灰とダイヤモンド

劇場公開日:

灰とダイヤモンド

解説

「地下水道」のアンジェイ・ワイダが監督したポーランド映画。ドイツ降服直後のポーランドを背景とする、ロンドン派の抵抗組織に属した一人の青年の物語である。イェジー・アンジェイエフスキーの原作を、アンジェイエフスキー自身とワイダが脚色にあたり、撮影はイェジー・ウォイチック。音楽はフィリップ・ノワック指揮のウロツラウ放送五重奏団。出演するのはズビグニエフ・チブルスキー、エヴァ・クジイジェフスカ、アダム・パウリコフスキー、ボグミール・コビェラ、スタニスラフ・ミルスキー、ズビグニェフ・スコフロニュスキー等。

1958年製作/103分/ポーランド
原題:Popiół i diament
配給:NCC
劇場公開日:1959年7月7日

ストーリー

1945年5月8日、ポーランドの地方都市。街のはずれの教会のそばに、二人の男が待ち伏せていた。党地区委員長シュチューカを殺すためだ。見張りが車の接近を叫んだ。銃撃。車の男達は惨殺された。しかしそれは人違いで、シュチューカの車は遅れて着いた。《こんな殺人がいつまで続くのか》通りがかりの労働者達は彼に詰問した。--夕方、街の放送塔がドイツの降伏を告げた。市長主催の戦勝祝賀会のあるホテルで、殺人者達は落ち合う。見張りの男は市長秘書だった。二人の男、アンジェイ(アダム・パウリコフスキー)と若いマチェク(ズビグニエフ・チブルスキー)がそのホテルへやって来た。彼等はロンドン派の抵抗組織へ入り、独軍と戦った。解放後は市長やワーガ少佐の指令で反党地下運動に従う。シュチューカが部下とホテルに現れ、マチェクは始めて誤殺に気づく。彼はシュチューカの隣りに部屋をとった。向かいの家には誤殺した男の許婚と思われる女がいた。ホテルのバーには美しい給仕クリスティーナ(エヴァ・クジイジェフスカ)がいた。アンジェイは少佐に呼ばれ、暗殺の強行を命ぜられる。ソビエトから帰国早々のシュチューカは息子が心配で、死んだ妻の姉を訪ねる。そこにはワーガ少佐が隠れ住んでいた。引取られた息子はワルシャワ蜂起以後、生死不明だった。一方、ホテルのホールでは歌が始まり、誰もいないバーでマチェクとアンジェイはグラスの酒に火をつけ、死んだ仲間を悼んだ。アンジェイは朝四時に任務でワルシャワへ発つ。《それまでに殺す。連れてってくれ》マチェクはアンジェイと約束した。彼はクリスティーナに《今晩十時、部屋で待つ》と誘うが相手にされない。市長秘書は酒飲みの新聞記者の老人にささやかれた、《市長が新政府の大臣になる》出世の機会だ。ついつい老人と盃を重ねてしまう。宴会場には市長も到着した。そんな時マチェクの部屋の戸が叩かれた。クリスティーナだ。《貴方なら後腐れがないから来たの》女は話す、両親は戦争中死んだと。市長秘書は泥酔し、老記者を連れ宴会場へ押入った。マチェクは女と時を過す。いつしか二人は愛し合っていた。マチェクはいつも離さぬ黒眼鏡のことを話す。ワルシャワの地下水道にいたのだ。二人は外へ出る。雨が降りだし、教会の廃墟に雨宿りした。女は墓碑銘を読む。《……君は知らぬ、燃え尽きた灰の底に、ダイヤモンドがひそむことを……》ノルヴィッドの詩だ。マチェクは強く望む。普通の生活がしたい!死体置場には今日殺した二人の死体があった--。保安隊が反党派の残党を捕えた。その中の不敵な少年はシュチューカの息子だった。マチェクはホテルの裏で女と別れるが、アンジェイを見かけ、思わず便所へ隠れた。《裏切って女と逃げるのか》アンジェイはいう《そんなら俺がやる》--マチェクはシチューカ暗殺を引受けてしまう。宴会場では市長秘書が消火器の液をまき散らし市長から見放された。マチェクは息子に会いに行くシュチューカの後をつける。ふりむきざま、乱射した。相手の体がマチェクに覆いかぶさってきたその時、祝賀花火が一斉に揚った。--夜明け、マチェクは荷物をまとめ、クリスティーナに別れを告げた。《行ってしまうの?》宴会の流れはまだ続いている。マチェクは同志の出発を物陰で見た。アンジェイからも見放された市長秘書が、マチェクにすがろうとする。逃げるマチェクは保安隊にぶつかった。追われ、撃たれた。ホテルでは市長や伯爵や大佐夫人達が亡霊のようにポロネーズを踊っていた。クリスティーナは立ちつくしている、涙を流して。マチェクはいつか町はずれのゴミ捨場を獣のようにうめき、笑いながら、よろめきはっていた。ボロ屑の中で、最後のケイレンがくる。汽車の響きが遠ざかった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

