劇場公開日 2010年4月23日

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ウルフマン : インタビュー

2010年4月20日更新

19世紀末ビクトリア朝ロンドンを舞台に、野生の本能をむき出しに殺戮を繰り返す怪物・狼男の悲しい運命を描く、ジョー・ジョンストン監督のサスペンスホラー「ウルフマン」。同作で主人公の舞台俳優ローレンス・タルボットを演じたオスカー俳優ベニチオ・デル・トロが、PRのために来日し、インタビューに応じてくれた。(取材・文:サトウムツオ)

ベニチオ・デル・トロ インタビュー
「“ニクソン対チェ”の演技対決は楽しめるんじゃないかな」

来日時には新宿ゴールデン街にも繰り出したというベニチオ・デル・トロ
来日時には新宿ゴールデン街にも繰り出したというベニチオ・デル・トロ

今回、プロデューサーも務めた彼にとって、「映画のタイトルと主演俳優を記憶した初めての映画だった」という、ロン・チェイニー・Jr.主演の1941年のユニバーサル映画のホラー「狼男」をリメイクすることは少年時代からの夢だったそうだ。デル・トロはひょんなことから、その夢を実現させることになったと振り返る。

「伝説的プロデューサーのリック・ヨーン(『ギャング・オブ・ニューヨーク』『アビエイター』)がぼくの家に遊びに来たとき、家に大事に飾ってあったオリジナル版『狼男』のポスターに目を止めた。それは70年代にも映画マニアの間でも話題になったポスターで、狼男に変身したロン・チェイニー・Jr.の顔がアップになったものだった。リックとぼくが顔を見合わせると、2人ともヒゲづらだった(笑)。その瞬間、リックが“『狼男』のリメイク企画をユニバーサルに持って行ったらどうだろう?”と思いついたのがはじまりだった」

“ニクソン対チェ”のようだったと 振り返る名優ホプキンスとの対決
“ニクソン対チェ”のようだったと 振り返る名優ホプキンスとの対決

そして出来上がった映画の魅力を、プロデューサーらしく説明する。

「6歳ごろからあこがれていた伝説的キャラクターだけに個人的なノスタルジーもある。ストーリー的には、ぼくが演じた主人公ローレンスが逃れられない運命に導かれるのも魅力だ。兄の婚約者であるグエンとのロマンスもとても切ないし」

主人公の父親ローレンス卿役は「羊たちの沈黙」「ニクソン」の名優アンソニー・ホプキンス、ロマンスの相手グエン役は「プラダを着た悪魔」のエミリー・ブラント。この新旧2人の英国人俳優との共演も話題だ。

「アンソニーは本当に名優で、撮影では全シーンを2テイク以内でピシッと決めてくれたね。この“ニクソン対チェ”の演技対決は楽しめるんじゃないかな(笑)。楽屋でも彼はロッド・スタイガーマーロン・ブランドの物まねをして笑わせてくれた。一方のエミリーは、ローレンスとグエンのロマンスは“美女と野獣”なのに、難役を魅力的に演じてくれた」

特殊メイク界の大御所リック・ベイカーが昨今のパフォーマンス・キャプチャー全盛の時代に「待った!」をかけるかのように、ウルフマンの手のこんだ特殊メイクを手がける。

来日記者会見でのベニチオ
来日記者会見でのベニチオ

「変身する場面や狼のように走る場面だけはCGIで撮ったけど、手作り感のある特殊メイクを主にして、徹底的にオリジナル版『狼男』に敬意を払ったつもりだ。リック・ベイカーの仕事は、メイクに4時間かかることを抜きにすればすばらしかった。顔のパーツを少しずつ着けていくわけなんだけど、最初にウルフマンの完成した顔を鏡で見たとき、うちで飼っているセントバーナード犬に似ているな、と思ったよ(笑)。カッコよかった。でも、メイクを取るのに2時間もかかるんだ。スタッフ&キャスト全員が家に帰って、メイク室にはぼくひとり。孤独でさびしくなって、そんなときばかりは、ベイカーのことをウルフマンのように“殺そう”と思ったよ(笑)」

音楽ファンである彼は、作品ごとに違った音楽を聴いて役柄をつくり上げていく俳優でもある。米テネシー州メンフィスで撮影した「21グラム」ではご当地のエルビス・プレスリーを、「チェ」のキューバ革命を描く第1部ではザ・クラッシュの「サンディニスタ」やセルヒオ・ロドリゲスを聴き、ボリビアの山中が舞台の第2部ではあえて無音(音楽なし)で通した。さて、今回は?

「特殊メイクをするのに4時間もかかったので、好きな音楽を流しっぱなしだった。よく聴いたのは、ニック・ケイブの最新アルバムやボン・アイバーかな。またイギリスで撮影したので、レディオヘッド、レインボー、ザ・フーの『四重人格』なんかを聴いて気分を盛り上げたよ」

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