不登校の生徒(直樹)をなんとか立ち直らせようとクラスで寄せ書きを書いたり、みんなで書いた授業ノートのコピーを直樹に届けようと提案します。さらに直樹になんとか学校に来てもらいたくて熱心に家庭訪問を続けます。
寺田先生は持ち前の気質でクラスを一つにまとめようとするリーダーシップを持っていて、生徒たちを明るい方向へ導こうというような父性を発揮しています。生徒たちの心に響いてもよさそうですが、実際には空回りします。
それはなぜでしょうか?寺田先生は牛乳の一件や、前任の森口先生の娘が亡くなった事件の真相を知らないから?クラスの陰で糸を引いている者の存在に気づけなかったから?
もちろんそれもありますが、共感できるビジョンを示せなかったところに最大の原因があります。
寄せ書きも、ノートのコピーも、家庭訪問も、提案そのものは素晴らしいですが、生徒たちから真に共感を得ていたわけではありません。
寄せ書きは分からないように陰湿な悪口が落書きされ、ノートのコピーも提案した時は不穏な間がありました。「家庭訪問に誰か一緒に来てくれないか?」という提案にミズホが選出されますが、クラスの同調圧力によるものでした。
共感を得なければ発揮した父性も空回りするのです。
◆ 「復讐の怒りに打ち震える悲しきダークヒーロー森口悠子の物語」とは。
◆「悲しき」「ダーク」「ヒーロー」「森口悠子先生」
冒頭、生徒たちの前で「いまさら警察が事故と処理したことを蒸し返しはしないが」と前置きした上で「教師として、大人としての責任から子供たちに命の重さを教える」と言い放ち、犯人Aと犯人Bの牛乳にHIVに感染した婚約者の血液を混入したと告白します。
クラスはパニック、森口先生はそのまま学校を去ります。
そのまま物語からフェードアウトするかと思われましたが、その後も犯人A 修哉がイジメられるように仕向けたり、犯人B 直樹を精神的に追い込むべく裏で糸を引いていました。
森口先生は「教師としての責任」「命の重さを教える」と教育者としての使命感からと言いますが、その実は復讐劇であり、れっきとした犯罪です。
森口先生は過去にフォーカスして生きているので復讐の怒りに打ち震え復讐劇を演じるのです。
私は過去に執着せずに、もっと今にフォーカスして生きればこれからの人生で自分の幸福が見つかるのに・・・・とは言えません。
なぜなら森口先生は最愛の娘を自分が担任する生徒に殺されたのですからね。
私にはそんな気持ちを無視した正論は言えません。
父性とは規律、規範を示す、裁く、という機能もあります。皮肉なことにこの物語で一番父性を発揮していたのは森口先生でした。
正義のヒーローなら悪を裁くと街や民衆に平和と秩序がもたらされますが、この映画は混沌を極めます。
私はここからの一連のシーンで「悲しき」「ダーク」「ヒーロー」という言葉を込めました。
物語の途中で女生徒(ミズホ)が街で見かけた森口先生に声をかけるシーンがあります。ミズホは犯人A 修哉を気にかけていました。
ミズホは森口先生に訴えかけます。
「修哉は母親に認められたかったんです。
誰かに認められたかったんです。」
この言葉に森口先生は不気味な大笑いという形で応えます。口や声では笑っていますが、目が笑っていません。そんなことは娘を殺された言い訳にすらなりませんからね。
次の瞬間、「憎しみを憎しみで返しても何にもならない」と森口の婚約者のセリフがフラッシュバックします。
森口はミズホの言葉を笑い飛ばし「娘を殺された恨み、赦しません」と静かに返します。
そして森口はミズホに背を向けその場を去ります。
暗い夜道を歩く森口。その目から涙がこぼれ始めます。
この涙は復讐に対する揺らぎでしょう。
立ち止まり、膝から崩れ落ちボタボタと落ちる涙。
しかしその直後、冷静な表情に戻ると
「ばかばかしい」と言い放ち、立ち上がるのです。
