脱獄者
劇場公開日:1967年10月14日
解説
「若親分兇状旅」の高岩肇がシナリオを執筆し、「眠狂四郎無頼控 魔性の肌」の池広一夫が監督した“刑事”もの。撮影は「監獄への招待」の上原明。
1967年製作/88分/日本
原題または英題:The Breakout
配給:大映
劇場公開日:1967年10月14日
ストーリー
大下一郎は敏腕の警部補として暴力団には容赦なかった。たまたま、麻薬取引きに絡んで対立する辻本産商と須藤興業の動きに目をつけていたのだが、そのいざこざで逮捕されたのは七年ぶりで会う弟の三郎だった。須藤興業の身内の三郎は兄を憎んでおり、麻薬取引きのことは何も白状しなかった。一郎は元署長の沢田の信頼が厚く、亡妻との間に出来た一人息子の浩と共に世話になっているのだが、現署長とは折合いが悪かった。三郎は間もなく釈放された。須藤興業と辻本産商の対立はいよいよ激しくなり、殺人事件をひき起すほどだった。それを捜査中、一郎は須藤のワナにはまり、気絶している間に殺人の凶器を遅らされていた。そのため、一郎は殺人犯として逮捕され、新聞は現職警部補の殺人と書きたてた。公判が開かれても無実は証明されず一郎は懲役刑に服さねばならなかった。刑務所の中では、囚人の誰もが、元警官の一郎には冷たく、何かと意地の悪いいたずらをするのだった。その頃、須藤は麻薬密輸ルートを一手に握り、さらに悪どい儲け口を漁っていた。たまたま、沢田が競艇振興会理事であることに目をつけた須藤は、一郎をダシにして三郎を振興会に送り込んだ。そして振興会の不正経理の書類を盗み出し、沢田を脅迫したのである。しかし、沢田がそれに応じないとなると、須藤は沢田を殺させてしまった。一方、一郎は脳腫瘍で三ヵ月の生命と宣告されていたが、そんな時に沢田の死を知り、ひそかに脱獄の機会を狙っていた。ある日、刑務所内で死んだ囚人の死体と入れ替って脱獄した一郎は、その足でまず三郎に会った。三郎はそんな一郎に拳銃を向けたがその場に現われた須藤の口から、一郎が無実の罪で服役していると知ったとき、初めて兄に対して肉親の情を覚えた。しかし、そんな二人を須藤は射った。昏倒しながらも、一郎はその須藤を射ち倒したが、一郎自身は重傷を負い、三郎も肩に傷を受けていた。瀕死の重傷にもかかわらず、一郎は三郎を証人して、事件のいきさつをすべて説明すべく、車で警察署に向った。しかし、一郎は署に着いたとき、すでに息絶えていたのである。そこはかとない、安らぎの漂う一郎を見て、三郎は茫然とつっ立っているばかりだった。