ルイ・ブラス
劇場公開日:1949年4月
解説
「暁に帰る」「背信」のダニエル・ダリューと「悲恋」「美女と野獣」のジャン・マレーが主演する映画で、ヴィクトル・ユーゴーの戯曲の映画化である。脚本と台詞は「悲恋」「美女と野獣」のジャン・コクトーが書き、「山師ボオトラン」「南方飛行」のピエール・ビヨンが監督し、「あらし(1939)」のミシェル・ケルベが撮影を指揮し、「悲恋」のジョルジュ・ヴァケヴィッチが装置、エスコフィエが衣裳を担当した。音楽は「美女と野獣」「悲恋」のジョルジュ・オーリックが作曲している。ダリュウとマレエを助けて、マルセル・エラン、「夢みる晴衣」のガブリエル・ドルジア、「悲恋」のアレグザンドル・リニョオ、ジョヴァンニ・グラッソ、ポール・アミオ、ジル・ケアン等が出演している。
1947年製作/フランス
原題または英題:Ruy-Blas
劇場公開日:1949年4月
ストーリー
スペインの女王マリアは、マドリッドの華やかな宮殿に、多くの延臣官女にかしずかれて、孤独のさびしさをかこたねばならなかった。心をゆする友を唯だ一人も持たない王者の悲哀は、若く美しいマリアの心を冷たくするばかりである。腹黒い野心を抱く高官ドン・サリュストが、マリアに愛慕の情を訴えた時、賢い女王は彼の心底には清い愛よりも、まっ黒な野望がわだかまっていることを見抜き、すげなく彼の求愛をしりぞけた。ドン・サリュストは単なる失恋のなげきでなく、失望の憤りに胸を焼いて、己が主君たる女王に折あらば復讐してやろうと、逆うらの刄を心に磨いた。或日ドン・サリュストが郊外に馬を駆つていると、貧しい学生と見える一人の若者と遭った。見れば失踪中の彼の甥にあたる無頼漢ドン・セザール・ド・バザンに、そっくりの容貌である。驚いたドン・サリュストは学生を呼びとめて身の上をたずねると、リュイ・ブラスという貧乏な平民で、マドリッドに職を求めて上るところだという。なぜマドリッドへ行くかと問えば、美しい女王マリアのお膝元の都に住んでみたいのだ、という答えであった。女王の名を口にする時のリュイ・ブラスの顔を見れば、彼が及ばぬ恋と知りつつも、ひそかな思慕の情を女王にささげていることは明白だ。ドン・サリュストは彼をひそかに己が邸に伴って帰った。そしてリュイ・ブラスに貴族の服装をさせ、従弟のドン・セザール・ド・バザンでござると、女王にお目見得させた。女王は偽のドン・セザールとは知らず、男らしい、頼もしげな彼の面魂に、心をひかれた。リュイ・ブラスは身分をいつわることの心苦しさに打勝たんと、女王に対する忠誠と思慕をささげた。孤独なマリアは、はじめて真剣に愛をささげる男を見いだして、彼に対する信任を次第に増した。十七世紀のスペイン宮廷が、貴族の陰謀で毒されているのを見た、リュイ・ブラスのドン・セザールは、腐敗した政道の刷新に努力し、女王の信頼はいよいよ高まった。そして女王はついに彼と結婚しようと決意する。女王をだまして笑いものにするのが目的だったドン・サリュストは、リュイ・フラスの本体を女王に告げ、即刻退位しなければ、この醜聞を公表すると脅迫する。女王マリアは怪怖におののいている。身分の低い平民にすべてを許したことを、悔いているマリアの貴族的矜持を眼にしたリュイ・ブラスは、女王をいつわった罪を痛感するとともに、真の愛とのみ思ったマリアの愛情は、階級意識の前にはもろくも毀け去るものであったと知って幻滅しなければならなかった。リュイ・ブラスは立ちどころに奸悪なドン・サリュストを刺し殺し、自らは毒を仰いで死んだのであった。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ピエール・ビヨン
- 脚本
- ジャン・コクトー
- 原作戯曲
- ビクトル・ユーゴー
- 台詞
- ジャン・コクトー
- 製作
- アンドレ・ポールヴェ
- Georges Logrand
- 撮影
- ミシェル・ケルベ
- セット
- ジョルジュ・ヴァケヴィッチ
- 衣装デザイン
- エスコフィエ
- 作曲
- ジョルジュ・オーリック