鉄路の斗い

劇場公開日:

解説

「しのび逢い」のルネ・クレマンの長篇処女作品である。一九四五年に製作された。フランス映画総同盟とフランス国鉄の抵抗委員会の企画製作になるドキュメンタリ的レジスタンス映画である。脚本と監督はルネ・クレマン、台辞は「処女オリヴィア」のコレット・オードリー、撮影は「巴里の気まぐれ娘」のアンリ・アルカンの担当。音楽は「七つの大罪」のイヴ・ボードリエである。キャストは素人ばかりの、レジスタンス運動に加わった労働者によって構成されている。一九四六年第一回カンヌ映画祭でグランプリと撮影賞を獲得した。

1945年製作/フランス
原題または英題:Bataille du Rail
配給:ユニオン=独立映画センター
劇場公開日:1955年3月7日

ストーリー

一九四四年、フランスのある地方駅。機関区長アトスと助手カマルグを中心としてレジスタンスが組織された。ナチから追われる仲間は機関車の水槽に浸って脱走した。レポやパンフレットが輸送され、ロンドンへ情報が伝達された。あらゆる抵抗・妨害が仕組まれ、非合法の集会があちこちで持たれた。そして最初のサボタアジュが決行された。主謀と見られた六人が捕えられ、銃殺された。仲間は機関車の汽笛を全部鳴らしてその死を弔った。六月、連合軍がノルマンディに上陸して第二戦線が実現した。ドイツ軍輸送司令部は西部戦線へ向けて“アップェルケルン”と名付ける十二本の列車群を編成した。アトスたちはこの輸送妨害を決意した。まず、迂回線が爆破され、ドイツ軍は抵抗組織“マキ”が待伏せる本線を使用しなければならなくなった。アトスの命をうけたカマルグは機関車と貨車八輌を転覆させた。あわてて運ばれて来た三〇トン起重機も転覆した。ドイツ軍は、装甲列車を先発として輸送列車を出発させた。“マキ”の攻撃は失敗に終った。アトスらは装甲列車をやりすごし、先頭の輸送列車を谷底に転落させた。ドイツ軍はやむなく残りの十一本の列車群を電車線にひき入れたが、直ちに全線の電流が切られた。ドイツ軍は再び機関車を要求した。しかし、レジスタンス命令によって全機関車の火は落された。動きを失ったアップェルケルンは連合軍の空爆によって炎上した。ノルマンディ戦線は突破され、ドイツ軍は敗走した。解放のしらせに町は沸き立った。自由と解放の第一列車が明るい歌声をのせて出発していった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第1回 カンヌ国際映画祭(1946年)

受賞

国際グランプリ(監督賞) ルネ・クレマン
国際審査員賞 ルネ・クレマン
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映画レビュー

4.0クセの強い内容でありながら居心地がいい

2024年10月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

ルネ・クレマン監督の作品続きで観る。 占領下フランスの国鉄職員のレジステンスを描いた映画ということで、古い映画だし、ドキュメンタリー風らしいので期待はしていなかったけれど、意外になかなかの満足感。 白黒で音楽はほとんどなく、登場するのはほぼ男性ばかり。それぞれの使命を淡々と果たしていく様子が描かれる。渋い!ふだん観ない類のもの。ところが…この渋さが結構よかった。余計なものがないので何がどうなる、ということに集中できる。 実物を使ったロケの魅力もあり、いつの間にか、先へ引き寄せられていく。 映画において、シンプル、ということは結構いいものだな、と思った。 事のいきさつを理解するのに邪魔になりがちな、お涙ちょうだい的なものや個人の背景などがほとんど排除されているわけだけれど、いのちの重みや心理については、少ない表現で上手に加味されている。そこには、観る者の想像力を引き出すよいセンスが感じられると思うし、観る側が持つ想像力への信頼も伺えるように思う。 クセの強い内容でありながら、居心地がいい映画だったのは凄い。

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あま・おと

4.5慰霊塔としての映画

2024年10月6日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

ドイツ占領下のフランスでの鉄道員たちの抵抗活動を描いた映画。フランス映画総同盟とフランス国鉄の抵抗委員会が共同で企画・製作、実際の鉄道員たちが多く出演し、フランスでは終戦から間もない1946年に公開されたとの事。 そういった背景もあるのだろうか。本人達が当たり前のように機関車を動かし線路工事をする。全てにおいて違和感がない。 戦車を載せた貨車が次々と脱線し飛び出していくシーンも、機関車や戦車含めて全て実物のようで生々しい迫力がある。 内容としては、後半に老機関士が口にする「出来る事をやるしかない」という一言が全てを表していると思う。自らの使命感の下、各々が鉄道員ならではの方法でドイツ軍へサボタージュを行っていく。 実際には身内からの密告等、一枚岩ではなかったと思う。だが理由を必要とせず自発的にあちこちで行われるサボタージュは、フランス人の反骨精神の凄まじさをよく物語っている。

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komasa

4.0ノルマンディー作戦からパリ解放に至る歴史の中の、鉄道員たちのレジスタンスを詳細に再現したクレマン監督

2023年2月16日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

ルネ・クレマン監督の長編第一作。第二次世界大戦の1944年6月、連合軍が敢行したノルマンディー上陸作戦時のフランス国鉄に働く鉄道労働者のレジスタンスをセミドキュメンタリータッチで描いた戦争実録の生々しさが特徴だ。それは、パリ解放の同年8月までの占領下に於けるフランス人の命と誇りを賭けた闘いを、映画として直ちに残そうとした軍事活動委員会から依頼されたという。クレマン監督は、若い時に陸軍映画班に在籍して記録映画を制作した経歴を持って映画界に入ったという。最適な抜擢であり、それに応えたクレマン監督の脚本と演出は、今日の視点でも充分訴えかけるものを持っている。 それにしても翌1945年5月のベルリン陥落前に映画制作を決めた、この時のフランス映画界の底力と、それに協力したフランス国鉄職員の鎮魂と解放の喜びは、私の想像を超えている。軍事物資や兵器を前線に輸送したいドイツ軍と、事故と見せかけた操車妨害や線路爆破で阻止しようとする鉄道労働者との攻防が、殆ど素人たちによって演じられているからだ。一般の戦争映画にあるような銃撃戦や列車脱線のスペクタクル、そして軍用列車が空爆されるシーンも迫真の演出で再現されているし、ドイツ軍の装甲車はそのまま使用したと思われる存在感がある。けして娯楽的な映画を目指した訳で無いのは充分承知しながら、その映画的な充実度と描写の密度には感心せざるを得ない。それでも戦後の映画界を変えたイタリア・ネオレアリズモ映画との関連性は余り感じない。例えば、足止めを食って列車でのんびり暇を持て余すドイツ兵の描写があったり、解放されたと思ってフランス国旗を窓に掲げる小父さんを可笑しく描いている。リアリズムの厳しさより、記録映画の真実性に拘ったクレマン監督の演出だった。 上映時間90分に満たない小品だが、今日の戦争と占領について考えなくてはならない人類の問題点と課題を示唆する点においても、鑑賞に値するフランス映画でした。

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Gustav