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とあるローカル線の電車の中で人前も構わず号泣するおじさんと偶然、乗り合わせた乗客たちの泣きたい時をテーマにしたエピソードを綴ったオムニバスドラマ。
間もなく駅名が変ると言う泣き薬師駅。ロケ地は小湊鉄道の上総鶴舞駅、この景観が実に美しい。反面、人間ドラマの描き方がガサツなのでアンバランス感を禁じ得ない。
駅が出てきたからポッポ屋で泣かせるのかと思ったら、くすぐりでした。ドジな新米駅員で笑いに寄せている。「泣きたいときのクスリ」とは泣き薬なのか泣き止めなのか、薬を使うなんてうつ病治療かと思ったらポスターにクスリと笑おうとありました、泣きたいときは思い切り泣けばいいと言う落ちは納得です。
泣きばかりでは単調と笑いも交えるのは人情劇の定石ですが演出が下手すぎますね。
駅で待つ子犬が出てきたからハチ公もどきかと案じたし、後で亡霊と分かったが夜中に少女と徘徊は犯罪臭。そもそもエピソードの時間軸が合っていないので混乱する。
駅員や誇張したウェイトレスのドジキャラ、ハイテンションすぎる駅長とかキャラ設定が雑過ぎよう。子犬が毎回ドアをすり抜けるのに気付かない演出は不自然だが、ポン太は下手な俳優より名演技、元来人懐っこい性格なので唸らせる為、嫌いなパグ犬を近づけたらしい。
原案が大正製薬の冠番組のラジオドラマなので劇中でもCMやスタッフエピソードをこじ入れている。テレビ普及以前にはラジオドラマは大人気、1938年のオーソン・ウェルズの火星人襲来は伝説だし、三谷さんの「ラジオの時間」も面白かった。電車ものでは「阪急電車」のエピソードの方が駅と人間ドラマが馴染んでいた印象、あまり泣き笑い演技に執着しない方がナチュラル感が出たでしょう。
今となってはラジオドラマの映画化は無いでしょう、斜陽のローカル鉄道やラジオ離れが重なって、時の流れをしみじみ感じます。