鉄路の白薔薇

解説

「戦争と平和」の作者監督者であるアベル・ガンス氏が其の思想を氏の信じる映画形式に従って製作した映画で、元来序篇及び六篇から成る連続映画である本篇は十二巻に短縮されて後に発売された分である。主役は「戦争と平和」「十一日の夜」等出演の故セブラン・マルス氏で、イギリス名女優アイヴィ・クロース嬢、「シラノ・ドウ・ベルジュラック」「巴里」等出演のピエール・マニエ氏、ガブリエル・ド・グラヴォンヌ氏、ジョルジュ・テロフ氏等が助演している。ちなみに主演者マルス氏は此の映画製作中アルプスのロケーションで殉職したことを附記しておく。無声。

1923年製作/フランス
原題または英題:The Wheel La Roue

ストーリー

第1部「黒の交響楽」フランスの或る小停車場で信号機の故障のため列車が衝突した。同じ鉄道の運転手シジフは現場に赴き母を失った女児ノルマを拾い我が子エリーと共に育てた。十五年の間彼等は兄妹として親しみ、エリーはバイオリン製作を業とし、ノルマは家事を見た。シジフはノルマが日毎に美しくなってゆくのを見て我が子として育てたのにも拘らず彼女に対して恋心を抱くようになった。彼は懊脳の極み飲酒と賭博に耽って金銭を浪費し窮地に陥った。ノルマに同じ想を懸けていた鉄道技師ジャック・ド・ヘルサンはノルマを妻にくれればシジフの家計を助けるというのでシジフは心ならずも涙を呑んでノルマを結婚させる。エリーは或る日家系図を見てノルマが実の妹でないことを発見し、父を責めたが後の祭で如何にもならず父子共に失意の極に達する。シジフは或る日機関車の火夫の過失により蒸気のために火傷し殆ど失明し、機関車を車止めにぶつけて大破させた。 第2部「白の交響楽」失明したシジフは、支線の登山鉄道に転勤し山頂の小屋にエリーと共に住んだ。ノルマはシジフやエリーが懐かしく避暑のためにと山麓の旅宿に投じ秘かにエリーと会った。ド・エルサンは両人の仲を疑いエリーを訪れ嫉妬の余り格闘して終に両人共に死んだ。今は全く盲目となったシジフは悲痛な過去の思い出と現在の不遇に苦しんだが、夫の死後無一文となったノルマがシジフの許に帰って来て父として仕えたので彼は平安に世を去った。

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