八月のクリスマス

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説・あらすじ

不治の病に侵された写真館の青年と、駐車違反取締員の女性の切ない恋をつづった韓国製ラブストーリー。ホ・ジノ監督の長編デビュー作で、第19回青龍映画賞の最優秀作品賞など数々の賞に輝いた。父の跡を継いでソウルで小さな写真館を営むジョンウォン。彼は不治の病により余命が限られているが、笑顔を絶やさず穏やかな毎日を送っている。そんなある日、駐車違反取締員のタリムが違反車の写真を拡大してほしいと写真館にやって来る。それ以来、タリムはたびたび写真館を訪れるようになり、ふたりは次第に惹かれ合っていくが……。主演は「シュリ」のハン・ソッキュと「サランヘヨ あなたに逢いたくて」のシム・ウナ。2005年には日本で「8月のクリスマス」のタイトルでリメイクされた。

1998年製作/97分/韓国
原題または英題:Christmas in August
配給:パンドラ
劇場公開日:1999年6月5日

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映画レビュー

4.0「死と向き合いながら生きる喜びと諦観」

2025年6月13日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

癒される

 30歳になるジョン・ウォン(ハン・ソッキュ)は、人生これからというときに死を宣告される。そんな時、駐車違反の取り締まりの仕事をしているタリム(シム・ウナ)と出会い、お互い好意をいだいていく。
死の宣告をされたらどのような精神状態になるであろうか。死の怖さ、悔しさ、愛しい人への恋慕、もっと生きていたい未練、すべてを完全喪失してしまう絶望ではないか。
しかしジョン・ウォンは、いつも笑顔を絶やさず、悲痛にならない、明るさを失わず、優しさで人をつつみこんでいる。ただ友達と飲んでもう一軒付き合えと懇願するとき本音も漏らす、完璧な人間ではない。
タリムは、性格がちょっときつく、わがままではあるが、徐々に素直になり、おじさんという呼び方で慕ってくる。おじさんという呼び方が、年上だけで恋愛対象外という言い方ではない、彼への好意を感じる。
お互い、「好き」「愛している」と言わなくても心がつながっている二人。タリムは、ジョン・ウォンの店にわざわざ来て寝る。戻ってくる場所、人がいることの安心感がかもしだされる。またジョン・ウォンがバイクでタリムの横を通り過ぎる。必ずバイクが戻ってくるという確信の表情バイクを待っているタリム。二人で遊園地
で楽し気にぶ姿が二人の結びつきの強さを感じる。
タリムのことを愛しているから、愛を得たから死にたくないというジョン・ウオンの心情は死によって別れざるえない悲劇性が増幅される。ジョン・ウオンの遺書で
「タリムにさよならは言わない。愛したまま死にたいから」心の底からタリムを愛していた。それゆえこの言葉が重く響く。
タリムは、ジョン・ウォンを愛していたことに寸分の間違いもなかった。ジョン・ウォンを愛したことを後悔はない。なぜならジョンウォンはタリムを愛したまま死んだのだから。タリムは死んでも愛される人をえたのだ。
人間の命はいつか絶えるのは当然なことだ。愛する人との別離も当然のことだ。ただこの映画が描写したのは、尊いまさしく死に様だ。誰からも愛されて死ぬ。なんと幸福で尊い死なのか。親しい人が死んでも忘れられないのは、その人が生きたすべてである。それが生き様だ。
まさに韓流ブームの火付け役となった映画で悲劇のラブストーリーだ。ベタな悲劇の純愛ラブストーリーだが、そうなっていない点に注目しなければならない。その要因は、二人の距離感だ。ほどよい距離感を保ち二人でベタベタしていない。それはジョン・ウォンがもう死ぬことがわかっていたから、自ら距離をとっていたことがより悲しさを増す演出になっている。何気ない日常を愛し、恋する人、生きたいという喜びがあるからこそ死が悲しいのだ。
生きる喜びとは、充実し、満足し、希望に満ちた人生を送っている人だ。ただ現実社会において、生きる喜びに満ちている人はそんなにいないように思う。人はどこかで妥協、諦め、義務感、失望、虚無感、ストレス,病等にさらされ生きている人のほうが大多数だ。
ジョンウォンは、生きる喜びと、死が目前に迫っている諦観、両面をまかせもっている。この二つの心情がジョン・ウォンの心を行き来し、死という現実の前に悲劇に終わるのだ。生きる喜びに満ちている人は、この悲劇にさほどの感慨をいだかないだろう。しかし生きる喜びに欠けている人がこの映画を見たなら幸福な思いになるであろう。今はこれしかできないが、ジョン・ウオンのような生き様・死に様をしたいという羨望を持って、前向きに生きていこうという思いにかられるから。

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かな

4.5【”様々な記念写真。そして残された日々を淡々と、けれども大切に生きる。”今作は、ホ・ジノ監督の抑制した演出が光る、ラヴ・ストーリーの逸品である。】

2024年7月24日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

知的

幸せ

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共感した! 4件)
NOBU

4.0ゆっくり心に広がるよう

2023年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

とても静かで儚い、恋の物語。
ゆっくりとお互い惹かれあって。
でも踏み込めなくて、でも焦がれていて。
それが見ていてとても切なくなるんですね。
伝えたいけど、それを伝えない事の意味。
いつも笑顔だけど、ヤケになったり人間味もちゃんとあって。
それでも最後はまた、ちゃんと笑顔なのがまた良いです。
ゆっくり心に広がるような、静かで素敵な作品でした。

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白波

3.0遺されし人たちへのメッセージ

2023年2月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

ハンソッキュ扮する不治の病に侵された写真店主ジョンウォンの店にシムウナ扮する駐車取締員タリムが来る様になった。
ちょっと変わった娘だけど、女性との語らいは元気づけるね。でも余命が気になる様になったら恐くなるかもね。余命ってのは果たして分かった方がいいのかどうか分からないな。遺言じゃないけど、遺されし人たちへのメッセージも必要だ。あとは遺影を撮るタイミングがいつがいいんだろうな。

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重

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