サムライ(1967)

ALLTIME BEST

劇場公開日:1968年3月16日

解説・あらすじ

フレンチフィルムノワールの名匠ジャン=ピエール・メルビルがアラン・ドロンを主演に迎え、一匹狼の殺し屋の生きざまを描いた名作。中折れ帽とトレンチコートを身にまとう孤高の殺し屋ジェフは、コールガールの恋人ジャーヌにアリバイを頼み、仕事へ向かう。今回の標的であるナイトクラブの経営者を首尾よく暗殺するジャンだったが、現場を立ち去ろうとした際に女性歌手ヴァレリーに顔を見られてしまう。警察の一斉検挙によりジェフも連行されるが、ヴァレリーが面通しで嘘の証言をしたため釈放されることに。しかし刑事はジェフを疑い、彼に尾行をつける。共演に「カビリアの夜」のフランソワ・ペリエ、当時ドロンと婚姻関係にあったナタリー・ドロン。

1967年製作/107分/フランス
原題または英題:Le Samourai
配給:日本ヘラルド映画
劇場公開日:1968年3月16日

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(C)1967 – Production Filmel – CICC – TCP / Editions Rene Chateau

映画レビュー

4.0アラン・ドロンの孤高の存在感とメルヴィルの創造性が融合した一作

2019年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

本作において、“サムライ”と直接結びつくのは冒頭に掲げられた文言だけで、あとは殺し屋の日常が淡々と描かれていくのみ。おそらく監督は、この孤独な生き様や、何事にも特殊なこだわりを持った生活様式を、サムライのそれと重ね合わせたかったのだろう。

見所なのは、冒頭のシーン。雨の音が絶え間無く続く中、クレジットを映し終えると、ほぼ不動に近かった室内が急にボワンボワンと膨張と収縮を始める。これはカメラを後退させてはズームしたり、ストップ・モーションを加えたりする操作の産物らしいが、この場面を通じて「すべてが動き、同時にすべてがそこにとどまったまま」という象徴的な状況を描きたかったそうだ。

主人公は決して刀を振り回したりしないが、かくも精神性の部分で、サムライにも似た特殊な境地を表現しようとする。何者にも束縛されず、自由に創造性を羽ばたかせる。そんなメルヴィルの研ぎ澄まされた流儀がとても粋な一作だ。

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牛津厚信

4.0好き嫌いはあるだろうけれど完璧な映像美と完璧なアラン・ドロンを観ることができる完璧な作品

2025年7月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

難しい

斬新

冒頭、新渡戸稲造の著書『武士道』からの引用と覚しき一節が映し出されるのだけど、『武士道』にはそのような一節はないそうである。

でも、それでいいのである。
映画とは壮大なウソであり、作品を面白くするためなら監督はいくらでも大胆なウソをついていいのである。二流、三流の監督はリアリズムや物語の整合性にこだわりすぎてしばしば作品の面白さを見失ってしまうことがあるが、本末転倒と言うべきだろう。

この作品の中の世界で出版されている『武士道』にはそういう一節が確かに書かれているのだ。
これはそういう、現実とは違うもうひとつの別の世界の物語なのである。

監督のジャン=ピエール・メルヴィル自身も「私はリアリズムには興味がない。私の映画は全て空想に依存している。私はドキュメンタリー作家ではない。映画は何よりもまず夢である」と語っている。

本作でアラン・ドロンが演じるのは孤独な殺し屋だ。仕事に行く前、自宅のアパートの部屋で身支度をするのだが、身に着けるのはグレーのスーツにベージュのトレンチコート、グレーのソフト帽というクールな出で立ちである。

普通に考えれば、殺し屋がこれから汚れ仕事をやろうというのにトレンチコートとソフト帽でスタイリッシュにビシッと決める必要はない。
でも、リアリズムから遠く離れたこの場面こそがこの映画の最大の見せ場と言ってもいい。
この場面こそが、サムライが死地に赴く際に身支度をきちんと整える、言わば死装束の場面だからだ。

トレンチコートの襟を立て、鏡の前でソフト帽のつばに指を滑らせるアラン・ドロンの完璧な美しさ。ここにこの映画の全てが凝縮されていると言っても過言ではないだろう。

映画という虚構の世界、夢の世界であるからこそ、我々は現実には決して存在しない完璧な美しさを備えた殺し屋を目の当たりにすることができるのである。
「映画を観る」という喜びの一つの極致がここにある、と言ったら言い過ぎだろうか。

さらには、メルヴィル・ブルーと呼ばれる青みがかった灰色の映像美も素晴らしい。
さびれた路地裏も美しい。安アパートも美しい。ナイトクラブのような現代的な場所はすぐに古臭くなってしまうものだけれど驚くべきことにこういう場所も美しい。どこを切り取っても完璧なまでに美しいのである。

物語自体はやや単調な印象を受けるが、自分はこの作品を、メルヴィルがアメリカ的な犯罪パルプ小説を一人の孤独な戦士(サムライ)の叙事詩にまで高めたもののように感じた。
娯楽作品ではなく叙事詩だ、などと言ったらやっぱりちょっと言い過ぎだろうか(笑)。

コッポラ、スコセッシ、北野武、ジム・ジャームッシュ、サム・ペキンパー、ジョン・ウー、ジョニー・トー、タランティーノ、リュック・ベッソンなど、自分のスタイルに強いこだわりを持ち独特のノワール的な作品を撮ることで知られる監督たちがメルヴィルの影響、特に『サムライ』の影響を受けているようだが、それもむべなるかな。

本作は、もちろん好き嫌いはあるだろうけれど、一つの完璧なフィルム・ノワールである。
ノワール的な作品を撮る作家性の強い監督たちが、これほど完璧に造り上げられた作品の影響を受けずにいられるわけがないのだ。

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盟吉津堂

4.0NHKBSにて2度目の鑑賞 フランスらしいというのか、どんよりとし...

2025年7月5日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

NHKBSにて2度目の鑑賞

フランスらしいというのか、どんよりとした湿った感じで、進行していく。

ほぼ全編無表情のアランドロン、しかし、その存在感、美しさは

ずっと観ていられる。

わからないのは、ピアニストの女性は、アランドロンへの好意ではなく、

組織の人間だから、アランドロンが捕まらないよう有利な証言をしたと思うが、

アランドロンは、彼女が組織の人間であることを知らなかったから、彼女に銃を向けるも

銃弾は入れてなかったのだろうか。

それとも彼女は何も知らず、単にアランドロンへの好意だけで、容疑者ではないと

証言したのだろうか。

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藤崎敬太

4.0時代を象徴する様な主人公像に感慨を覚えた

2025年7月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

難しい

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Kazu Ann