戦争と平和(1965~67)

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戦争と平和(1965~67)

解説

文豪トルストイによる小説をソ連のセルゲイ・ボンダルチュク監督が4部作で映画化した一大歴史ロマン。トータルで420分にも及ぶ大作で、1965年から67年にかけて第1部「アンドレイ・ボルコンスキー」、第2部「ナターシャ・ロストワ」、第3部「1812年」、第4部「ピエール・ベズーホフ」の4部作として公開されたが、日本では「第一部」と「完結篇」の2作にわけ、それぞれ66年、67年に公開された(第一部=1966年7月23日公開/完結篇=1967年11月23日公開)。1805年のペテルブルク。ベズーホフ伯爵の非嫡出子ピエールがフランスから帰国。放蕩息子だが父から溺愛されるピエールは莫大な財産を相続する。一方そのころ、ヨーロッパではナポレオンの侵攻により戦火が広がっていた(第1部)。ロストフ家の長女ナターシャとアンドレイ侯爵が舞踏会で出会い、恋に落ちるが、結婚を反対されたアンドレイはナターシャを残して外国へ旅立つ(第2部)。1812年、ナポレオン率いるフランス軍がロシアに侵攻。ロシア軍は圧倒されるが、クトゥーゾフ将軍の登場よって戦局は変化し始める。そして、そんなロシア軍の中にアンドレイの姿があった(第3部)。フランス軍の侵攻で混乱したモスクワでは、ピエールがナポレオン暗殺を決意し、街中に潜んでいたが……(第4部)。第41回アカデミー外国語映画賞受賞。2020年9月、「セルゲイ・ボンダルチュク生誕100周年記念特集」(20年9月18日~、東京・アップリンク吉祥寺)で全4部を上映。

1967年製作/424分/ソ連
原題または英題:War and Peace
配給:パンドラ
劇場公開日:2020年9月18日

その他の公開日:1966年7月23日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第41回 アカデミー賞(1969年)

受賞

外国語映画賞  

ノミネート

美術賞  
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映画レビュー

4.0ピエールに代わって、リュドミラ=ナターシャに愛を告白したかった…

2022年9月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

若い頃に、
今は無き故郷の映画館「グリーンハウス」で
2年を掛けて〈第一部〉〈完結篇〉を
観たこと、
また後年、錦糸町の映画館で
第1部~4部の7時間強をぶっ通しで
再鑑賞したことを思い出す。

先月、2007年製作のTVドラマ版を
ビデオレンタルして観たところ、
かつて、2016年のBBC版を観た時と
同じように違和感があり、
録画していたこの作品を再鑑賞した。

さて、このソ連版、
「悪人たちが結託して力を増大させるなら、
善人たちも同じように結託すればいい」
とのナレーションが
冒頭とエンディングに流れ、
プーチンとロシア国民への皮肉を
感じざるを得ないタイミングでの
4回目鑑賞となった。

今回、改めて認識したのは、
この物語はかなり長い時間の中での話で、
アウステルリッツとボロジノの両大戦の
間だけでも7年の時間の経緯があったことだ。

若い頃は、ただただ合戦シーンの
スケールに目を見張っただけで、
原作を読んだのは随分と後のことだったが、
〈第一部〉のラストシーン、
傷心のナターシャへのピエールの愛の告白の
場面だけは子供心にも印象強く残っていた。

事前に2007年のTV放映版を観ていて
違和感を感じたのは、
もちろん合戦シーンのスケール感の違いや
雪のない大地の描写、
また、TV版やヘップバーン版の3作品が
全て英語版だったこともあるが、
何よりもナターシャのイメージだったのかも
知れない。

この作品は、
ナターシャ役のリュドミラ・サベリーエワの
可憐さ・愛らしさが際立っている。
ナターシャ役は
オードリー・ヘップバーンでもなく、
TV版の彼女らでもなく、
ナターシャ役はリュドミラ以外には
想像出来ないのだ。
だから、このソ連版以外は
その違和感だけで鑑賞の妨げになる。
第2部ラストの愛の告白シーン、
何度ピエールに代わって
リュドミラ=ナターシャに愛を告白したいと
思ったことだろう。

作風としては、
2007年TV版では主要3名を中心に
彼らが頻繁に会ったような設定に変える等、
TV版2作品共に人間臭い愛憎劇としての
物語性に重点を置いて
解り易くしたのに対して、
このソ連版はドラマ的には説明不足的で
少し説教臭さもあるが、
トルストイの自然観や死生観などの
思想性に重きを置いた感じに思えた。
それでも、
主人公達の心の声をモノローグ処理して、
主要3名の心象を細やかに描き、
省いた物語性要素を
カバーしていたように感じた。

ただ、改めて思うのは、
ニコライ家の狩りのシーンの必要性や、
これはこの作品の一番の見所なので
やむを得ないのかも知れないが、
観慣れるしまうと、その壮大な合戦シーンも
冗長に感じでしまったことだ。

ところで、
この映画は2つのTV版と比較して
合戦や舞踏会等のスペクタルシーンに
時間を割いているためか、
同じ長尺でも、ピエールの妻エレンの扱いが
アッサリとしていて、
彼女の死がナレーションのみだったり、
また、ニコライとソーニャの存在感が薄く、
ましてや2人の相愛にさえ触れてもいない。

そんな中、原作では
ニコライと結ばれることのない薄幸の人物
のように描かれるソーニャが、
2007年TV版では、
ニコライの戦友ジェニーソフと結ばれたとの
改変エンディングは心地良く感じた。

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