西部戦線異状なし(1930)

劇場公開日:1930年10月30日

解説

世界的な評判を得つつあるエリッヒ・マリア・レマルク氏の同名小説を映画化したユニヴァーサル社の特作品で「裏切者」「暴力団(1928)」のルイス・マイルストーン氏が監督に当たった。「楽屋行進曲」のジョージ・アボット氏と「暴力団(1928)」のデル・アンドリュー氏が協力して潤色脚色し、台詞はマクスウェル・アンダーソン氏とジョージ・アボット氏が筆をとり、キャメラは「薮睨みの世界」「娘乱暴記」のアーサー・エディソン氏が担任した。主なる出演者は新進のルイス・エイヤース氏を始め、「美人国二人行脚」のルイス・ウォルハイム氏、スリム・サマーヴィル氏、ベン・アレクサンダー氏、ベリル・マーサー夫人、ヨーラ・ダヴリル嬢、アーノルド・ルーシー氏等である。

1930年製作/アメリカ
原題または英題:All Quiet On The Western Front
配給:大日本ユニヴァーサル社輸入
劇場公開日:1930年10月30日

あらすじ

欧州大戦に於て西部戦線の戦いたけなわなる頃。ドイツのある町の学校の窓下を戦場に向かう大部隊が通過しつつある。そこの教室では老教師カントレックが生徒達に愛国主義を吹き込んでいる。進軍の雑音と教師の弁舌に若い生徒達の血潮は燃えて彼らは直ちに出征を志願する。ポール、アルバート、ケムメリッヒ、ミュラー、ベーム、ピーター達がその中に数えられる。入隊した第一夜、かつて町の郵便配達であったヒンメルストスは曹長として彼らの前に立つ。そして苛酷な彼の訓練の後若者等は戦場へ送り出される。戦線後部の輸送所に於てポール達は最初の戦慄を感じる。ポール達は老兵に食物を求めてかえって彼らに嘲笑される。古参兵中の腕利きカチンスキーは豚を盗んで来て彼らの前に食物を供する。かくて彼らは初めて戦場へ身を晒す。それはカチンスキーに導かれた鉄条網張りの任務である。天空と大地とが厳しい砲火に轟き渡っている中に無残に碎かれてゆく若者達の英雄主義。ついに塹壕の中でベームは砲音によってヒステリーになる。ケムメリッヒもまた狂って飛び出したため脚部を打ち砕かれる。こうして彼らは幾日かを塹壕の中で仏軍の来襲を待たされるのである。糧秣車の前で兵士は分配を待っている。コックは150人分を用意しながら今は80名に減じた彼らに食糧を与えることに勿体をつける。ポール達は病床のケムメリッヒに長靴を所望してかえってケムメリッヒに障害者となったことを知らせ彼を狂乱させる。やがてポールはケムメリッヒの死んでいく態を目前に見せつけられる。教会付近の激戦でポールは腕を傷め爆破のために掘られた穴の中に砲火を避けたがその時飛び込んで来た仏兵を突き刺してしまう。終夜ポールは死に行く仏兵の傍らにあって戦争に対する疑惑と深い悔恨に苦しめられる。陣地へ戻ったポールは僚友と運河の流れで体を洗う。その時に通りかかった岸辺のフランス娘達に彼らは異性の匂いを感ずる。ポールはその後右腹部に負傷し保養のため故郷の町に帰る。だが彼の目に映ったものは教室で相変わらず少年達に愛国心を吹き込んでいるカントレックの姿とビールを飲みながら勝手な戦争論を闘かわしている金持ちや重役の姿であった。病める老母と姉とを跡に残して再び戦場へ来たポールは16歳の少年兵と老兵チャーデンの分隊に入る。カチンスキーをも訪ねたがその久しぶりの再会中カチンスキーは敵弾に命を落とす。そしてポール自身もある一日塹壕から蝶を捕らえんとする所を敵兵に撃ち殺されてしまった。だが司令部への報告は彼の死などには関係なく「西部戦線異状なし、報告すべき件なし」と伝えられた。

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映画レビュー

5.0 怖い 怖い 怖い

2025年8月23日
PCから投稿

アメリカ国立フィルム登録簿作品です。
あらゆる戦争映画の手本であり原点である金字塔です。
ストーリーはありません。普通の兵隊が普通の兵営で過ごす日常と普通の戦闘をひたすら追い続ける超絶リアリズムが真骨頂なので、ドラマチックやスリラーとは無縁ですが、独立した小エピソードの効果的な挿入と場面の素早い展開のおかげで飽きることはありません。
カット割りやアングルがいかにも戦前ぽい古さですが、兵士視線の戦闘シーンは反戦とか平和とかを超えて、ただひたすら「怖い」。混じりけなしのシンプルな印象が史上の傑作のふさわしさです。

