若草物語(1933)

解説

「愛の鳴咽」「人生の高度計」のキャサリン・ヘップバーンが主演する映画で、ルイザ・オルコット作の名小説に基づいて「ゴルフ狂時代」のセラー・Y・メイソンとかつて監督だったヴィクター・ヒアマンが共同して脚色し、「愛の鳴咽」「晩餐八時」のジョージ・キューカーが監督にあたり、「猟奇島」のヘンリー・ジェラードが撮影した。助演者は「金髪乱れて」のジョーン・ベネット、「鏡の前の接吻」のポール・ルーカス、「立上がる米国」のエドナ・メイ・オリヴァー、「一日だけの淑女」のジーン・パーカー、「濡れた拳銃」のフランセス・ディー、「愛の鳴咽」のヘンリー・スティーブンソンその他スプリング・バイントン、ジョン・デイヴィス・ロッジ、メイベル・コルコード等である。

1933年製作/アメリカ
原題:Little Women

ストーリー

ジョーは男のように活発な、小説家忘願の娘で、シェークスピーアやゲーテに憧れていた。ジョーの姉メッグは優しい平凡な娘、妹のベスは内気な少女で音楽が好きでピアノが上手。末娘エミイはまだ学校に通っている我儘娘で絵を描くことが好きだった。時は千八百六十四年、南北戦争の最中で、父のマーチ氏は従軍牧師として戦地に在り、母のマーチ夫人は出征兵士の家族救済のために創立されたキリスト教伝導教会の支部委員として献身的に働いていた。四人の娘たちは父母が身を以て示す犠牲的精神の感化で病人や貧しい人たちに心からの同情を注ぐのだった。家は豊かではなかったが彼女たちは春の野の若草のように健やかに育ったのである。彼女たちの団欒の家に隣して町の富豪ローレンス老人の宏壮な低宅があり、老人の孫のローリーは欧州の遊学をしまえて帰ってきていて、ジョーと親友になり、マーチ一家とも親しくなった。メッグはローリーの家庭教師ブルックと愛し合う仲となった。戦地にある父が重病との電報が来て母は看護のためにワシントンの病院へ赴くこととなり、ローレンス老人はブルックを同行させてやる。ジョーは旅費を借りに伯母のもとへ行くが吝嗇な伯母が切符代だけしかよこさないので憤慨して、髪を切って売り25ドルを調達した。その夜姉妹四人は母の居ない家で眠ったが、ジョーは髪を切った淋しさに誰よりも涙が多かった。それから数週間の後ベスが急病になった。一家が世話していた貧しい家の乳児が猩紅熱で死し、看病していたベスが感染したのだった。なを感染のおそれあるエミイを伯母の家に預けてジョーとメッグは熱心に介抱したが、危篤となったので母を呼ばねばならなかった。しかし母が戻るころにはベスの病気は峠を越え、殆ど治ったころには父も快くなって久しぶりに帰宅した。その夏、メッグとブルックは父の司会で結婚式を挙げた。ジョーは四人の姉妹愛の純情が失われることを悲しんだ。ローリーはそれを慰めかつジョーに対して抱いていた愛を告白した。ジョーも彼を愛していたが、性格的に相いれないローリーと幸福な結婚の営み難いことをかしこくも洞察している彼女は彼の求婚を拒んだ。そして失った愛の痛手を癒すべく、またしばらく本物になりかけた創作に専念すべくジョーは故郷を離れてニューヨークのカーク夫人の下宿に宿った。ここで温厚なベア教授と親しくなり、彼女の作家としての態度を正しく指導してもらった。ある日エミイが伯母と一緒に訪ねてきた。伯母は欧州へ湯治旅行へ赴くのでエミイがお伴だった。エミイからローリーが祖父と欧州へ行ったことを聞き、ニューヨークでも彼女を訪ねてくれなかったことを知ったジョーは言い知れぬ淋しさを感じた。それから日を重ね月を経たある晩ジョーはベスが重態だとの報を得て急ぎ帰郷した。臆病なベスは別人のように迫る死を怖れず、ジョーと再会して満足の微笑を浮かべながら天国へ去った。エミイは欧州でベス死去の報知に悲しみ帰郷しようとしたが母を始め皆に止められて予定どうり滞在した。その間にエミイとローリーは愛し合うようになり、夫婦となって帰国した。それは大雨の降る日だった。偶然その日にベア教授が本になったジョーの創作をもって訪れた。ベア教授こそは彼女を最も良く理解し最も愛する男性だった。ジョーは喜んで彼の求婚に応じたのであった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第2回 ベネチア国際映画祭(1934年)

受賞

ゴールデン・メダル(最優秀女優賞) キャサリン・ヘプバーン
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映画レビュー

4.0100年近い時を経ても、文化・芸術の世界の進歩は…

2022年5月26日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

DVDレンタルして、
49年版、94年版、2019年版に続いて、
ついに33年版を鑑賞することが出来た。

DVDの冒頭には懐かしい淀川長治の
解説があって、
49年版のジューン・アリソンのジョーは
この作品のキャサリン・ヘプバーンに
負けていたことと、
私には活発に見えた
アリスンのジョーだったが、
ヘプバーンに比べるとまだおとなしかった
との評があった。

さて、全体の構成について、
49年のルロイ監督版は
このキューカー版に良く似ていて、
両作品共に、
ジョーが柵を乗り越える場面があったり、
エイミーのパリでのシーンに
伯母がエイミーの結婚相手に目論んでいた
富豪は登場しなかったり、
教授がジョーの製本を持ってきての
愛の成就のラストは同じだ。

そして、話の中身は4作品の中で
一番濃密なイメージだ。

だから、4作品それぞれ細かなエピソードや
感情の因果関係を入れ換える等、
各監督の工夫が見て取れる中で、
この作品が一番、各エピソードの因果関係や
登場人物の感情を丁寧に描いていたかも
知れない。

ところで、
ジョーと結婚する教授の人柄の描写は
この作品の彼が一番自然で人間らしく
好感が持てた。

100年近い長い時を経ても
それぞれ魅力的な各「若草物語」映画作品。
文明・技術の世界は進歩するのかも
知れないが、
文化・芸術の世界はそうでもないことを
知らしめてくれる作品だ。

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