ブレードランナー ファイナル・カット : インタビュー
リドリー・スコット監督&主要キャスト インタビュー
ルトガー・ハウアー(レプリカント、ロイ・バッティ役) インタビュー
「この映画のスケールとユニークさは説明するのも不可能だ」
──25年後、これほどまで人々の心に残る作品になると予想していましたか?
「25年間かけて、徐々に人々の心に残るようになったんだ。ビデオやDVDなんてつまらんもので“発見”するようになった。だが、『ブレードランナー』はそんな見方をする映画じゃない。脳ミソのでかいやつなら、この映画の世界観に入り込んで、理解して楽しむことも出来るだろう。でも、この映画のスケールとユニークさは説明するのも不可能だ。こんな内容と水準、ビジョンを持った映画は2度と現れることはないだろう。この映画から生まれるエネルギーの大きさには驚かされるね。でも今、僕らは、大きなスクリーンで見てもらうチャンスを与えたわけだよ。これほど観客に対して“攻撃的”な映画はない。本当に楽しませてくれるんだ。“回路”がたくさんあってまるでテレビゲームみたいだ。そして、物語を自分で自由に解釈できる。
結局、ストーリーを完成させるのは観客なんだ。僕らは与えるだけで、描けるのはキャラクターのスケッチだ。時々起こるストーリー展開やビジュアルやアクションは、『おいで、一緒に行こう』と誘惑する仕掛けなんだよ。プロット、ストーリー、キャラクターは一つの頭脳から生まれたものだ。僕らは監督というビジョンを持つ頭脳とともに作っていくわけさ。これは観客とのゲームだよ。『俺のやっていることを信じないだろ』って問いかけると、観客は『信じます』ってね。ホントにすごいよ。悪役を演じて観客とゲームをするのはとても簡単なんだ。観客は怖がらせてほしがっているからね」
──ハトを飛ばせたのはあなたのアイデアですね? ジョン・ウーも白いハトを飛ばしますが、あなたのほうが先ですね。
「本当? それはすごい賞賛だな。映画の中で凄惨な死が出てくるのは構わない。でも終わりのほうでは、あんな風に(手を打ち鳴らす)死んでいくのもいいと思ったんだ。まるで電池が切れたようにね。凄惨なところはどこもない。だから白いハトのアイデアはいいなと思ったんだよ。ハトを放した時、魂が身体から去る瞬間が分かるから。ところが、(実際の撮影では)ハトは飛んでいかずにじっとしていたんだ。まるでピーター・セラーズ(のコメディ)みたいだったよ。『飛べよ。鳥なら鳥らしく飛んで行け』って思ったね。『羽が濡れたから飛べないよ』ってわけさ。とにかく、それがハトの話さ。今でもいいシーンだと思うね」
ダリル・ハンナ(レプリカント、プリス役) インタビュー
「今でもあの特別な体験は鮮明な記憶として残っている」
──この映画が実質的デビュー作ですね。スクリーンテストはどうでしたか?
「スクリーンテストには3日間かかったの。雨、スモーク、素晴らしいセット、衣装、ヘアメイク。今、私が関わっているどの作品よりも手が込んでいたわ。単なるスクリーンテストとはいえ、今では考えられないほどお金もかかっていた。さまざまなことを準備するために3日間与えられ、衣装を付けて1日、ヘアメイクして1日と、本格的なものだった。しかもスクリーンテストは撮影だけで12時間以上に及んだの。ランチを取るため、ようやく楽屋から出た時、同じ役のテストをする別の女の子たちに会ったの。他の皆は美しく個性的に見えた。自分はひどい外見で、涙があふれたわ。幸運だったのは、テスト本番の順番が1番だったこと。ファイトシーンは体育館で撮影されたの。最初、脚本では、プリスがリングから操り人形のように吊られているところへデッカードがやってくる、プリスが蹴りを入れる、そしてファイトが始まり……荒々しいファイトになるという予定だったの。体育館を使っていたから『器械体操ならできる』と監督に言って、バック転を2回ほどやって見せた。
まさかプリス役にオファーされるとは思わなかった。今でもあの特別な体験は鮮明な記憶として残っている。また、この役を得たおかげで女優を続けられた。他の役に出ても『プリス役のキミか』と覚えられていたしね。リドリーはどんなフレームでも手描きすることが出来て、イメージを視覚的に伝えることができるの。最初の監督が彼で、ラッキーだったわ」
──ファイトシーンで、あなたがハリソン・フォードの鼻血を出させたことが有名ですね。
「私は彼の鼻に指を突っ込んで持ち上げ、ひき下ろすようにと言われたの。フリをすればいいように試みたんだけれど、『フリでは無理だ』と言われたから、そうするしかなかったのよ(笑)」
エドワード・ジェームズ・オルモス(デッカードの上司、ガフ役) インタビュー
「『ブレードランナー』が新しい世代に向けて再編集されることはとても意義がある」
──この映画が再編集される意義はどんなところにありますか?
「もしミケンランジェロの作品を見て、ピカソやマチスの作品を見たら、すごいアーティストだと驚くだろ。『ブレードランナー』が新しい世代に向けて再編集されることはとても意義がある。第一、リドリー(監督)はワークプリント版のネガを見直し、ベストなセリフや音楽を厳選するのに2年も費やした。最新デジタル処理をほどこし、根本的に質を向上させた。
また、映画の舞台となった2019年が近づいてきたが、現在まだ空を飛べるクルマはない。しかし、原爆や本作の遺伝子工学のように、人類を絶滅させるようなテクノロジーがある。この映画はダークなイメージで、とても怖い未来世界にもなりうると警鐘を鳴らしている」
──デッカードに折り紙を置いていくキーマンで、嫉妬あるいは敵がい心を抱く役ですね。演じたハリソン・フォードの演技をどう見ていますか?
「折り紙か? 日本とは縁があって(本作以前に日本映画『白昼の死角』『復活の日』などに出演している)、日本語も汚い言葉ならしゃべれる(笑)。あのアイデアは私がリドリーにアドバイスしたものなんだ。
ハリソンは、当時のハン・ソロやインディ・ジョーンズ博士より、いい演技をしていると思う。だが、デッカードがレプリカントなのは“ユニコーンの夢”でも明らかなのに、彼が『ディレクターズカット』版でリドリーとデッカードの正体について揉めたのはとても残念なことだ」