悲恋
劇場公開日:1948年2月
解説
トリスタンとイゾルデ伝説を現代化した映画で、「美女と野獣」と同じくジャン・コクトーが脚本と台詞を創作し、新進のジャン・ドラノワが監督した一九四四年度アンドレ・ポールヴェ作品である。主演は「美女と野獣」のジャン・マレーと新人マドレーヌ・ソローニュ及び「装へる夜」のジャン・ミュラーで「どん底」のジュニー・アストル「黄色の部屋」のローラン・トゥータン、侏儒のピエラル、映画初出演のイヴォンヌ・ド・ブレ、「白き処女地」のアレクサンダー・リニョオ、ジャーヌ・マルカン、ジャン・ディードが共演している。撮影は老練ロジェ・ユベール、装置はジョルジュ・ヴァケヴィッチの担当で、音楽は「美女と野獣」のジョルジュ・オーリックが書いている。
1944年製作/107分/フランス
原題または英題:L'eternel Retour
劇場公開日:1948年2月
ストーリー
パトリスは広大な荘園の持主である叔父マアクの城に住んでいる。二十四才の彼は自由の子であった。興趣くままに馬を駆って狩の旅に出たり、幾週間もキャンプ生活をしたりして、青春をたのしんで暮している。しかし城の生活は陰気であった。マアクの愛妻エディト・パトリスの母ソランジュが、難破で一緒に死んで以来、マアクは独身を続けており、その姉ジェルトルードが夫のアメデ・フロッサンと息子アシルと共に、寄食しているのであるが、パトリスと相年の二十四才のアシルは一寸法師だった。不具のひがみと、不具の子を持つ親のひがみで、フロッサン親子は意地悪の根性曲りで、それが城の生活を惨めにした。アメデは古い銃や剣をいじるのが道楽だった。アシルはその銃で園丁の犬を射殺したりして、いざこざを起した。パトリスはマアクに再婚を勧め、自ら叔父の嫁探しに、叔父の所有している漁夫の島に赴く。そこの酒場で美しい娘に会った。その娘は酔どれの漁夫にいじめられていたので、パトリスはモロールトというその漁夫の頭を割ったが、彼も太ももにナイフ傷を受ける。その娘はナタリイといい、ノルウェイ人の父母と死別し、この島のアンヌという親切な女に育てられた娘であった。ナタリイは人事不省のパトリスをアンヌの家に連れて来て介抱した。彼女はモロールトといやいや婚約していたが、パトリスに心をひかれていた。ところがパトリスは彼女に叔父と結婚してくれと申入れる。ナタリイは意外であったが、酔どれ漁夫の妻よりはと思い、パトリスと共に城に赴きマアクと結婚した。アンヌは養女が愛なき結婚をするので、毒と記して媚薬をナタリイの荷物の中に入れた。あらしの日、パトリスとナタリイがカクテルを飲むと、アシルが秘かにその媚薬を毒と思って入れてしまう。その効能があったのか、パトリスはナタリイを愛し始める。そして一夜、愛を語っている時、マアクに見つけられ、勘当される。ナタリイも島へ返されるが、パトリスは途中で彼女を奪って山の小屋に赴く。しかしマアクは探し出しナタリイを連もどす。パトリスは唯一の財産の古自動車を売りに、町のガレージを訪ねる。そのガレージの主人は彼の学友リオネルだった。その妹もナタリイと呼び、パトリスを愛する。パトリスはこのナタリイと結婚することとなり、島のアンヌの家で式をあげる準備をする。所がパトリスは第一のナタリイが忘られず、第二のナタリイもパトリスが愛するのは、自分でないことを知る。パトリスはリオネルに頼み、夜、城へナタリイと会いに行く。しかしナタリイは重病で会えず、パトリスはアシルにそ撃され脚に負傷する。島に逃もどったパトリスの傷は破傷風となり危篤に陥る。パトリスはリオネルに頼み、ナタリイに来てもらう。彼女はマアクと共に、病を押して来たが、パトリスは息絶えていた。ナタリイもパトリスの傍にくずおれて、そのまま世を去った。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ジャン・ドラノワ
- 脚本
- ジャン・コクトー
- 台詞
- ジャン・コクトー
- 製作総指揮
- エミール・ダルボン
- 製作
- アンドレ・ポールヴェ
- 撮影
- ロジェ・ユベール
- セット
- ジョルジュ・ヴァケヴィッチ
- 音楽
- ジョルジュ・オーリック