ロミオとジュリエット(1954)

劇場公開日:

解説

今までにも数回映画化されたウィリアム・シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』のテクニカラー色彩映画化で、「ヘンリー五世(1945)」「ハムレット(1947)」のテクスト編集をしたアラン・デントの助言を得、イタリアのレナート・カステラーニ(「ささやかな希望」)が脚色・監督に当った。撮影監督は「第三の男」のロバート・クラスカー、音楽は「しのび逢い」のロマン・ヴラドである。出演者は「浮気は巴里で」のローレンス・ハーヴェイ、この作品のために発見された新人スーザン・シェントル、「黒水仙」のフローラ・ロブソン、「クオヴァディス」のノーマン・ウーランド、「バラントレイ卿」のマーヴィン・ジョンズ、「マレー・ゲリラ戦」のビル・トラヴァース、「ジュリアス・シーザー」のジョン・ギールグッドら。ヴェニス国際映画祭でグラン・プリを獲得した。

1954年製作/138分/イギリス
原題または英題:Romeo and Juliet
配給:BCFC=NCC
劇場公開日:1954年11月13日

ストーリー

むかし、イタリアはヴェロナの物語--。モンタギュー家とキャピュレット家はかねてから犬猿の間柄だった。ある夜、モンタギュー家の嗣子ロミオ(ローレンス・ハーヴェイ)は、従兄ベンヴォリオに誘われ、仮面に素姓をかくしてキャピュレット家の舞踏会に行った。ロミオははじめて会ったキャピレット家の息女ジュリエット(スーザン・シェントル)の美しさに烈しく心うたれた。宴はててから、ロミオはひそかに石垣を越えてキャピレット家の庭に忍んだ。見ればジュリエットも思いは同じ、ひとりバルコニーに立ってロミオの名を呟いているのだった。ロミオは意を決して声をかけ、上と下とで夜明けまで愛のことばを交わした。翌朝、二人はロレンス法師の庵で、神の御前に結婚を誓った。その昼下り、庵からの帰り途、ロミオはジュリエットの従兄ティボルトから喧嘩を売られたが、彼もジュリエットの身内と思って決闘を断った。事情を知らぬロミオの友マキューシオは憤慨してティボルトと剣を交えたがあえなく倒された。これを見て、流石のロミオも怒りに燃え、ティボルトを刺して仇を討った。両家の紛争調停にのり出したヴェロナ大公は、ロミオに対してマンチュアへ即刻追放の断を下した。その夜、悲嘆にくれるジュリエットをひそかに訪れたロミオは、悲しい別離を控えてきぬぎぬの一夜をすごした。一方何も知らぬキャピュレット公はジュリエットと名門の息パリスとの縁談をきめてしまった。困ったジュリエットはロレンス法師を訪れた。法師は、四十二時間だけ仮死する秘薬を与えて結婚式の前夜に飲むよう教え、ロミオに手紙を出して仮死のまま葬られるジュリエットを救出させる手筈をきめた。ジュリエットの仮死は、華やかなるべき結婚式を忽ち葬いの席に代えた。ジュリエットの死を聞いたロミオは、ロレンス法師の手紙がつく前に馬を駆ってヴェロナに戻り、墓所を守るパリスを倒してから、ジュリエットの傍で自らの胸を刺した。間もなく仮死からさめたジュリエットは、こと切れたロミオを傍らに見出し、彼の短剣でおのが命を断った。二人の悲痛な死によって両家の不和はようやく解かれた。

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映画レビュー

4.0古典悲劇の演劇映画の完成度の高さとその範疇

2020年12月10日
PCから投稿

シェークスピアの格調高き映画化。壮麗な舞台を背景としたオーソドックスな舞台劇のイタリア映画。高名な舞台劇を題材にした黎明期のイタリア映画の伝統を引き継いだレナート・カステラーニ監督作品だが、見所は「第三の男」の名手ロバート・クラスカーの絵画のような美しさと精密な構図が素晴らしい撮影。古典的な悲劇音楽を奏でるロマン・ヴラドのテーマ曲も印象に残る。良識のあるシェークスピア劇と言えるし、完成度も高い。但し、フランコ・ゼフィレッリ監督の’68年度作品と比較しては、主人公二人の思い入れの情感は無い。ロミオを演じた「年上の女」のローレンス・ハーヴェイが撮影当時25歳からも解るように、あくまで古典としての演劇映画の範疇である。
  1983年 4月21日

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Gustav