ストーカー(1979)

劇場公開日:

ストーカー(1979)

解説

ある小国を舞台に不可思議な立入禁止の地域である“ゾーン”に踏み込んだ三人の男たちの心理を描くSF映画。監督・美術は「鏡」のアンドレイ・タルコフスキー。アルカージーとボリスのストルガツキー兄弟の原作「路傍のピクニック」を基に彼ら自身が脚色。撮影はアレクサンドル・クニャジンスキー。音楽はエドゥアルド・アルテミエフが各々担当。出演はアレクサンドル・カイダノフスキー、アリーサ・フレインドリフ、アナトリー・ソロニーツィン、ニコライ・グリニコなど。

1979年製作/ソ連
原題または英題:Stalker
配給:日本海映画
劇場公開日:1981年10月31日

あらすじ

とある小国に、謎に包まれた“ゾーン”と呼ばれる地域があった。立入禁止になっていたが、そこには、人間にとって一番大切な望みがかなえられる“部屋”があるというのだ。そして“ゾーン”に踏み込むという大胆な行動をとる者が出現した。案内役はストーカー(アレクサンドル・カイダノフスキー)と呼ばれている男だ。止める妻(アリーサ・フレインドリフ)を説得し、今“ゾーン”へと出発するストーカー。作家(アナトリー・ソロニーツィン)と教授(ニコライ・グリニコ)の二人と待ち合わせて“ゾーン”に向かう三人。境界地帯に待機していた警備兵の銃弾をくぐり“ゾーン”への侵入を果たす三人。そこにはこの“ゾーン”を探るためにこれまでに送り込まれた軍隊の戦車や人間の死骸が無残にさらされている。水に溢れた“乾燥室”を通り“内挽き器”という恐しいトンネルをくぐり、ついに“部屋”にたどりついた。しかし、踏み込む瞬間、教授が、自分で造った爆弾を取り出し、“部屋”が犯罪者に利用されることを避けるために、“ゾーン”爆破を目的としていたことを告白した。“ゾーン”を支えに生きてきたストーカーはその爆弾を取りあげようする。そのストーカーの態度に疑問を感じる作家。彼ら自身“部屋”に対する考えが、徐々に変化をみせる。“部屋”は、いったい彼らにとって、いかなるものであったのだろうか。自ら自身にもわからないのである。

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映画レビュー

5.0没入感すごい

2025年3月10日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

モスフィルムがYouTubeに日本語字幕付きをわざわざ公開してくれているので、既に何十回と見てしまっていたが、ようやく劇場で見る機会を得た。

突然現れた危険区域「ゾーン」。
その中のある建物の一つの部屋にいくと、願いが叶うという。
立ち入り禁止とされているゾーンには、不法に案内人を務める「ストーカー」を頼って入るしかない。
今回、「教授(科学者)」と「作家」という2人の男性が、ストーカーに案内されて部屋を目指す。

基本的に画面は、3人の中年男性の繰り広げる陰気な冒険だ。
その途中で交わす会話や、唐突な独白(タルコフスキー監督の定番)から、部屋を目指す動機、願いとは何か、などが語られる。
部屋には無事入れるのか、その後彼らが見るものは何か。

スリリングな展開だが冗長でもあり、SF要素は弱めで、内容は宗教世界に通じるもの。
好みは分かれる映画だ。

この作品のタルコフスキー監督のメッセージは、3つだろう。
信仰の尊さ、家族の愛情、そして科学技術発展の危険性だ。
チェルノブイリを予言した映画とも言われるが、当時の社会の中には既に予兆があったのかもしれない。
宮崎駿監督が、『風の谷のナウシカ』の着想を得たというのも頷ける。

クライマックスでは、煙を上げる巨大な発電所と凍った湖を背景に、素朴な家族が無言のまま歩みを進める。
当時まだ冷戦の真っ只中で、誰も幸せにならない軍拡と技術開発競争に明け暮れた、ソ連、ロシア、あるいは世界全体の空気を感じさせる、壮大なシーンだ。

自分はもう見すぎていて、一番最初に見たときの没入感が二度と得られないことはとても残念だが、時代を超えて心が動かされる映画。
これからも定期的に上映があってほしいと思う。

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らん

5.0もし現実に〝ゾーン〟が存在したら……?

