カーズ2 : 映画評論・批評
2011年7月26日更新
2011年7月30日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
“ピクサーらしさ”に欠けた偉大なる失敗作
大ヒットした第1作「カーズ」の舞台ラジエーター・スプリングスを飛び出した愛すべきキャラクターたちの再びの大活躍が描かれるピクサー創立25周年記念作品。天才レーサーの“ライトニング・マックィーン”は、日・仏・伊・英で開催されるワールドグランプリに参戦。一方、相棒のおんぼろレッカー車“メーター”は、ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」よろしくスパイに間違われ、巨大な陰謀に立ち向かうはめになる。
第1作以来、5年ぶりにメガホンをとったディズニー&ピクサー両アニメスタジオのボスであるジョン・ラセターのカーマニアぶりは前作以上で、パリのノートルダム寺院に“カー・ゴイルズ”、ロンドンのビッグベンに“ビッグ・ベントレー”を登場させるなど、「ピクサー哲学」により見事に擬人化された145種類にも及ぶユニークなカーキャラクターたちが随所に笑いを振りまいている。また、007映画のような大冒険活劇の中に、往年のスパイ映画の元ネタを探すこともできて愉しい。例えば、英国のスパイ(声優マイケル・ケイン)は往年のボンドカー、アストンマーチンだったりする。
しかし、そうした小ネタで笑いをひねり出すことに作り手たちが情熱を注ぎ過ぎたためか、他のピクサーの傑作群と比べると、ストーリーの熟成度という点で不満が残るのは否めない。同じ続編もの「トイ・ストーリー3」では“友情の尊さ”の先に、失業などの社会問題などの崇高なテーマを見え隠れさせ、大きな感動を生んできたではないか。本作における世界支配を目論む悪の組織の存在(カーマニアなら一目瞭然!)は確かに皮肉めいているが、それが万人にわかりづらいという点で、“ピクサーらしさ”に欠けた偉大なる失敗作といえるかもしれない。
(サトウムツオ)