劇場公開日 2009年4月11日

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ある公爵夫人の生涯 : 特集

2009年3月30日更新

キーラ・ナイトレイ主演で、今年の第81回アカデミー賞では衣装デザイン賞を受賞した「ある公爵夫人の生涯」が4月11日より公開される。一見すると華やかなコスチューム劇と思われがちだが、その内容は実に濃密。スキャンダラスな実話が基になっている上に、主人公ジョージアナ・スペンサーは、97年に非業の死を遂げたあのダイアナ妃の祖先にあたる女性でもあるのだ。今回は、そんな本作の濃厚な内容の秘密に迫る。(文・構成:平田裕介)

「ある公爵夫人の生涯」の濃密なドラマの秘密

波乱の人生を送ったジョージアナ・スペンサーをキーラ・ナイトレイが熱演した
波乱の人生を送ったジョージアナ・スペンサーをキーラ・ナイトレイが熱演した

■閉鎖的な貴族社会での、ドロドロな人間関係

若く野心的な青年政治家との許されぬ恋
若く野心的な青年政治家との許されぬ恋

観終わってスッキリできる映画もいいけど、そういう作品を見続けているとキワドくてドロッとしたものも観たくなる! そんな“濃ゆ~い口直し”を求めている向きに、この「ある公爵夫人の生涯」を勧めたい。

18世紀後半のイギリス。貴族の家の娘として生まれたジョージアナ・スペンサー(キーラ・ナイトレイ)は、英貴族社会のなかでも最も裕福とされるデボンシャー公爵(レイフ・ファインズ)の妻に選ばれる。幸せで愛に包まれた生活を期待していた彼女だったが、デボンシャー公爵は後継者となる男児を生むことだけをジョージアに望み、他の女性との浮気や愛犬たちの世話に執心するような夫だった。妻として夫から愛情を注いでもらえないことに虚しさを感じた彼女は、政治家を目指す野心あふれる青年チャールズ・グレイ(ドミニク・クーパー)との許されぬ恋に落ちてしまう……。

親友でもあり夫の愛人でもある女性との三角関係も…
親友でもあり夫の愛人でもある女性との三角関係も…

華やかなようで、女性にとっては極めて閉鎖的であったイギリスの貴族社会が舞台。そして次々と登場するのは、自分に無関心な夫、親友だった女性と夫との不倫、その関係を延長させた彼女との屈辱的な共同生活と、ドロドロとしたエピソードばかり。そんな状況下だからこそ、自身も禁断の恋へとひた走ってしまうジョージアナ。その展開は、小説家と官僚とその妻が織りなす三角関係の行方を追った「ことの終わり」、決して一緒になれないことを悟っている主婦とカメラマンが束の間ながらも永遠の愛を誓う「マディソン郡の橋」、ピアノの練習を機に夫以外の男に思わぬ感情を寄せてしまう女性の姿を映した「ピアノ・レッスン」といった、許されぬ恋を描いた数々の名作と並ぶほどにドラマティックといえる。

さらに、貴族としての体面などを気にせず、自身が信じた“道=恋”に突き進もうとするヒロインのジョージアにも注目。その姿は、はからずも外様大名の分家の娘から13代将軍・徳川家定の御台所に迎えられ、さまざまな軋轢や葛藤に徳面しながらも自分の生き方を貫いた「篤姫」にも通じていて、深い興味と共感を覚えるはずだ。

■主人公はダイアナ妃と縁続きで、不思議な符号も多数

ダイアナ妃との多数の共通点に驚き
ダイアナ妃との多数の共通点に驚き

また、本作のもうひとつの魅力といえるのが、当時のイギリスを賑わせたスキャンダラスな実話を基に作られているということ。しかも、ジョージアナは元英国王太子妃であった故ダイアナと縁続きの祖先にあたり、その境遇と生き方が非常に似通っているのだ。

17歳という若さでの結婚、社交界の花としての活躍、英政治の近代化を担ったホイッグ党への尽力をはじめとする政界での台頭、夫の浮気とそれに端を発した自身の不倫。そんなジョージア同様に、ダイアナも20歳でチャールズ皇太子と結婚、その洗練されたファッションで世界中の注目を浴び、対人地雷廃止やエイズ啓発といった運動に邁進、そして結婚前から続いていた夫と貴族女性カミラとの関係に悩まされた果ての不倫と、その奇妙にして劇的な符合が観る者と物語を盛り上げる。

不倫に三角関係といった男女の波乱万丈な愛を描いた“粘度が高め”の内容でありながら、その根底で情熱的で凛とした一人の女性をしっかりと描いた見応えのある作品である。

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