ホスピタル(1971)
劇場公開日:1972年8月26日
解説
大病院のメカニックな機構の弱点と盲点を衝き、そこに働く人たちの死に対する不感症、患者に対する唯物感を描く。1971年度アカデミー脚本賞、72年ベルリン映画祭銀熊賞受賞。製作はハワード・ゴットフリード、監督はアーサー・ヒラー、脚本はパディ・チャイエフスキー、撮影はヴィクター・J・ケンパー、音楽はモーリス・サーディン、編集はエリック・アルバートソンが各々担当。出演はジョージ・C・スコット、ダイアナ・リグ、バーナード・ヒューズ、ナンシー・マーチャンド、スティーブン・エリオット、ドナルド・ハロン、ロバーツ・ブラッサムなど。
1971年製作/アメリカ
原題または英題:The Hospital
配給:ユナイト
劇場公開日:1972年8月26日
ストーリー
ニューヨークの巨大な総合病院の院長ハーバート・ボック博士(ジョージ・C・スコット)は心身ともに疲れ切っていた。病院での激務、その疲労をいやしてくれる家庭は崩壊していた。妻とは久しく別居し、息子は革命に走り、娘は麻薬におぼれていた。そんなある日、病院内でで事故が起こった。インターンのシェファー医師(レニー・ベーカー)が空ベッドで死んでいたのだ。806号室のそのベッドは重傷患者ガーンジー(ロバーツ・ブラッサム)がその日の夕方死亡し、シェファーが看護婦との情事の後このベッドで眠りこけているとは知らず、夜勤の看護婦が点滴を行なったのだ。この事件は意外な方向へ発展した。医師アイブスとウェルバックの誤診によってガーンジーが死亡したと判明し、当のアイブスも救急室のベッドで心臓マヒで死亡していた。大病院のメカニックな機構の中で何かが狂っている。偶然か?ハーバートは許容量以上のトラブルを抱え、精神的バランスは極限状態に追い込まれていた。806号室のもう1人の患者ドラモンド(バーナード・ヒューズ)がいた。彼も健康体で入院したが、誤珍の結果、重体に陥っていた。彼の娘バーバラ(ダイアナ・リグ)は、彼が愛していたメキシコの地で死なせてやりたいと主張する。バーバラは父がハーバード大学出身の有名な医者だったが、ある日神の啓示を受けて伝道者となったことを語った。2人は身の上話を語り、ハーバートは激しい口調で現代医学に対する無力感、自分の無能ぶりを痛烈に自嘲した。バーバラは彼が自殺すると直感し、身体を投げだして思いとどまらせ、医者を求めているメキシコに2人で行こうと誘った。彼にとってその誘いは新鮮な刺激であり、行きづまった精神面に活路を与えた。翌朝、再び不可解な事件が起こった。手術を受ける患者が看護婦とすり代えられ麻薬ショックで死亡したのだ。ハーバートは殺された3人が806号室にかかわっていた事に気づき、その室を調べている所を突然襲われた。それは重傷患者のはずのドラモンドだった。父を迎えにきたバーバラは驚いて問いつめる。彼は死んだガーンジーの霊が復讐を頼んだのだという。残る1人ウェルバックを殺すために彼は病室を飛びだした。病院内はその時ごった返していた。病院の用地買い上げに反対するデモ隊が押しかけ、一方、度重なる怪死事件に警察が調査に乗りだしてきたのだ。そんな騒動の中、ウェルバックが倒れた。ドラモンドは死んだのですね?との問いにハーバートはそうだと答えた。バーバラの瞳は感謝にうるんだ。ウェルバックはドラモンドとして死に彼の犯罪を一手に引き受けて運び去られ、当のドラモンドはデモ隊と一緒に警官隊に押しだされた。バーバラの乗った救急車は彼に近よりすばやく父を収容する。ハーバートはバーバラに別れを告げた。病院に対する責任感が彼を引きとめたのだ。今はそれに立ち向かう心のゆとりとファイトが湧いてくるのを感じていた。
スタッフ・キャスト
- 監督
- アーサー・ヒラー
- 脚本
- パディ・チャイエフスキー
- 製作
- ハワード・ゴットフリード
- 撮影
- ビクター・J・ケンパー
- 音楽
- モーリス・サーディン
- 編集
- エリック・アルバートソン
- 字幕
- 高瀬鎮夫
受賞歴
第22回 ベルリン国際映画祭(1972年)
受賞
銀熊・審査員特別賞 | アーサー・ヒラー |
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