ワールド・オブ・ライズ : インタビュー
9・11以降の戦火が絶えない中近東を舞台に、国家の威信を背負ったタフな男たちによる命がけの騙し合いを描いたスパイ・スリラー「ワールド・オブ・ライズ」。ジェームズ・ボンド(「007」)、ジェイソン・ボーン(「ボーン・アイデンティティー」)、イーサン・ハント(「ミッション:インポッシブル」)らの世界とは異なる戦場で、ギリギリの諜報活動を行う男たちを描いた本作について、主演のレオナルド・ディカプリオ、ラッセル・クロウ、そしてリドリー・スコット監督に話を聞いた。(取材・文:森山京子)
レオナルド・ディカプリオ インタビュー
「ストーリーを語るだけで、観客にいろんなことを考えさせる内容だと思うよ」
――リドリー・スコットと初めて一緒にやってどうでしたか。彼はビジュアリストとして有名ですが、どんな時にそれを感じましたか?
「リドリーは最高の監督だよ。同時に7つの違ったアングルに集中することが出来るし、20もの違った部門を同時に統括することも出来る。あんな風に統率出来る人は今まで見たことがない。コンピューターがハイレベルで作動していて、ついて行くのが大変って感じだ。それにすごく自分の直感に頼るんだ。そして常に、自分がどう感じるかをチェックしている。そしてこれは違うと感じたら、直ちにすべてが変わる。セット自体を1ブロック動かしたり、ヘリコプターを飛ばしたり。どんな変更があってもスタッフはすぐにそれに対応出来るように準備していなくちゃいけないんだ。撮影のペースもタフ。あんなに短時間でシーンを撮る監督はいないよね。『早く撮ろう!見たらきっと気に入るよ、気に入らなかったら撮り直せばいい!』って調子」
――この作品に出演を決めたポイントは?
「脚本が完全に仕上がっていて、しかも素晴らしく出来が良かった。それにリドリーとラッセルが一緒。こんな素晴らしいチャンスを眼の前に差し出されたら、掴まないわけにいかないよ。僕が気に入っているのはCIAが展開している最新の作戦を、すごく正確に描写しているところ。僕たちにはCIAがやっていることなんてわからないけど、原作者のイグナシアスには長い時間をかけて築いてきた人間関係があるからね。そこから拾い上げた素材を、CIAの最新のオペレーションに基づいて書き上げている。ただストーリーを語るだけで、観客にいろんなことを考えさせる内容だと思うよ」
――現地の人間関係のモラルに影響されてしまうフェリスをどう思いますか。
「だからこそ、僕はフェリスに感情移入出来るんだ。多分観客も同じだと思う。彼は裏切りの多い熾烈なスパイの世界で、高いモラルを持って仕事をしようとしている。言ったことを守ろうとする。だけどその信念にもかかわらず、常に約束を破らなくちゃいけないような状況に追い込まれてしまうからジレンマがある。映画を見れば誰だって、自分がそういう状況に置かれたらどうするだろうって考えちゃうよね。フェリスの立場に共感すると思う。そういう苦しい決断をいくつも体験して、最後に、自分は自分でしかないと気づくところも好きなんだ。個人として自分が出来ることをやるしかないということに行き着く。それがすごく興味深いと思うんだ」
――今回は爆破に遭ったり犬に噛まれたり、拷問まで受けて、痛いシーンの連続でしたね。
「眼の色を変えるためにコンタクトを入れていたから、砂埃が入って、それが結構きつかった。でも、ハードなシーンも仕事のうちだし、それでギャラを貰っているんだから文句なんて言わないよ。拷問のシーンは、あれが上手くいかなかったら映画全体がうまくいかなくなるってぐらい重要なシーンだから、リアリズムを出すために可能な限りの専門家を集めた。どう演じるか何週間も考えてすごいエネルギーを費やしたから、さすがにストレスが強かったんだね、撮り終わったら3日間病気になって寝込んでしまったよ」