劇場公開日 2009年12月12日

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パブリック・エネミーズ : インタビュー

2009年12月4日更新

ダークナイト」「ターミネーター4」、そしてこの「パブリック・エネミーズ」と、アクション大作への出演が続くクリスチャン・ベール。本作では、主人公ジョン・デリンジャーを追いつめる凄腕捜査官メルビン・パービスに扮した彼に、役作りのリサーチや、ディテールにこだわるマイケル・マンの演出について振り返ってもらった。(取材・文:佐藤久理子

クリスチャン・ベール インタビュー
「火薬の味が舌でも感じられるぐらい射撃の練習をしたんだ(笑)」

凄腕FBIエージェント、メルビン・パービスは、じわじわとデリンジャーを追いつめていく
凄腕FBIエージェント、メルビン・パービスは、じわじわとデリンジャーを追いつめていく

――メルビン・パービスがFBIのクラーク・ゲーブルと呼ばれていたのは本当ですか?

「うん、まさにそういう評判だった。彼は他にもいろいろニックネームがあったけれど、当時メディアが好んで使っていたのがそれだ。FBIエージェントとしては、彼は特別なタイプだったからね。いつもばりっとした身なりをして、洗練された車に乗って、靴はぴかぴかに磨いていた。だからメディアは彼を好んで取り上げたし、彼のボスで後のFBI長官となるJ・エドガー・フーバーと比べて、彼の方がよけい注目を浴びることになった。それが結局、後にフーバーの嫉妬を買うことになってしまった」

“FBIのクラーク・ゲーブル”と呼ばれていた
“FBIのクラーク・ゲーブル”と呼ばれていた

――あなたは綿密なリサーチをする俳優として有名ですが、今回はどんな準備を?

「当時の新聞報道とか、フッテージ映像をかき集めたよ。もちろんパービスの友人や家族にも会って話を聞いた。特に彼の息子さんからは多くの貴重な情報をもらうことができた。あとはパービスが当時使っていたタイプのライフルから拳銃まで使いこなせるように、射撃の練習をたくさんした。1日何千発と打った後には、火薬の味が舌でも感じられるぐらいになっていたね(笑)」

――マイケル・マン監督は、撮影前にあなたとジョニー・デップを会わせる機会をもうけなかったそうですが、それは演出効果を考えた監督の狙いだったのでしょうか。

「その通り。僕らは撮影現場で直前に初めて顔を合わせたんだ。だから現場で言葉は交わしたけれど、演技プランをジョニーと話し合ったりすることはまったくなかった。マリオン・コティヤールとも同じ。実際彼女とは1シーンしか共演していない。でもそういうサプライズをキープするやり方は、刺激的で楽しめたよ」

「ヒート」のパチーノとデ・ニーロ同様、 本作のデップとベールも面会を極力避けて撮影された
「ヒート」のパチーノとデ・ニーロ同様、 本作のデップとベールも面会を極力避けて撮影された

――パービスがデリンジャーと対決するシーンは、「ヒート」のロバート・デ・ニーロアル・パチーノを彷彿させるものがありました。

「僕はそうは思わなかったな。というのも『ヒート』は完全に両巨頭の物語で、映画のなかで2人の対決は避けられないものだ。映画の文脈の外においても、デ・ニーロとパチーノという伝説的な2大俳優の対立がとても意味を持っていた。でも『パブリック・エネミーズ』は、僕からするとあくまでジョン・デリンジャーの物語だ。たとえパービスが1本の映画になるぐらい興味深い人物でも、この映画ではデリンジャーを逮捕する立場として関わってくる。だから『ヒート』と同一の対立ではないと思う。それに僕自身、頭のなかからよけいな影響を取り払いたかったから、そういうことはなるべく考えないようにした」

――捜査局から“民衆の敵”と指名されながら、大衆からはヒーローのように思われていたデリンジャーを殺した後、パービスは退職し、最後は56歳という若さで不可解な死を遂げていますね。FBIは自殺と断定しましたが、あなたはそれを信じますか?

「彼の死の理由は、ついにはっきりと解明されることがなかった。当時はいろいろな見方があったが、どれも証明できるまでに至らなかったんだよ。でも僕が息子さんに会って話を聞いたときには、息子さんは他殺とは思っていなかった。本当の理由は永遠にわからないままなんだ」

インタビュー3 ~巨匠マイケル・マンが「パブリック・エネミーズ」を撮った理由とは?
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