2024年10月13日
スマートフォンから投稿

知的

難しい

 ロシア映画界の巨匠、アンドレイ・タルコフスキー監督が1979年に発表した傑作SF映画『ストーカー』。すごく難解な言い回しが多かったですが、個人的には一番好きなSF映画になりました。

 作中は常に静かであり、登場人物は少なく、『2001年宇宙の旅』や『スター・ウォーズ』などのような規模もない。入ると願いが叶う〝部屋〟に向かって、三人の男たちが歩いていくだけ。しかも最後までその〝部屋〟に入ることもなく終わる。何もスッキリしないのに、なぜか他の映画では味わえない奥深さというか、パワーのようなものを感じました。

 各所で〝水〟が印象的に使われていて、しかしどれも汚い水なのですが、それが不思議と心地よく、美しく感じます。ひたすらに現実離れした静けさで、瞑想しているような落ち着きを2時間半ちょっと、味わうことができました。

 ところで現実に〝ゾーン〟(性格には〝ゾーン〟内にある〝部屋〟)が存在したら? と私はちょっと考えてみたのですが、多分自分だったら勇気を出せず、入ることすらできないと思います。作中で作家が話していたように、「願いが叶う」ということは、「自分の腐った本性を見る」ということでもあるのです。

 つまり何が言いたいのかというと、〝部屋〟という名の〝ズル〟で願いが叶ったところで、幸福なんてものはそうそう得られないのだということです。ストーカーの妻の言葉を借りるならば、「苦しみのないところには幸せもない」ですね。

 やっぱり願いは自分で叶えるからこそ良いのですよね!(そう言いながらキミは、挑戦から逃げてばっかだよね?)(まぁいいじゃないっすか。失敗するのイヤですもん)

 「思うがままに行くがいい、信じるままに。情熱など嘲笑え。彼らの言う〝情熱〟は心の活力ではない。魂と外界の衝突でしかない。大切なのは自分を信じることであり、子供のように無力になること。無力こそ偉大なのだ。力に価値などない──」

          ──ストーカーの言葉より

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緩詰敬伍

評点不可

2023年8月7日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

『惑星ソラリス』を観た時もそうだったが、アンドレイ・タルコフスキー監督によるSF作品は、理解しようとしてもそれを拒んでいるように見える。しかし、ソラリスも本作も「傑作だ!」と言っている人がいるようなので、自分が理解できないだけなのかも知れない。それは分からない。

本作は、あるところに「ゾーン」というエリアが現れて、政府が軍隊を派遣して調査させたが誰一人ゾーンから帰還しなかった。政府はこの謎エリアを厳重警戒区域とするが、ゾーンには望みを叶えるものがあるそうなので、そこまで人を連れていく案内人=ストーカーという人間がいた。ある案内人が作家と教授から依頼を受けて、3人がゾーンを目指すのだが……というのが本作の物語展開。
(※)2枚組DVD、2時間40分超もある映画だったので、かいつまんで記載するとこんな感じだが、詳細までは記載不可。

「ゾーン」ではいろんな現象が起きていて、これが観念的なイメージでよく分からない。
そこに入る前はセピア色、ゾーンの中は色彩ありの映像……これはゾーンの風景を際立たせるためだろうか?

本作は「死ぬまでに観たい映画1001本」に選ばれているが、選ばれた意図は分からなかった。あとで(寝る前にでも)、あの分厚い本「死ぬまでに観たい映画1001本」で本作のページを読んでみるか。それでも分からなかったりして……(笑)

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たいちぃ

5.0突如現れたという、謎の空間 "ゾーン" を探検したいと、実際に行っ...

2023年7月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

難しい

突如現れたという、謎の空間 "ゾーン" を探検したいと、実際に行ってみて四苦八苦したり、何を求めるのか錯誤する、男性3人のお話。

映像の美しさ、一般世界とゾーンで彩りが異質、
苦悶して哲学的になる3名、
考えることの多い作品でした。

たしか当時は、ストーカーという言葉の意味は、いわば "探検隊" "お宝探し" ぐらいの位置づけ、いまとは全く異質だったような。

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woodstock