劇場公開日 2008年3月15日

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ノーカントリー : インタビュー

2008年3月7日更新

最凶最悪の殺し屋に追われながら、テキサス中を駆けずり回り、本作で一躍有名スターの仲間入りを果たしたジョシュ・ブローリン。ちょっとした出来心と優しさから、殺し屋シガーに追われる羽目になったベトナム帰還兵モスの役柄や、コーエン兄弟との仕事について語ってもらった。(取材・文:森山京子)

ジョシュ・ブローリン インタビュー
「この映画は、自分自身の行動規範を持った男たちの物語なんだ」

父親は傑作SFスリラー「カプリコン・1」(77)で、荒野を駆けずり回ったジェームズ・ブローリン
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――モスという男をどう思いますか。

「すごく好きだね。信念があって真っ正直。妻を本当に愛しているし、どこか楽観的でロマンチストだしね」

実生活ではダイアン・レインの夫 多くの新作が待機中
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――もしあなただったら、あの金を持ち帰りますか。

「その質問って、ちょっと奇妙じゃない? そうだなぁ、ジョシュ・ブローリンとしてはしないと思うけど、モスが持ち帰ったのはおかしいと思わないよ。彼は2度もベトナム戦争に行って過酷な体験をしてきた男だ。まっとうじゃない金を偶然手に入れて持ち帰ったからって責めることはできないよ。それに彼には悪事を働くとか、かすめ取るとかいうような小賢しさや傲慢さはないよね」

――「ノーカントリー」では、西テキサスの荒野の光景が大きなウエイトを占めていると思いますが……。

「非常に大きなウエイトを占めていると思うよ。『ファーゴ』が典型だと思うけど、コーエン兄弟の映画はいつも風景がドラマの大きな要素になっている。風景というものがどれだけ人間に影響を与えるかという話は、撮影中も繰り返ししていた。あの風景の中で生まれ育ったことが、モスやベル保安官のキャラクターの一部なんだ。風景の一部としてあの土地にいることはすごく気持が良くて、トミー・リーも僕もそれを楽しんだ。もちろんハビエルは違うよ。彼はストレンジャーとして現れるんだから」

――犯罪映画という点で、あなたが主演した「プラネット・テラー in グラインドハウス」に通じるところがあると思いませんか。ホラーとコメデイが一体になっている所とか。

「この映画はコメデイというより不条理劇だと思う。設定はリアルだし、3人の男たちも輪郭がはっきりしているにもかかわらず、現実ではないような感覚がつきまとう。神話的な物語とも言えるよね。そこが面白いんだ」

三者三様の哲学、行動規範がぶつかり合う
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――コーエン兄弟は、ハメットの「血の収穫」のことも話していますが、彼らはそういうアメリカ的なハードボイルドを踏まえて映画を作っていると思いませんか?

「誰に押しつけられたのでもない、自分自身の行動規範を持った男たちの物語という意味では確かにそうだね。水を持って現場に戻るなんてモスはアホだって意見もある。モス自身もそれが愚かなことだって分かっているけど、そうすることが彼の規範なんだよ」

――コーエン兄弟の現場ってどんな雰囲気なんですか?

「俳優のエゴをくすぐるような空気はかけらもない。今の演技グレートだ、素晴らしいなんておべんちゃらは一切ないんだ。だからOKと言われても本当に大丈夫なのかと心配になったりもしてね。ところが途中でウッディ・ハレルソンが登場したら、彼の芝居が終わったとたん、兄弟が口を揃えてファンタスティック!なんて言うんだぜ(爆笑)。おいおいって感じだったよ(笑)」

>>コーエン兄弟インタビュー

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