■ある美しい湖畔の別荘が舞台。
バカンスを過ごす高齢のノーマン(ヘンリー・フォンダ)と妻・エセル(キャサリン・ヘプバーン)のもとに、娘のチェルシー(ジェーン・フォンダ)が婚約者のビルと連れ子のビリーとやってくる。
だが、気難し屋のノーマンは娘とその婚約者に冷淡な態度を取り、二人はヨーロッパ旅行に出かけ、連れ子のビリーを旅行の間だけノーマン夫妻に預ける。
◆感想
・老いた両親を持つ男には、やや複雑な気持ちになってしまう作品である。資料を見ると、この作品制作の際も、公開後も名優の父娘が、お互いの関係性を良き状態にしたいという思惑があったようである。
今作では、その思惑が最良の形で具現化されていると思う。
特に、ヘンリー・フォンダが演じる老いたプライド高き男の自身の老いへの戸惑いを隠せない表情や姿が切ない。
・それにしても、今先で描かれているように、孫と祖父母の関係は何故に良好なものになり、潤滑油になるのだろうか。
私事で恐縮であるが、私と母方の祖父母との関係もそうであった。
気難しかった母方の祖父母は、私が初孫だった事も在るだろうが、とても可愛がってくれて小学生の時には毎年、夏休みはまるまる一カ月祖父母の家に滞在し、王様のように振る舞っていたモノである。
後年、弟や他の孫たちから恨み言を聞かされて、閉口したモノである。
・今作でも、チェルシーの婚約者のビルと連れ子のビリーが、気難し屋のノーマンと共に釣りに出かけ、彼の心を解して行く様が見事に描かれている。
■今作が素晴しいのは、高齢のノーマンと妻・エセルとの深い愛の描き方であろう。
二人には熟年離婚などと言う言葉は全く当てはまらず、お互いを尊重し、思いやる姿が美しく描かれている。
それは、二人が若い頃から、お互いを大切に想い、相手を尊重してきたからであろう。私も家人と、今作の二人の様な齢の重ね方をしたいと思ってしまったモノである。
・ノーマンとの確執を抱える娘チェルシーが、確執を乗り越えて抱擁するシーンは美しい。
父に認められたい思いを抱えつつ、それに反発する気持ちもあったがために距離が会った二人は、チェルシーがノーマンの前でそれまで出来なかった後ろ回転をして湖に飛び込んだ事で、徐々に氷解していくのである。
<今作は人生の黄昏を迎える老夫婦が、それを受け入れつつ美しき湖畔で過ごす中で、確執のあった娘と父との関係性が良好になって行く様が、抑制したトーンで描かれている。
そして、二人を支える老いた夫の身体を心配しつつ、献身的な愛を捧げる明るい妻の姿が作品に温かき趣を与えている。
今作は、稀なる名品であると私は思う。>