引き裂かれたカーテン

劇場公開日:

解説

ヒッチコック監督の50本記念作品。ブライアン・ムーアが自分の原作を脚色、「マーニー」のヒッチコックが演出したスパイ推理ドラマ。撮影をジョン・F・ウォレン、音楽はジョン・アディソンが担当している。主演は、「動く標的」のポール・ニューマンと「サウンド・オブ・ミュージック」のジュリー・アンドリュース。彼等をめぐり「その男ゾルバ」のリラ・ケドロワ、「栄光への脱出」のルドウィヒ・ドナート、バレリーナのタマラ・トゥマノヴァが絡んでいる。製作も、ヒッチコックが兼ねている。

1966年製作/アメリカ
原題または英題:Torn Curtain
配給:ユニヴァーサル
劇場公開日:1966年10月22日

ストーリー

アメリカからデンマークへ向かう1隻の客船。この船には、コペンハーゲンで開催される科学者国際会議に出席するため米宇宙委員会のマイケル(ポール・ニューマン)と婚約者で秘書のセーラ(ジュリー・アンドリュース)が乗っていた。そして目的地へ着く直前の日、マイケルの所へ秘密の連絡文が届いた。発信地は東ベルリンだった。コペンハーゲンへ行くのを止めて、東ベルリンへ行くといいだしたマイケルに、不安になったセーラは事の真相を糺したが、心配する必要はない、2、3日コペンハーゲンで待っているようにと笑うだけだった。何か重大なことがあると直感したセーラは、マイケルを追って東ベルリンへ向かった。空港にたったマイケルは秘密諜報員のグロメク(ウォルフガング・キーリング)の案内で東ベルリン秘密諜報機関長のゲルハルトに紹介された。マイケルは東ベルリン亡命を決意していたのだった。これは、アメリカで開発の進んだ核兵器、ガンマ5の秘密の共産圏漏洩の意味を持っていた。驚いたセーラはマイケルを売国奴となじったが、心底から彼を愛しているゆえ東ベルリンを去ることはできなかった。そうしたある日、田舎へ出かけ1人の農夫にあった。農夫はアメリカ諜報員で、マイケルはスパイ活動のため東ベルリンへ亡命のかたちをとり潜入していたのだ。アメリカのガンマ5研究も、東ベルリンのリント博士の研究がないと完成しなかったのだった。つまりガンマ5については高度の科学的知識が必要であり、マイケル送りこみを計画したのだ。しかし農夫との出会いを、尾行してきたグロメクに見つかったからたまらない。マイケルは彼を殺し農地へ埋める破目になった。着々と進んでいた計画の破綻。早急にリントの研究を盗み東ベルリンを離れないと計画も水の泡だ。リントにうまくとりいり研究をメモし終えた時、ゲルハルトの追及の手が伸びはじめた。マイケルとセーラの必死の逃亡生活が展開された。ゲルハルトの作戦は綿密で執拗だった。新聞は連日写真入りで事件を報道、2人は夜だけしか動くことができなかった。海岸に追いつめられた2人、逮捕は時間の問題と思われた時、危機一髪、フェリーボートが近づいた。アメリカ諜報機関の秘密船だった。九死に一生、2人はスウェーデン行きの船にまぎれこむことができた。―甲板では、いまこそ結婚できると、愛を確かめあうマイケルとセーラの熱い抱擁の姿があった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

3.5冷戦時代のスパイものの代表的な作品。スパイは素性と本当の目的を隠し...

2022年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

冷戦時代のスパイものの代表的な作品。スパイは素性と本当の目的を隠しながら行動するが、その醍醐味で物語を引っぱっていく。ポール・ニューマン演じるアメリカ人科学者が東ベルリンに亡命。そのことを婚約者にも隠して行動していた主人公だが、後をつけられてしまい、婚約者も亡命することに。国を裏切る行為に失望する婚約者だが、主人公の真の目的は東側の物理学者から核に関する秘密を聞き出し、脱出すること。婚約者がついてきてしまったことで、主人公は計画の変更が必要になり、事前のプランが崩壊していく。愛情劇とスパイとしての任務が交錯する展開がとても見事。任務と恋人、どちらも大事という葛藤がスリルを作る。時折、もっと慎重に行動してくれと思う場面もなくはないが、ロマンスとサスペンスに溢れて楽しい一作。話の構造がすごく勉強になる。こうすればドラマとスリルが発生するんだなと勉強になった。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
杉本穂高

3.5ユーモアや脚本の妙には欠けるが、後半は見応えたっぷり

2019年7月21日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

興奮

知的

ヒッチコック作品の中では比較的新しい部類だが、知名度に欠ける一作。「サイコ」や「裏窓」などの傑作をキャリアの頂点とすると、これをどう評価するか専門家の間でも意見が大きく別れる。で、私はというと、前半はやや退屈しながらも、後半は歓喜しながら観た。

物理学者が東ドイツに亡命するところから始まる本作は、ポール・ニューマン演じる主人公が胸中で何を企てているのか判然とせず、疑心暗鬼に陥りながら彼の後を追い続けるジュリー・アンドリュースの立ち位置も煮え切らない。しかしそうやってフラストレーションを溜めながらも、後半は一気に伏線を回収し、ギミックといい、アイディアといい、脇を支える登場人物といい、これぞヒッチコック映画というべき品質を取り戻す。

ヒッチコックがこれほどの人気俳優を起用したのも珍しい。とりわけアクターズスタジオ出身のニューマンとのコラボには、良かれ悪かれ、新時代の風をひしひしと感じる。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
牛津厚信

4.5スリラーもサスペンスも十分

2024年5月20日
PCから投稿

鳥とフレンジーの間の三作はあまり評判良くないようですが、これはかなり面白いです。

前半のサスペンスから後半のスリラーまでヒッチのテクニックが満載です。
但しスリラーを詰め込み過ぎて、全体的にメリハリがやや不足しているように感じました。

しかし、ヒッチにニューマン先輩は違和感ありますね。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
越後屋

3.0引き裂かれたカーテン

2024年4月27日
Androidアプリから投稿

この映画はポール・ニューマンが演ずる主人公(科学者)が、周囲の敵に振り回されますが、しかし、左よく派閥の応援で、国境を越えて、逃げ切る(脱出する)、娯楽的作品。
特に、フランチェスコダリミニ(チャイコフスキー作曲)が音楽のバレエのシーン、次に、バスの車外を凝ったスクリーンプロセスで見せる、国境を越えるシーン、は、ヒッチコック映画はやっぱりいいな、と思わせる、一級の仕上がりです。
従って、すぐれた社会派映画で、バカに出来ません。
Ed.Ian (←ペンネーム)

コメントする (0件)
共感した! 0件)
Ian