僅か数十秒のシーンですが、この葛藤、揺らぎ、そして完全にダークサイドに堕ちてしまった森口悠子の決心のシーンに私も涙が止まりませんでした。
ミズホの話をキッカケに森口は修哉の弱みは母親であることを掴み、更なる復讐計画に出ます。
ここからクライマックスに向けて誰も幸せになれない、止められることのない復讐劇が始まるのです。
◆ まとめ
私なりに物語の「父性」と「母性」に注目して読み解いてみました。「復讐の怒りに打ち震える悲しきダークヒーロー森口悠子の物語」は途中ミズホの言葉に、過去の婚約者の言葉に一瞬立ち止まりましたが復讐は止まる事はありませんでした。物語は恐ろしい結末を迎えますが、この先森口悠子さんの人生に幸せが見つかるように願って止みません。
罪の種
私も娘を奪われたら同じことをすると思う。
楽な死よりもその罪の重さを思い知らしめ地獄の底を這いずり回ってもらいたい。
ラストの爆破シーンだけ無駄に長すぎ。
でも、誰の罪なんだろう・・・
加害者も被害者な部分もあって、でも許されることではなくて、苦しい。
最も恐ろしいのは人
病み映画だけど、映像がいちいち美しい。
お松を始めとした役者が圧巻。
すごい。
子役もすごい。
演じたその後が大丈夫か心配になる。
時計仕掛けのオレンジの主演のマルコム・マクダウェルもかなりきつかったみたいだし。。
ちょうど2010年作の「曲げられない女」を一気見したあとで、永作の旦那役だった山口馬木也さんが、お松の婚約者の桜宮として登場。
「重力ピエロ」や「アヒルと鴨のコインロッカー」を見たばかりで岡田将生くんが登場。
「ハルとアオのお弁当箱」のアオくん役の井之脇海くんは、「教場」にも
出てたし、これにも出てるし、芸歴長いんだなぁ。
私がここ半年くらい、動画を見過ぎなのかもしれない。。
子供の芦田愛菜ちゃん、13歳?の橋本愛ちゃんも出演。
嫌われマツコも美しく救いが無かったけれど、
ほんとすごい演出だなぁ。。
どうやって構想を練るんだろう。
湊かなえさんの原作は未読のため、世界観が気になる。
にしても、お松さんほんとすごい。
木村佳乃も途中顔わかんなくなるくらいすごかった。
原作と映画なら、、
まず最初は小説で、
面白かったです!
次に映画化されて映画館へ
観た後、少し気持ち悪くなりました。
それ以来の鑑賞です。
歳をとったから、感想も変わるだろうなと思い
映画2回目に挑戦!
やっぱり観て気持ち悪くなりました。
映画賞をとったのは知ってます。
でも映像、特にスーパースロー
流行ったかもしれないけど使い過ぎ、、、
後、場面に合わない音楽、
狙ってやってんだろうけど、
中学生を主に、笑顔や動きが
悪意の塊みたいに使われてて
色々悪趣味に感じました。
何年経っても変わりませんね。
まぁつまり映画の監督が悪いです。
原作は凄い面白いのに。
好みの問題かもしれませんが
自分は嫌いです。
点数は原作と松たか子さんで
2点分ぐらいです。後は、、、ですね
原作と良作
淡々とした狂気
子ども出来てからみる凄まじい重さ
告白
面白いという表現がふさわしいのかは分からないが、ともかく凄い映画をみた。
とてつもなく重い映画で引き込まれる。
湊かなえはいくつか読んでいて、告白も発売当初に読んだ。
この映画も映画館でちゃんとみた。
今回は二度目。
当時と大きく違うのは、自分に子どもができているということ。
必然、自分の子どもに重ね合わせるわけだが、これがまた酷く暗い気持ちにさせる。
自分のクラスの生徒に、自分の子どもをこんなことされて、まともな精神でいられるだろうか。
松たか子のような行動力は発揮できないものの、似たようなことをする衝動にかられるのではないだろうか。
原作がしっかりしてるだけに、内容はとても濃い。
最初は松たか子演じる担任の先生の告白から始まるけど、そのあとは登場人物それぞれの視点での告白が続く。