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越後屋

4.0 戦争の日常

2025年8月4日
PCから投稿

悲しい

上映が1930年というWW1とWW2の狭間という時代にここまで反戦を描いた作品があったとは、
まずそこに驚いた。

これは第一次世界大戦中の塹壕で生きる兵士の物語である。
教師から兵士として祖国を守る為に誇りある戦いに参加すべきと言われ、
愛国心溢れる若者達が、そうだ、その通りだ! と吹き上がって戦地に送られる。
そして戦場にはそんな誇りや、栄えある戦いなどはなく、
泥とシラミにまみれ、たった数十メートル進む為の総突撃で
虫けらのように殺される現実に叩き落とされる。

しかし決して暗いだけの映画ではない。
コミカルなノリもあるし、先輩軍人は荒っぽいが気のいい奴だ。
誰も彼もが普通の人で、戦場でもくだらない雑談で笑い合う、日常の当たり前がある。

だからこそ、戦場のつらさがギャップとして映える。
主人公達が学校という日常から戦地の塹壕という地獄に
どうやって足を踏み入れていったかが丁寧に描かれている。

ドラマチックな事件によって切り替わるのではない。
あくまでもそれはグラデーションなのだ。
「どこにでもいる学校の若者」が「どこにでもいる戦場の兵士」に気づけば変貌している。
これが作品として素晴らしい。
特に戦地に送られた後に、戦場の真実を知った後に地元に帰ってきて、
それを知らない人達とするギャップの強すぎる会話は名シーンだ。

これは『普通の若者達による戦場の日常』を描いた作品だ。
描いたのは『戦場』ではなく『戦場に生きる人達』なのだと思う。

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エル

4.0 後世に多大な影響を与えた、戦争映画の傑作だ。

2024年9月19日
PCから投稿

一時帰国した主人公ポールが、戦争の現実を語ると、実際の戦場を知らない子どもたちは、ポールを軽蔑するばかりという逸話が、特に心に突き刺さった。全編通じて、後の戦争映画に大きな影響を与えた、お手本のような傑作だ。

戦場で出会った仲間たちが、次々と戦死していく。殺さないと殺される。殺した敵兵にも家族がいる。野戦病院で、ポールは回復する一方、足を切断せざるを得ない仲間もいる。

フランスの女の子たちとのつかの間の交流をはじめ、ひとつひとつのエピソードを積み重ねつつ、「キャット」カツィンスキー伍長とポールの運命を描くことで、物語は頂点に達する。

第一次世界大戦を、ドイツ兵の視点から描いた戦争映画だ。人間味を伝える個々の逸話を実直に積み重ね、リアルな戦争の現場を写実的に描き、説得力のある物語を誠実に紡ぎあげた、戦争映画の傑作だ。

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岡崎仁

4.0 偉い人も観てね

2024年1月14日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

第一次世界大戦の映画は案外少ない。兵装とか戦いかたなどを知りたくて、それならばと有名な本作を観ることにした。

とても古い作品なので映像の荒れ具合は相当なものだが、戦闘機や使われている武器などを知るには十分だった。
戦い方のほうは、ドイツ人が穴堀り得意だったばかりに西部戦線という少々特殊な状況ができてしまい塹壕戦以外はわからなかったけれど、まあ、それが見たかったわけだし問題ない。
毎日、僅か数十メートル前進するために敵の塹壕に突撃していく、敵側も同じように突撃してくる。結局ほとんど移動しない戦線のために何百何千と死んでいく。そんな戦場の雰囲気はよく描かれていたと思う。CGではない本物の迫力っていうのかな、それが本作にはあった。
ただ、血が全く出ないので、負傷や戦死した場面がちょっと分かり辛くて、みんな突然死んじゃうな、みたいな感覚になったことだけは書いておこう。やたらと死亡フラグも立てまくっていたしね。

それで内容のほうは、まず最初に驚いたのが、てっきりイギリス兵の物語だとなんの疑いも感じていなかったところに、まさかのドイツ側の物語だったこと。よくよく考えたら西部戦線なんだしドイツ側からに決まってたけど気付かないもんだね。
それで、こんな時代から敵側の視点で戦争の愚かさを描いた作品があったんだと、なんかちょっとその事に感動したけど、結局その後に二次大戦が起こっているわけで、なんとも言えない複雑な気持ちになったよね。
一本の映画がどんなに強烈に反戦をうたっても肝心の偉い人にはわからんのだろうな。

作品の中でも戦場に行かない者の戦争観は描かれている。
地図を眺めて地図の中で戦争をしている人々と、実際の戦場は違うのだ。すごく当たり前のように思うけど、その事に気付ける人は少ない。
最初の少年たちだって、最初は地図の中の戦場に行くような気持ちだったろう。それが一瞬で、本物の戦場は違うのだと気付く。そして戦争そのものの無意味さや愚かさにも目覚めていく。

シンプルで力強いメッセージを含んだ本作は、噂通りの傑作で間違いない。
各国の偉い人も是非観て下さいね。

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つとみ

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