ラブリーボーン : 映画評論・批評
2010年1月26日更新
2010年1月29日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー
シアーシャ・ローナンの視線の先がスペクタクルだ!
冬のトウモロコシ畑で殺された14歳の少女が語り手となって、天国から残された家族たちや真犯人の行く末を見守る。原題は「愛すべき骨たち」。猟奇殺人の犠牲者たちへの鎮魂歌的なストーリーなのだが、「羊たちの沈黙」や「セブン」といったダークスリラーとは一線を画したダークファンタジーであり、ピーター・ジャクソン作品らしく、「明るさ」に満ちていて不思議な後味の良さがある。
女子高生たちが加害者となった「乙女の祈り」とは立場的には真逆なストーリーだが、ジャクソン監督は映画のハイライトともいえる天国の描写を、ターセム監督作品のような壮大なイマジネーションとして見せきっている。ともすれば感傷的になりがちな物語を、すんでのところで避けているのがいい。
主人公の少女をシアーシャ・ローナンが好演している。彼女が碧い瞳で「見ることすべて」が映画最大のスペクタクルになっている。彼女は「もっと家族に会いたい、もっと恋がしたい」と語るわけだ。彼女の願いや祈りが感動への引き金になるのだが、共感できるか否かは彼女の視線の先の出来事が理解できるか否かにかかっている。評価が分かれる映画だが、この壮大なファンタジー映画は、名子役ローナンの純粋かつ無垢な演技により、いっそうの輝きを放っているのは間違いない。
(サトウムツオ)