メトロで恋して

劇場公開日:

解説

運命的な恋に落ちた男女が残酷な試練に直面する様を描いたラヴ・ストーリー。監督・製作・脚本はこれが長編デビューとなるアルノー・ヴィアール。音楽はフレンチ・ポップス界の人気プロデューサー、バンジャマン・ビオレー。出演は「ブルー・レクイエム」のジュリアン・ボワスリエ、「NOVO/ノボ」のジュリー・ガイエ、「メルシィ!人生」のミシェル・オーモン、「ニノの空」のサッシャ・ブルドほか。

2004年製作/90分/フランス
原題または英題:Clara et Moi
配給:エレファント・ピクチャー
劇場公開日:2005年8月27日

ストーリー

パリ、8月。売れない32歳の俳優アントワーヌ(ジュリアン・ボワスリエ)と、TGVのウェイトレスとして働く28歳の作家の卵クララ(ジュリー・ガイエ)は、地下鉄で偶然に出会って惹かれ合う。アントワーヌは33歳の誕生日パーティーの最中、クララに電話をかけ、デートの約束を取りつける。夜のセーヌ河で初めてキスをした2人は、その晩から愛し合い、交際は順調に進んでいった。しかし結婚に向け、健康診断を受けた時、クララがHIV陽性であることが発覚。アントワーヌはその事実が受け入れられず、2人の間には途端に距離ができる。親友のBT(アントワーヌ・デュレリ)や、姉のイザベル(パスカル・アルビロ)に相談するアントワーヌ。やがて彼は6年ぶりに、名医である父(ミシェル・オーモン)を訪ねる。打ち解けて話すうちに、アントワーヌはクララの苦しみを受け入れたいと考えるようになった。そしてアルゼンチンに行くと決めたクララの送別パーティーの最中、アントワーヌは彼女を訪ね、一緒に暮らしたいと申し出る。とまどうクララは、パーティーの部屋へと立ち去っていくが、窓からアントワーヌを見て微笑むのだった。

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映画レビュー

5.0息子の人生と、父の人生

2024年4月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

後半、
33歳の息子が
長いブランクを経て、自分の弱さと躓きを父親に打ち明けに行くのです。

リルケ著「マルテの手記」が、この息子のために、老父から手ずから渡される大切な小道具になります。
恋人を捨て、恋人から見放されて、その人生の痛みの一節 ヒトフシ を背負うアントワーヌ。
これから独りで歩んでゆくその息子のためにと、父が手渡すリルケ。
息子の窮地を抱きとめるようでもあり、また、突き放すようでもあり、
人生の先輩である父親を乞うる息子のシーンが、白眉でした。

他者の台詞を、役者として口にし続ける息子にも、渾身からの、借り物ではない言葉を語る時が来たのでしょう。

メトロで始まった恋と破局については、
その「追憶」が、ただの感傷的な記憶からいつか昇華して、自分自身の肉体とひとつになるまでは黙しているようにと勧める、― リルケを与える父。
偉大な大人の姿がそこにありましたね。

短いラブストーリーなのですが、
さすがフランスものです。
「大人ならは、私たちも自己を探究して自立すべし」と、父の姿をまとった《文学》と《哲学》と《詩》が、
現代に生きる若者たちに語りかけるのです。

・・・・・・・・・・・・・

「マルテの手記」、
久しぶりに読みたくなり、古書店で新訳のものを購入。還暦を過ぎた自分に、新たにどう響いてくるかが楽しみです、
映画に登場する書物を求めて、読んでみるのが僕の常なのでね。
劇中、アルゼンチンに旅立つ病身のクララを演じるのはジュリー・ガイエでした。「ぼくの大切なともだち」以来の再会。
実力派です。

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きりん

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