そうすると、松たか子目線で感じた印象と、実は本人が思ってたことは、案外違っていたことが分かる。
ミステリーとしてよくできてる。
それにしても、松たか子怖い
【”血。 そして、因果応報の極北の罪と罰” 】
■劇場で鑑賞した際、余りの衝撃故に、暫く席を立てなかった作品。
原作は読了していたのであるが、中島監督の前作までのテイストを拭い払った、激烈な復讐劇の映像に戦慄した。
数多のホラー映画が、裸足で逃げ出す程の恐ろしさと、鑑賞後の嫌な感覚が、未だに忘れられない作品である。
・その感覚を醸し出す「レディオヘッド」の”ラスト・フラワーズ”の美しいメロディが凄惨な映像の背後で、抑制したトーンで流される様。
- トム・ヨークのあの透明で、リリカルな声は、近作で言えばリメイクされた「サスペリア」の背景で流された数々の楽曲が印象的であるが、ルカ・グァダニーノ監督は、今作から彼の楽曲の起用を思いついたのでは、と勝手に思っているほど、抒情的ホラー・テイストの作品に合っている。 -
・内容は、原作も含め巷間に流布しているので、言及しないが、彼の原作のダークな世界観を映像化した中島監督の手腕には、脱帽である。
・演者も、松たか子を始めとして、素晴らしい。(年齢的に、当時今作を観れなかった少年A.Bは今作を見て、どう思ったのであろうか・・。
特に印象的なのは、少年Aの唯一の理解者だった美月を演じた橋本愛である。
一般的には、彼女の女優としての名を高めたのは、「桐島、部活辞めるってよ」であるが、私は今作も「桐島・・・」に並んでいると思う。
<このような事を書くのは、稀であるが、もし今作を未鑑賞の方はお時間があれば鑑賞されることをお勧めしたい作品である。
但し、精神的に安定した状態である事が望ましい・・、と思います。>
絶望の音
うおー!
友達から原作の小説を借りており、読まずに早半年。
Netflixでこの映画を発見し、先に見てやろと軽い気持ちで見始めた。
もう音響とか演出がすごい惹き込まれる!
1人ずつの告白で物語の空いた穴が埋まり、さらにその奥にある真理に導いてくれる感じが好きだ〜
メインの人で大口開けて笑うシーンが修也しかいなかった(のかな?)ため、滅多に笑っていなかった直君が愛美を投げる所や森口先生の笑顔がかなり怖かった。ヒィ!てなった。狂気の笑顔。特に直君のあの笑みよ...
後半、修也に情が入りかけて(オイ)おり、どうなるんだろうとソワソワしてたら、、森口先生が復讐一直線!って感じで動いており、「そうだった...最初から森口先生は復讐のために動いていたじゃないかー!修也がイケメンだからって!!騙されないぞ!」と目が覚めた笑
あとは、橋本愛がひたすら可愛く、岡田将生がカッコ良かったです。木村佳乃のママ役もよかった!原作も読むぞー!
この映画が中島監督の最高傑作なのかもしれない
告白
苦しい・・・
冒頭から、暗い画面、暗いトーンで松たか子がボソボソ言い続け、一体いつになったら、スカッとするのだろうと、見てましたが、ずうーっと苦しかった。見終わって尚。そりゃ、たった一人の残された家族、最愛の娘が事故死ではなく、いたずらに殺されたとわかったら、復讐したいと思うだろう。ましてや、自分の生徒たちで、反省どころか、楽しんでいる節もある。こんなのにも少年法が適用されるのかと、実際の事件でも思う時がある。更生すれば良いのか、しかし、死者は戻ってこない。。この映画の見どころは復讐のエグさ。犯罪者二人だけでなく、周りの人を巻き込んだら、アウトだろう。意図していないが、生徒の女子は特に可哀相だ。後任の熱血教師も短絡的思考が仇となったが、この後、教師続けられないだろう。クラスの他の生徒も壊れているが、一生忘れないだろう。ラストの爆弾を母親の元へすり替えたのは、何となく分かってしまった。松たか子、この先どうするんだろ。一人では観たくないかもしれない。
これは観るべき
全345件中、81~100件目を表示