フォトギャラリー

映画レビュー

4.5ワイダ監督の代表的作品に鑑賞回数を重ねるほどに評価が高まり…

2023年10月9日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

この作品は、1959年のキネマ旬報ベストテン
において、「十二人の怒れる男」に次いで、
第2位に選ばれると共に、
過去のオールタイムベストテンでは
第13位や第16位に選出されている
名作中の名作だが、
初めての鑑賞ではその所以をほとんど
理解力出来ていなかったような記憶がある。
しかし、その後、他のワイダ作品に
接っしてきたこともあり、徐々にその理由が
分かってきたようにも感じる。

マチェクがサングラスをしているのが、
ワイダ監督作品の「地下水道」に繋がる
レジスタンス活動のせいだったとか、
彼が、間違って殺害した2人の残像に
どこまでも追いかけられること等、
幾つかのすっかりと忘れていた要素を
確認出来たことに加え、改めて感じたのは、
どちら側に組したかに関わらず、
双方の陣営の祖国への想いへの理解や、
更には、実はそれぞれの人間関係が近かった
との前提を設け、
それらを当時の国家分断を強調する要素に
していたようにも感じる
ワイダ監督の演出だった。

また、ワイダ監督は、
ドイツ降伏に伴う祝宴を
退廃的であたかも葬儀のように描き、
間接的手法で巧妙に
ソ連支配を批判したようにも思えた。

そして、ラストシーンのゴミの中での
マチェクの死は、
神に見放されたと思われるような
逆さキリスト像の場面同様、
彼が同志に語った、
普通に生きたい、普通に恋もしたい、
との想いを、
共産主義体制でもたらされる
人間として大切なものの要素の死の象徴
として描こうしたのではなかったろうか。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
KENZO一級建築士事務所

5.0アンジェイ・ワイダ監督「抵抗三部作」の第3作目

2022年12月15日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

初見は高田馬場ACTミニシアター(1980年11月27日)、42年ぶりに鑑賞。
アンジェイ・ワイダ監督「抵抗3部作」の第3作目🎥

1945年5月、ドイツ降伏直後のポーランド地方都市で抵抗組織の一人の若者が「戦いか安泰か」の迷いに苦悩する姿を描いた傑作!

仲間と共にマチェク(ズビグニエフ・チブルスキー)は銃を持って、誰かの車が通るのを待ち伏せしていた。そして、やって来た車に乗った男たちを射殺するところから始まる。
彼等が狙ったのはシュチューカ委員長なる人物だったが、間違って労働者を射殺してしまった。そのため、市長主催の戦勝パーティに来るシュチューカ委員長を殺すため、パーティ会場のホテルに部屋をとるマチェク。
そんな状況でマチェクはバーの美人給仕クリスティーナ(エヴァ・クジイジェフスカ)に声をかけ、クリスティーナは「恋愛ざたは別れがつらいからイヤだ…」と言いながらも、二人は愛し合う。
マチェクは、「一兵士として任務を全うするか?」or「クリスティーナと一緒に平和な暮らしをするか?」の選択に苦悩するのだが……。

マチェクとクリスティーナが屋外で会話する場面は、この映画を紹介する記事に良く使われるが、二人の間に「逆さづりのキリスト像」が映されており、これが鮮烈なメッセージ性を持った構図。

アンジェイ・ワイダ監督の大傑作!

コメントする (0件)
共感した! 0件)
たいちぃ

4.0絶妙なストレートボール

2022年1月31日
iPhoneアプリから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 1件)
因果

3.5二十歳ぐらいの時はわからなかった。

2020年5月21日
PCから投稿

ある程度年齢を重ねて戦争についての知識をえてイメージが出来上がってくると初めてこの映画が分かるようになった。これはドイツとロシアと言う大国の間に挟まれた国の人々のとある重大の日の出来事を描いている群像劇であった。最初っから群像劇だと思ってみないと肩透かしのようになってしまう映画かもしれない。映画というものは何も見る人を感動に導くとだけが映画ではない。このようなことを描き、このようなことを表現し、世界の人々に知ってもい共感してもらうのもまた映画というものであろう。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
タンバラライ