1000日のアン

劇場公開日:

解説

チューダ王朝のヘンリー八世とアン・ブリンをめぐる愛憎の葛藤。製作は「裸足で散歩」のハル・B・ウォリス、監督はTV出身のチャールズ・ジャロット。マクスウェル・アンダーソンの戯曲をブリジット・ボーランドとジョン・ヘールがシナリオを書き、リチャード・ソコラヴが脚色。撮影はアーサー・イベットソン、音楽は「しのび逢い」のジョルジュ・ドルリュー、衣装はこれでアカデミー賞を受賞したマーガレット・ファースがそれぞれ担当。出演は「キャンディ」のリチャード・バートン、「パリの大泥棒」のジュヌヴィエーヴ・ビジョルド、「マッケンナの黄金」のアンソニー・クェイル、カナダ演劇界出身のジョン・コリコス、「Z」のイレーネ・パパス。他に、マイケル・ホーダーン、ヴァレリー・ギャロンなど。

1969年製作/アメリカ
原題または英題:Anne of the Thousand Days
配給:CIC
劇場公開日:1970年9月26日

ストーリー

1526年のある夜、グリニッチ宮殿の舞踏会で、ヘンリー八世(リチャード・バートン)は、アン・ブリン(ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド)の美しい姿をみそめた。正妻カサリン(イレーネ・パパス)との間に子供のいないことに不満を感じていたヘンリーは、次第に、アンに近づいていった。しかし、愛を告げるヘンリーを、アンは冷たく断った。自分の婚約者を左遷し、姉のメリー(ヴァレリー・ギャロン)を身ごもらしたままに放っているヘンリーを、アンはむしろ憎んでいたのだ。ヘンリーは、だがあきらめず、王妃の侍女として宮廷に召しあげた。だが侍女は名目にすぎず、周囲の目や扱いは、ヘンリーの愛人としてのそれだった。にもかかわらず、アンは断固として決心をかえなかった。そして、逆にアンは王に、カサリンとの離婚をせまった。これはアンのひとつの賭けでもあった。ヘンリーはローマ法王も認めない離婚を実行するため、今まで片腕として働いていた枢機卿ウルジー(アンソニー・クェイル)を断罪に処した。ウルジーの書記だったクロムウェル(ジョン・コリコス)は、ヘンリー自らが英国教会の長となり、王の離婚を合法化することを進言、教会の弱体化をはかった。王はアンを手に入れるため、その進言に従うのだった。ヘンリーの情熱の真実にふれ、アンは涙し、はじめてその腕に抱かれた。華やかな結婚式は、だが、民衆の罵言の中で行わなければならなかった。また、カサリンは死の床で、娘にイギリスの王女になることを望み、息をひきとった。アンの幸福な日々は、夢のようにすぎた。やがてアンはエリザベスを産んだが、男子を望んでいたヘンリーは失望した。自分の年を知り、あせった王は侍女に手をつけた。アンは即刻その侍女を追放した。時が経ち、再びアンは子供を身ごもり、男子を産んだが、死産だった。ヘンリーはすぐにアンに離婚をせまった。アンはエリザベスのゆく末を思い、承知しなかったが、クロムウェルの奸計にあい、姦通と近親相姦の罪をきせられた。千日の栄光を身にまとい、やがてアンは、従容として断頭台にのぼった。そのかたわらでは、母が死を賭して王位継承権を自分に残してくれたとも知らず、エリザベスがひとり、歩行練習にはげんでいた。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第27回 ゴールデングローブ賞(1970年)

受賞

最優秀作品賞(ドラマ)  
最優秀主演女優賞(ドラマ) ジュヌビエーブ・ビヨルド
最優秀監督賞 チャールズ・ジャロット
最優秀脚本賞 ブリジット・ボランド

ノミネート

最優秀主演男優賞(ドラマ) リチャード・バートン
最優秀助演男優賞 アンソニー・クエイル
最優秀作曲賞 ジョルジュ・ドルリュー
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映画レビュー

3.0懇切丁寧さが作品の平板さをもたらしたか…

2022年8月13日
スマートフォンから投稿

フレッド・ジンネマン監督の
「わが命つきるとも」の観た延長で鑑賞。
「わが命…」の3年後に公開された作品で、
話としても「わが命…」の後日談的内容だ。

ブロードウェイ劇の
映画化作品とのことだが、
そうは思わせないほど
上手く映像化が図られていたのでは
ないだろうか。

ヘンリー8世が男子の跡継ぎを得るためだけに
残忍に振る舞う様子や、
ローマ教会から離脱する経緯、
そして、アンが処刑に至るまでが、
詳細に描かれた作品だった。

また、ヘンリー8世やアンの人物像を詳細に、
特にアンの自己意識の強い女性としての
描写は良く表現されており、
許婚がいたので始めは国王の求愛を拒否、
しかし、ローマ教会から離脱してまでの
想いに国王を受け容れ、
最後は国王の人間性の否定から
自ら刑を受け容れるという変遷を
しっかりと描き切って、
それなりにドラマチックなのだが、
しかし、
歴史ドキュメンタリー的知識を
与えてくれるかの如くの全編に渡る
その懇切丁寧さが、
逆にこの作品の平板さをもたらしてしまった
かのような感覚の映画だった。

ラストの幼いエリザベスが
将来の偉大な女王と印象付けるシーンは、
一方で彼女が生涯独身貫いたのは、
母アンの悲恋の影響もあったのだろうかと
複雑な想いに捕らわれた。

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