劇場公開日 2010年2月5日

  • 予告編を見る

「マンデラはマキャベリストか?」インビクタス 負けざる者たち prof1961さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0マンデラはマキャベリストか?

2010年2月25日
PCから投稿

泣ける

知的

随分世評が高い。決して悪くない。冒頭のマンデラが、すわ襲撃、というシーンも上手いなぁと思った。だが、なにか釈然としない。
 それはやはりマンデラの描かれ方に問題があるのだと思う。スプリングボクスのエンブレムやユニフォームの問題、あるいは白人のスポーツであったラグビーを人口の大半を占める黒人にも応援させて、黒人と白人の融和の象徴としてラグビーチームのワールドカップでの優勝を目指すという作戦もどれも、政治的判断によるということだ。映画でも語られていたが、アパルトヘイトを止めても、経済的実権は、南アの白人アフリカーナが握っていて彼らの黒人への恐怖心・反感を除去しないと南アの経済は改善されず、結果貧しい黒人層の窮乏は解消しない。そのためにも黒人と白人は融和せねばならないということだ。すると、彼がスプリングボクスのキャプテン・ピナールにインビクタスの詩を渡す感動的なシーンも、黒人と白人の融和そしてその先にある経済問題解決の為の手段というように見えてしまう。つまり、すべてがマンデラの真意としてでなく、極めて政治的・功利的判断からというようにも取れるのだ。
 そのためには、もうすこしマンデラ自身がいかにして自分を20年以上牢獄に入れておいた白人たちを許すに至ったのか、つまり彼自身が融和を説くことができるようになるまでの葛藤をもう少し描いてあれば、印象は違ったものになったと思う。ないものねだりだが。
 だから、『父親たちの星条旗』で硫黄島に上陸した米兵に黒人がいないとイーストウッドをスパイク・リーが批判し、スパイク・リーとイーストウッドの間で一悶着あったが、その時の思いが、イーストウッドをしてマンデラの映画を撮らせるようになったのではないか?なんてゲスの勘ぐりも頭をもたげたりもした。

prof1961