宮廷の侍女たちの着替えのシーンで目のやり場に困ってしまい、彫金師たちの扱う金の多さに目がくらみ、王妃であるコン・リーの立眩みシーンでメロメロになってしまいました。宮廷内はとにかくキンキラキン。『HERO』や『LOVERS』で独特の色彩表現で観客を圧倒したチャン・イーモウだけに、今度はどんな色のイメージをもってくるのかと期待して臨んだのです・・・終わってみれば王位継承問題やドロドロの愛憎劇にまみれた王族の虚しさ。豪華絢爛であっても蓋を開けてみれば・・・といった印象となりました。
その金ピカな衣装やセットによって、最初のうちはチャン・イーモウのセンスを疑ったりしてみたのですが、ラストの荘大な内輪もめ金対銀のシーンに打ちのめされました。その前にも黒忍者対赤忍者というアクションが楽しめたし、戦いが終わった直後に何事もなかったかのように“重陽節”の式典の準備をやり直すシーンが圧巻。役職によって統一された色の衣装が整列すると北京オリンピックの開会式も兼ねているんじゃないかと感じてしまうところだけど、チベット問題だけはきちんと片づけてもらいたいものです・・・
鬚によって貫禄ある王を演じたチョウ・ユンファも存在感たっぷり。王妃の不義(先妻の息子と不倫)も知っていたし、細かな罪を赦してしまう寛大さも見せるものの、その裏では王妃に微量のトリカブトを仕込んだ薬を飲ませ続ける残酷さも秘めている。この王の相反する言動が恐ろしく、また母への愛情によって次男坊(ジェイ・チョウ)の心が謀反へと傾く様子も見どころだ。それにしてもラストのチョウ・ユンファは後継者も失って、“王族たちの挽歌”といった雰囲気の表情になるところが何とも言えないのです。
絢爛豪華な歴史スペクタクルといえども、派手な部分ばかりではなく、王族たちの陰謀や愛憎劇による心理描写が絶妙でした。サブストーリー的な長男(リィウ・イエ)と蒋嬋(リー・マン)の近親相姦エピソードも面白かったし、最後に自己主張する三男坊も面白い。やっぱりショックだったのは次男坊が王に言われた最後の一言だったけど・・・まじで泣けてきた・・・
【2008年4月映画館にて】