田園交響楽(1950)
劇場公開日:1950年4月
解説
「しのび泣き」「悲恋」のジャン・ドラノワが、有名なアンドレ・ジイドの小説を映画化したもので、一九四六年カンヌの国際映画展で大賞を受けたものである。脚本はドラノワが「乙女の星」「第三の接吻」のジャン・オーランシュと協力執筆し、台詞はオーランシュが、ピエール・ボストと協力して書いた。撮影は「犯罪河岸」のアルマン・ティラールが指揮し、音楽はベートーヴェンの田園交響曲を用いず、「美女と野獣」「悲恋」のジョルジュ・オーリックが作曲した。主演は、「霧の波止場」「珊瑚礁」のミシェル・モルガン、「罪と罰(1935)」「血の仮面」のピエール・ブランシャールで、「弾痕」のアンドレ・クレマン、「乙女の星」のジャン・ドザイ、「しのび泣き」のリーヌ・ノロ、「血の仮面」のジャック・ルーヴィニイが共演している。
1946年製作/110分/ドイツ
原題または英題:La Symphonie Pastorale
配給:SEF=東宝
劇場公開日:1950年4月
ストーリー
雪深い山村に住む牧師ジャンは、一人者の老婆が死んだので、祈祷をしてやったが、老婆には名さえ付けてない盲目の孫娘があった。ジャンは四人の子供の父親であったが、この盲目の「子羊」を見捨てるにしのびず、牧師館に連れ帰って、家族の一員として育て始めた。ジャンは彼女をジェルトリュードと名付けたが、数年経つと感受性の豊かな美しい娘に成長した。ジャンの妻アメリーは盲目の少女に対する夫の愛情を、神の子羊に対する牧師としての愛以上のものと直覚的に看破し、不安と憎悪の眼を注ぐのであった。ジャンの息子ジャックは、久し振りで故郷に帰り、土地の有力者カステランの娘ピエットに迎えられた。幼馴染の彼女は、美しい愛の夢を描いて彼を迎えたのであるがジャックは盲目のジェルトリュードの清純な美しさに激しく引きつけられたのである。ジャンは息子の気持を感じると、盲目の娘と結婚は許さないと言い渡した。ジャックは父の気持をのみ込めなかったが反対も出来ず、勧められるままにピエットと婚約した。息子が再び都へ上がった後で、ジャンは自分の心が平静でないことを自覚した。ジェルトリュードの盲目を治療させようとも考えなかったことは、彼女を独占しようとする自分の欲望の現れではなかったか。彼が自責の念に苦しみ出した時、ピエットも、ジャックが盲目の少女に心を引かれているのを知り、自分達の結婚前に、出来ることなら開眼手術を受けさせて、不安を解決したいと決心する。かくてジャックの知人の眼科医のもとで、ジェルトリュードは手術を受けた。意外にも手術は成功し、彼女は初めて明るい世界を見ることが出来た。訪ねて来たジャックを、牧師ジャンと間違えて接吻したジェルトリュードは、自分の軽率を知ると、自責の念に耐えず、ジャックとの約束を破り、一人で山村の牧師館へ帰った。それは日曜日の朝であった。開眼したジェルトリュードを迎えて、牧師は教会堂で神の慈愛に感謝の祈りを捧げた。しかし生活の疲れに、額に皺の深いジャンの姿は、盲目時代に空想していた愛の牧師の姿ではなかった。彼女が見えぬ眼に描いていた恩人の面影はむしろ、若いジャックの眉間にあった。ある夜ジャックが帰ってきた。彼に対する冷たい態度を責められた時、ジェルトリュードは、ピエットの幸福を破壊し、恩人の牧師への義務を果さずに、ジャックと結婚することは出来ないと考え、自分の部屋に閉篭ってしまった。父と息子は激しく口論した。ジャンは、彼女は自分を愛しているのだからお前の妻にはならないと断言した。自信のなかったジャックは、父にそう云われると絶望し、止める母の手を振り切って家を飛び出した。夫の愛を奪われ、長男をも失ったアメリーは、狂ったようにジェルトリュードを呪い罵しった。ジェルトリュードは、この侮辱に抗弁する気力もなかった。悩んでいる彼女の気持を鎮めようとする牧師に、彼女はジャックとの結婚を妨げたことを責め、ジャックに接吻したと告白した。ジャンは崩れるように倒れ、懺悔か祈祷か呟くのみであった。彼が漸く己にかえった時、ジェルトリュードの姿はなかった。狂気のように雪の上を、彼女の靴跡を追って走ったジャンは、百姓達が小川から引上げたジェルトリュードの冷たい死骸を見ると、彼女は俺のものだ、彼女は俺のものだ、と絶叫したのである。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ジャン・ドラノワ
- 脚本
- ジャン・オーランシュ
- ジャン・ドラノワ
- 原作
- アンドレ・ジイド
- 台詞
- ピエール・ボスト
- ジャン・オーランシュ
- 撮影
- アルマン・ティラール
- 音楽
- ジョルジュ・オーリック
受賞歴
第1回 カンヌ国際映画祭(1946年)
受賞
グランプリ | ジャン・ドラノワ |
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国際グランプリ(女優賞) | ミシェル・モルガン |
国際グランプリ(S.A.C.E.M. 最優秀音楽賞) | ジョルジュ・オーリック |