幼い頃からマドンナに憧れて、なんと夢は性転換手術して彼女のような女性になることを目指した韓国の男子高校生オ・ドングの物語。
手術代を稼ぐのに、韓国相撲のシルムの大会で優勝して賞金を宛てようとする奇想天外なお話です。何はともあれ、性同一性障害の男の子が得意のダンスでKABA.ちゃんのように名前を売ろうとせずに、よりにもよってシルムの力士になってしまうところがいかにもミスマッチで、笑わせてくれます。
ぽっちゃり太った体型のままオ・ドングが女装で登場したときは吹き出しました。
他にも全体的に、コミカルで笑えるシーンが多いのですが、韓国映画としては笑いについても、泣きのシーンでもたたみ掛けるところが弱かったと思います。ストーリー展開にスピード感が弱かったのかも知れません。シルム大会の結末のオチが陳腐で、もう少し盛り上げて欲しかったと思います。
まぁこれが1本目の監督初作品ですから、仕方ないのかも知れません。でもオ・ドングのダンスぶりや26キロも増量したシルムでの本格的な投げっぷりなど主演を初め出演者が頑張って演じているので、それなりに見応えはありました。
但し、本作はドタバタの喜劇と違って、少し深い父子の交情にまでテーマを掘り下げている点はいいと思います。
欲張ってシルムのスポ根やら、性同一性障害ゆえの珍事やらテーマが欲張りすぎています。オ・ドングと父親の和解するところをもっと韓流にドラマアップしてもよかったのではないでしょうか。
父親の話のところだけネタバレしておきます。
ボクシング選手としてケガで不本意に引退してから、酒を浴びる日々の父親。そのトラウマから息子にはスポーツを禁止させてしまう身勝手さ。何か物を言うたびパンチで返されてしまうのです。終盤のオ・ドングvs父親のシルム対ボクシングの対決シーンはそれなりに迫力がありました。
それに引き替え、離婚して別居する母親の方は、息子の全てを黙って受け止めている優しさが印象的でした。
そんな息子から、女としてカミングアウトされて戸惑う父親の狼狽ぶりが可笑しかったですね。そんなときって父親は意外と頼りないのですね。
恥も外聞もかなぐり捨てて、別れた妻の元に「どうすればいい俺?」って訪ねていくのです。このときの母親のリアクションに感動しました。詳しくは画面で。
ところで本作では、チョナンカンがカメオ出演でなく、日本語教師役として韓国映画初出演していました。
その教師に憧れるオ・ドングが妄想するとき、チョナンカン先生の奇妙なラブポーズ・リアクション。これは、テレビの『SMAP×SMAP』でも見られないユニークさなんです。ファンなら必見ですよ。
チョナンカンの韓国語は流暢で、まるで現地の俳優さんのようでした。男の子なのにしつこく求愛してくるオ・ドングに切れたときは、なぜか啖呵が日本語に変わります。
日本語を勉強しているオ・ドングも日本語で切り返しているところが可笑しかったです。
ラストに突然出てくる美人歌手。何となくオ・ドングに似ているけど、彼はやっぱり性転換に成功したのでしょうかねぇ。~見てきた人に質問です。